彼に会ったのは、去年のクリスマスが明けた日以来だった。



2週間以上、会っていなかった。



もう会わないと思っていた。


もう終わりにするしかないと思っていた。




でも、会ってしまった。


しかも、セックスまでしてしまった。




風邪を引いて、弱っていたから?


孤独に耐えられなかったから?


誰かに看病してもらいたかったから?




これは、ただの言い訳なんだと思った。


風邪を引いたのを口実に、連絡をしたのは自分。


友達にだって、看病はしてもらえた。


でも、彼に会いたかった。




結局、わたしは彼に会いたかったんだ。



彼が持ってきてくれた袋いっぱいの食糧を見ながら、

封印しようとしていた彼への思いは、完全に復活してしまっていた。



だって、彼に会ってから、ビックリするくらい元気になっている自分がいた。


熱もぐんぐん下がって、家の中を歩けるようになっていた。



その日わたしは彼へお礼のメールを送った。




そして、1日経った。




わたしは完全に回復して、仕事をしていた。



でもお礼のメール以来、彼とは連絡もとっていなかった。



何度も封印しようとした思いは封印できずに、どうしていいかわからずにいた。



それでもまだ、「ダメ、ダメ。終わりにしなくちゃ。会っちゃいけない」

と言い聞かせていた。




仕事へ向かう途中、メールが入ってきた。


彼からだった。



「具合どうだ?またゆっくりメシでも食べに行こう」



歩いていたわたしの足は止まった。


うれしすぎて、涙が出そうだった。





彼の結婚が発覚して、彼に会うのをやめなければ、縁を切らなければ


と思っていた。



友達になんて戻れないと思った。


そんなキレイごと無理だと思った。



彼はそれでも会いたいと言っていた。


会えなくなるのはイヤだと言っていた。


「家に来たりするのをやめればいい?

でも今までみたいに外で会ってメシしたりはしたい」


そう言っていた。



「そんなの意味ないよ」とわたしが言うと


彼は「なんで?」と聞いた。


「だって、好きなのに…そんなのダメだよ」 と答えると


「お互い好きなのに?」 と言ってきた。



この人にはわたしの気持ちなんてわからないんだろうな…と思った。



彼は、お互い好きなんだから、会いたいし、会えばいい

と思っている。



でもわたしは、それじゃ辛いし苦しいだけだ。



そりゃぁ、お互い好きなら会いたいに決まってる。


でも、会ったらもっと会いたくなる。


もっと一緒にいたくなる。



でも、彼は結婚してしまった。


彼は、ひとのもの。


彼には、帰る家がある。



今までだって、すごく苦しかった。


でも彼に結婚のことを聞いてから、もっと苦しくなった。



もう会ってはいけない。


一緒にはいられない。




不倫なんて・・・・・・・・・いけないことだ。




きっと時間が経てば、わたしも他に好きな人でもできて

そのうち彼のことなんて吹っ切れるんだから。



そう言い聞かせて、縁を切ろう、切ろうと思ってきた。




でも、こんなメール送ってこられちゃったら

気持ち、閉じ込められないよ。


また会いたくなっちゃうよ。


どうしたらいいの?


また会っていいの?


“またゆっくりメシ”できるの?




もうダメだ。


縁切りたくても切れない。



結婚を隠してわたしと不倫してたヤツなんて

最低最悪!!


そう思ったし、今でもふと思うけど、

それでもどうしても嫌いになれない。


なんで?


嫌いになれたら楽なのに。


嫌いになれたら、会わなくても辛くないのに。



セックスなんてしなくていい。


キスもしなくていい。


ただ、会えるならそれだけでもいい。


もう友達として、ゴハンを食べるだけでもいい。


ただ、また会いたい。



会いたい。





彼からのメールを何度も何度も読み返し

わたしは胸が苦しくて苦しくて、彼に会いたくてたまらなくなった。



そしてメールを返した。



ちょうどその日は仕事関係のレセプションパーティーに呼ばれていたので

彼も行かないか聞いてみた。



すぐには返事が返ってこなかった。



それでも心のどこかで彼に会えるんじゃないかと、期待していた。



そしてわたしはわざわざパーティーの為にいったん帰宅して

バッチリメイクをして、髪を巻いて、着替えていた。



そんな中、彼からメールが返ってきた。



彼は都合が合わないみたいで、パーティーには行けなかった。。



ちぇっ、つまんない…。



パーティー仕様に装った自分の姿を見て、かっぐり肩を落とした。




それでもわたしはひとりでパーティーへ行った。



もしかしたら、パーティーの後、彼に会えるかもしれない。


彼から連絡が来て、今日ゴハンできるかもしれない。


そんなことを思っていた。



本当は仕事があるから早めに切り上げなきゃいけなかったのに、

彼から連絡がこないかとどこかで期待して、帰らずにダラダラといた。



でも、パーティーは終わってしまった。



自分から「今日ゴハンしない?」って誘えばいいのかもしれないけど

それができなかった。


ただ、彼からの連絡を待つしかできなかった。



でも、連絡は来なかった。




ばーっかみたい、わたし…。



バッチリメイクにドレスアップした自分を見て、失笑するしかなかった。




なに連絡待ってんの?


また期待しちゃったよ…


ほらね、期待なんかするから苦しくなるんだよ。。


自分から連絡もできないなんて、こんなの苦しすぎるよ。。




無理して薄着で装っていたわたしには外の空気が寒すぎて冷たすぎて


ひとりで空しく帰る夜道、涙がポロポロ流れるだけだった。





お願いだから、もう期待させないでよ・・・・・・・・・・