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朝鮮学校への「高校無償化」制度適用に関するQ&A
作成:「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会
Q1 「高校無償化」には、どういう意味があるのでしょうか?
A 経済協力開発機構(OECD)によると、2008年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める学校など教育機関への支出割合において、日本は3.3%でデータの比較が可能な31カ国中、最下位(日経2011.9.14)。また国連の社会権規約批准国の中で、日本はその第13条にある中等教育の漸進的無償化などを謳った条項(第2項〔b〕)も留保している数少ない国です。
政権交代後に実現した「高校無償化」は、こういった状況の改善、とりわけ後期中等教育(高校相当)の無償化を図り、高校のみならず専修学校、外国人学校をも対象とする画期的なものです。実際にその効果として、制度がはじまった2010年度、高校の再入学者が前年比で13%も増えています(朝日2012.1.5)。
「締約国は、教育についてのすべて ( ・・・ )の ( ・ )者 ( ・ )の権利を認める」と定める社会権規約13条を基本理念として、「教育の機会均等に寄与することを目的とする」(「無償化法」第1条)としてつくられた「高校無償化」が、朝鮮学校を排除し続けることは、朝鮮学校の生徒らを傷つけるだけでなく、「高校無償化」自体まで傷つけてしまうのではないでしょうか。
Q2 他の外国人学校の認定はどうなっているのでしょうか?
A 既に制度がはじまった2010年度には、(イ)高校に対応する本国の学校の課程と同等の課程を有すると当該国で位置づけられているブラジル学校や中華学校など14校、(ロ)あるいは国際的な学校評価機関(欧米系)の認定を受けているインターナショナルスクール17校、計31校が、それぞれ認定されました。
2011年度には、(イ)(ロ)のどちらにも当てはまらない学校(ハ)のためにその審査基準と審査手続きを定めた規程(2010年11月5日発表)に沿って11年8月にはホライゾン・ジャパン・インターナショナルが、同年12月にはコリア国際学園がそれぞれ認められています。
「各種学校」認可を受けている外国人学校の中で、朝鮮学校だけが除外された状態が続いているのです。
Q3 2010年11月5日に発表された審査基準とはどういったものでしょうか?
A 前述の(イ)(ロ)に該当せず(ハ)に属する外国人学校については、2010年11月5日に発表された高校無償化法の施行規則第1条第1項第2号ハの規定に基づく指定に関する規程」に則り審査されることになっています。
その内容については同時に発表された下記の文部科学大臣談話に示されています。
「本規程は、このような経緯を踏まえ、専修学校高等課程の設置基準をベースに、修業年限を3年以上とし、各学校の年間指導計画などにより『高等学校の課程に類する課程』であるかどうかを制度的・客観的に判断することとしました」
朝鮮学校が専修学校高等課程の設置基準のレベルを十分満たしていることは明らかであり、多くの新聞がこの規程の発表について「朝鮮学校への適用が事実上決定した」と報道したのはそのためです。
Q4 「高校無償化」制度の実施に伴い、高校生がいる家庭への税負担の軽減措置が無くなったと聞きましたが、このことは外国人にも関係があるのでしょうか?
A 大いにあります。朝鮮学校の保護者をはじめ在日外国人も納税の義務を負っています。「高校無償化」の実施に伴い、高校生がいる家庭の税負担を軽減する「特定扶養控除」が2011年から減額されたため(住民税は2012年6月から)、朝鮮学校に「高校無償化」が適用されないと、朝鮮学校保護者の負担は、逆により大きくなります。これは二重の差別に他なりません。
Q5 「高校無償化」適用は、やはり拉致問題の解決や北朝鮮との関係改善が条件になるのではないでしょうか?
A 拉致問題と絡めた議論は高校無償化法が成立した2010年の通常国会からなされています。当時、政府は「外国人学校の指定については、外交上の配慮などにより判断すべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべきもの」という統一見解を示しています。これはその後も一貫して堅持されている見解で、これに沿って2010年11月5日の審査基準及び審査手続きに関する規程も出されています。
何の罪もない子どもたちを外交や政争の具にすることの無意味さ、そして罪深さはいうまでもありません。
政府は、本制度の法案審議の過程で明らかにされた政府の統一見解に沿って適正かつ速やかに審査を進めるべきです。
Q6 日本学校とは違う見方で歴史を教えているのは問題で、その変更を「高校無償化」制度適用の条件にすべきではないでしょうか?
A 歴史観や宗教観など様々な考えがあり得る分野において、国家がその価値観を押しつけるということには自制が求められます。教育基本法では「学問の自由を尊重」(第2条)し、私立学校に対しては「国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない」(第8条)と定めています。また、私立学校法は「私立学校の特性にかんがみ、その自主性を重んじ」(第1条)ることが謳われており、所轄庁による授業の変更権限を認める学校教育法第14条は私立学校(専修学校、各種学校も含む)には適用しない(第5条第2項)という特例まで設けています。
ましてや外国人や他民族が通う外国人学校・民族学校に対して、日本の歴史観を強要すべきではありません。実際、文科省は、アメリカンスクールに東京大空襲や原爆投下をどう教えているかや、中華学校に日中戦争や南京大虐殺をどう教えているかなどといったことには立ち入って干渉していません。朝鮮学校に対してのみ、これらの規範を踏みにじり、干渉しても良いという理屈は成り立ちません。
なお、2010年11月5日の審査基準及び審査手続きに関する規程の決定に伴い示された民主党の見解(広報委員会名で同党のホームページに掲載)でも、「教育内容に介入することは、法律上、また他の学校とのバランス上、困難です」として以下のように述べています。
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「私立学校法」第5条及び64条により、私立の高校や専修学校、各種学校については、所管の知事ですら教育内容の変更を命ずることはできないとされています。私立の各種学校である朝鮮学校にのみ、教育内容の是正を求めることは私立学校の自主性を重んじる各種法令に違反することになってしまいます。
インターナショナル・スクールや中華学校、韓国学校など、他の外国人学校で使用している教材の内容についても、我が国の教科書の記述とは異なり、政府の見解・認識と同じでない部分がありますが、それらに対し文部科学大臣が是正を強いることは慎重に対応しなくてはなりません。
インターナショナル・スクールや中華学校、韓国学校など、他の外国人学校で使用している教材の内容についても、我が国の教科書の記述とは異なり、政府の見解・認識と同じでない部分がありますが、それらに対し文部科学大臣が是正を強いることは慎重に対応しなくてはなりません。
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Q7 北朝鮮や朝鮮総連との関係が深いのは問題ではないでしょうか?
A 朝鮮学校は戦後直後から日本各地に設立されたもので、朝鮮民主主義人民共和国が建国(1948.9.9)されるより以前からあった学校です。これは日本の植民地統治下で、民族の言語や歴史等が学べなかった子どもたちに民族的素養が備えられる教育を施そうと在日朝鮮人が自主的に学校をつくったからです。
その後、一貫して日本政府は民族教育に理解を示さず、日本の国庫からは基本的にはびた一文補助金が出ないような状態が続く一方、朝鮮民主主義人民共和国からは、1957年より教育援助費が送られてくるなどの支援が続きます。また在日本朝鮮人総聯合会は、民族団体として厳しい朝鮮学校の設立、運営に対し、組織を挙げての支援を行ってきました。そういった社会背景、歴史経緯によって、一定の関係性が形成されたのであり、これを不自然、不健全とするのは妥当ではありません。拉致問題は重大な人権侵害事件ですが、そのことを以てこういった関係性まで全否定するのは論理の飛躍ではないでしょうか。
なお最近では、韓国社会においても朝鮮学校は異国の地において朝鮮半島にルーツを持つ子どもたちに民族的アイデンティティーを育んでくれる貴重な場である、いう考えが拡がっています。昨年の東日本大震災の時も有名俳優らが中心になり、被災地の朝鮮学校支援のためのチャリティーコンサートなどを何度も行っており、朝鮮学校への無償化制度適用を求める署名運動なども行われています。
Q8 国連人権機関でも勧告が出ていると聞きますが?
A 2010年2月、「人種差別撤廃委員会」は、「締約国において現在審議中の公立および私立の高校、高等専門学校および高校課程に類する各種教育機関における授業料を無料化するという法案から北朝鮮系の学校を除外するよう提案している一部の政治家たちのアプローチ」への懸念を表明、「締約国が、教育機会の提供において差別がないこと」を勧告しました。
同年5月に行われた「子どもの権利委員会」でも朝鮮学校などへの差別是正を求めています。また、両委員会は、ともに日本が「教育差別禁止条約」を批准するよう求めています。同条約は、「教育上の差別を含む法律上の規程及び行政上の命令を\廃止し、かつそのような行政上の慣行を中止すること」(第3条〔a〕)と規定しています。
早ければ今年11月には、社会権規約委員会の日本審査が行われますが、このままでは本来、評価されるべき「高校無償化」制度が逆に非難の対象になってしまいます。