神奈川中高の美展&「在日バイタルチェック」公演 | トンポ・トンネ 日々イモジョモ

トンポ・トンネ 日々イモジョモ

ブログの説明を入力します。

文化は力となる
【8月5日・土曜日】
 暑い一日だった。
 地下鉄・桜木町駅から一〇分だというので、スマホを頼りに歩き出したが、だいぶ大回りしたようだ。神奈川中高の美術部展の会場の市民ギャラリーの案内看板を見たときはへとへとになっていた。一休みして会場入りするつもりだったが、三階のエレベータを降りるなり、「チャルオショッスムニダ」、受付だ。
 女子生徒の歌声が聞こえる。「この…」。作品の説明をする男子生徒の声が入り混じっている。静かに芸術鑑賞ではなく、製作者と鑑賞者の思いをぶつける、思いがぶつかる、ウリハッキョの美術展ならではの、そんな雑然とした雰囲気が嫌いではない。
 昨年、「学美」で金賞になった「償わなければならないこと」と「照らさない」の大作が飛び込んできた。作品に付された何行かの解説文が、「地域交流費」の支出にそぐわないと、千葉市が千葉初中に交付していた補助金の打ち切りをきめたという作品だ。
 その前のソファーに座ろうとすると、「これ僕が…」と、男子生徒が声をかけてきた。
 「この作品が千葉で…」、「そうです」、「最近の作品は?」。やはり大作だ。「未完です…あと二、三日で…」。解説文には難しい言葉が並んでいた。「現実と向き合って生きて行こうとすると…どうしても社会的に…」。そんなことを話してくれた。卒業しても描き続けていきたいと言っていたが、進路は確定していないようだ。
 壁一面に傘をさすチマチョゴリ姿の女子生徒が描かれ、その前にハサミや刃物が吊るされている作品、作者は中学三年と書かれていた。壁の左手には全く違うタッチのはがき大の絵が貼られていた。作者は同じだ。
 女子生徒が近づいてきたので、「何か難しい説明が…生意気な中学生ですね」というと、「それ私です」。
 「…吊るされたハサミや刃物は『雨』」で、「その雨」をはねのけて生きて行かなければならない現実を表現したようだ。
 彼女もまた、この社会を描き、創り続けたいと言いながらも、ウリハッキョから飛び出さなければならない、厳しい現実に直面しているようだ。
 この度の神奈川中高の美術部展のテーマは「오늘」。案内チラシには次のような説明が付されていた。
「『오늘とは、朝鮮語で『今日』という意味を持つ言葉である。私達はこの『오늘』という言葉に『今日』、つまり『今』を生きる私達だからこそできる表現をし、『今』の時代を生きる責任を果たしていくという思いを込めました。오늘』は朝鮮学校生徒一三人によって構成されています。」
 朝鮮人として、「今」の現実、社会はとても生きにくいということを実感したひと時でもあった。
 一三人の「明日」を描き、会場を後にした。帰りは坂道の下りとはいえ駅までとても近く感じた。美展から力を注入されたこともあったことは確かだ。
 
イメージ 1

 そこから横浜に出て、「在日バイタルチェック」の神奈川公演に。会場は、明りが入らないように、窓は新聞紙で覆い、床にはカーペットが敷かれた会議室だ。開演二〇分前、すでに 椅子席は埋まり、最前列の座敷席だ。きむ きがんさんの一挙手一投足を、表情を間近で見られるのはいいのだが、一人芝居の「相方」に指名される「危険」は大だ。隣に座った連れ合いは、オッケチュムさせられる役は逃れたものの、脱がされた靴下は、「臭い臭い」と言われながら立派に「小道具」の役割を果たしていた。隣に座った眼鏡のご仁は、主人公のハルモニの夫役として右に左に、大任を果たしていた。
 「在日バイタルチェック」の公演は今回一〇六回目。一昨年、三河島で観ている。各地での公演を伝えるfbなどにアップされた記事や写真を見ると、きがんさんの演技、表情が違って見えた。ぜひもう一度と思い、完売間近のチケットをようやく手に入れることができた。
 凄まじいほどに「進化」していた。一世の「海女」のハルモニの生きざまを軸にした「物語」の展開に磨きがかっていた。デーハウスの責任者、そこで働くウリハッキョ卒業生と「日本人」の絡みなどを通じて、在日百年の歴史が見事に語られていた。照明が近すぎるのか、少し演じずらそうだったが、随所に「在日あるある話」が散りばまれ、そのエピソードを見事に、生き生きと「再現」していた。
 途中、一か所ある写真撮影タイム、「fbにアップ、プタクハムニダ」には笑いながら、観客のほぼ全員が笑顔でスマホを向けていた。

イメージ 2

 この日の公演の主催は、女性同盟韓川県本部と「かながわ朝鮮女性と連帯する会」で、「ⅰ女性会議神奈川県本部」が後援、公演後の交流会の参加者は、日本人の方が多かった。「在日の大変な歴史を笑い飛ばす…」、「暗いと日本人としてやり切れないのだが…」、「もう一度見たい」、「皆と共有したい」そんな感想がつづき、「自分たちの地域でも…」、「私たちの組織でも…」という意見が出された。
 そんな話が相次ぐ中、fbに「在日バイタルチェック、観劇ですか。チラシ等があればもらえますか。茨城で公演出来たら…と思ってます。青商会トンムに渡したいので、数枚ゲットしてもらえますか。」とのメッセージが届いた。劇団トルの二人に、「早速、fbにアップ、プタクハムニダの効果があったようですよ」と話すと、とても喜んでいた。
 大型のバンに小道具を積み込んでいたが、思いのほか荷物が多かった。舞台の上の四つの椅子と照明器具ぐらいと思っていたら、舞台に貼られた幕にそれを支えるパイプ、音響機器にスピーカー二台、舞台に敷かれたマットなどもそうだ。決して軽くない機材を、昨年、朝高を卒業したという青年が黙々と車に積んでいた。
 神奈川中高の美術展の写真も一枚も撮らなかった。いつもなら撮るであろう、こんな舞台裏のワンショットも逃してしまった。それから、それから、支援者からプレゼントされたという真新しいタイヤもだ。相当暑さにやられていたようだ。
 地元の長老を交えて食事を共にして、滋賀県に戻る劇団トルの二人を見送ったが、心地よい疲れが残った。美術展といい、劇団トルの公演といい、在日の文化から元気をもらった一日であった。