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トンポ・トンネ 日々イモジョモ

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時間も場所も間違え…

【9月9日・土曜日】

 約束の九時一〇分前に東京朝高に着く。一カ月にわたる伽耶琴の修復作業を終え、この日、生徒の手に戻すという韓慶樹さんと校門で、待ち合わせしていた。

共和国創建記念日で休校だというのに、生徒が次から次に登校してきていた。制服ではない。ほとんどの生徒はジャージ、大きなバックを肩から下げている。片手にはコンビニの袋。部活生に休日はないようだ。女子は頭を少し下げて「アンニョンハシムニカ」だが、男子は、「アンシカ」だ。映画「ウルボ」で、いい味を出していたボクシング部の先生が短パン、Tシャツ姿、自転車で前を通りすぎた。


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待ち合わせの時間が過ぎたというのに、彼の姿がない。

fbのメッセンジャーで、待ち合わせ時間を確認する。

「伽耶琴の納入日が決まりました。

9月9日の土曜日 10時」

一時間間違えたようだ。

一時退散。駅近かのドーナツ店に入る。締め切りが迫っている、東京朝高の修学旅行の一端をつづった、「訪朝記」の最終確認に着手。約束の十時一〇分前、慌てて学校に戻る。


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修学旅行生を引率していた先生が校門の受け付にいた。白頭山での「大変だった」話をしていると、日本の高校生の一群が続々と入ってきた。校門の前で一礼、「おはようございます」「よろしくお願いします」、礼儀正しい。体つきが大きい。サッカーではなく、ラグビーの交流試合があるようだ。

 二〇分が過ぎた。

 再び、メッセンジャーに「どこ?」と、打つ。「三階です」の答え。民族器楽(ミアナムニダ、楽器の音色が区別付きません)の練習音を追うように、校門右手の四階建ての校舎に入る。三階の廊下や踊り場で、生徒たちが民族楽器を奏でている。教室をのぞくと、舞踊部が…。かれの姿がない。


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 再び、「三階のどこ?」、すると「第一ですよ」「荒川の」「…いま、弦の張り方を教えながらワイワイガヤガヤ」。

 彼がここで生徒と一緒に民族器楽を練習する姿を何度か見ていたので、てっきり東京中高だと錯覚したようだ。 

間に合わない。断念するほかない。「錯覚」の繰り返しで、大切な現場を逃してしまった。情けない。

 「残念」、「fbでのアップ、待ちます」と、打つ。

改めて伽耶琴改修をはじめたというfbを見ると、「先日、母校の第一ハッキョでの同胞大夜会は大盛況に終わりましたが…たまたま同級生の娘さんが民族楽器部に居て楽器の不具合を訴えて来たので三年ぶりに様子を見て来ました。あまりにも悲惨な状態に絶句してしまいました」。「第一ハッキョ」と書かれている。

運動場を見ると、先ほどの日本の高校のラグビー部がウォーミングアップをはじめていた。


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 美術部の部室の前では、ベニヤ板を何枚も繋いだ大きな絵が並べられていた。運動会当日、校門や運動場の入り口を飾る、デコレーションだ。

 「アンニョンハシムニカ…今年は…楽しみにしてください」。

 今年も大作に挑むのだろう。


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 駅に向かってとぼとぼ歩いていると、ラグビー部員とすれ違う。 

「覚えている?」と、声をかけると、「はい…」。そのうち一人は、妙香山で二時間余り焼肉を食べつづけていたので、隣に座って言葉を交わした生徒だ。コンビニ袋が重そうだ。

 「食べている?」と、声をかけると、恥ずかしそうに「はい」だ。

 時間と場所を間違えるというダブル失策に意気消沈していたが、そんな彼のくったくのない顔を見て、少し癒された。

改修した伽耶琴の納入の現場は逃してしまったが、休日にも登校する部活生の様子を見ることができ、先生と朝鮮訪問時の話をできた。それで良しとすべきか。

 

*加筆して9月下旬に刊行する『朝鮮学校のある風景』45号に掲載します。