新入生の身体検査が行われるというので、いつもの東京朝鮮第三初級学校へ。
あいにくの雨降りだ。色とりどりの傘をさした児童とすれ違った。
「アンニョンハシムニカ」、「アンニョンハシムニカ」、あいさつを返すのも大変だ。
土曜日なので、制服は着ているが、ランドセルは背負っていない。肩掛けバックにリュックと、これもまたカラフルだ。

校門の前、事故ではないようだが、人だかりができていた。長身の金校長が交通整理をしていた。
校門を入ろうとしたところで、左前輪パンクしたようだ。以前教育会の会長を務めていた、自動車修理工場を営む文氏がタイヤを交換していた。交換が終わると、運転をしていたオモニは文氏と校長先生に何度も「コマッスムニダ」とお礼を述べていた。雨の中、初めての経験でとても困っていたようだ。

来年度の新入生の到着までの少しの時間、いつものように校内を一周する。
2階の低学年の教室の前の壁には、絵がびっしりと貼られていた。先日の写生会での児童の力作だ。

美術担当の張先生が、隙間がないよう塗るように指導していたが、どれもそれらしい作品に出来上がっていた。

高学年の教室が並ぶ3階の廊下の踊り場には、「第3学校によくいらっしゃいました」とのポスターが貼られていた。新入生の面談と父母への学校説明は、2階の低学年の教室で行われる。ポスターは、一週間前の13日の公開授業用に作られたようだ。写生会、修学旅行、秋の遠足のスナップ写真、どれも笑顔がはじけていた。

6年生の男女6人の代表が被災地の東北初中に行って、現地の児童と交流する様子を撮った写真が中央に貼られていた。文化の日で休みだったにもかかわらず、尹校長は復興中の校内を案内し、5年生の児童との歓談の場ももうけてくれた。校長は「小学生が激励に訪れたのは初めてだ」と、しきりに感心していたというが、「年が一つ下なのに、しっかりと受け答えをしていた」と、児童たちも多くを学んで戻ってきた、聞いている。
スクールバスで前夜に出発し、4時間余り学校に滞在して戻るという「強行軍」だった。代表の報告を聞いた他の児童たちにも大きな刺激になったようだ。

校舎の入り口には当日、尹校長が金校長に託した「尊敬する東京朝鮮第三初級学校の学父母」に宛てたメッセージが貼り出されていた。
校長は遠方からの「幼い代表」を迎えた感激と、「たとえ短い時間ではあったが、私たちにとっても、チェーサムの児童にとっても非常に尊い一日だった」と書き、学校長として引率してきた金校長と少年団指導教員の夫先生、担任の黄先生と、児童たちの東北行きを物心両面で支えてくれた学父母に敬意を表するとつづられていた。
「大地が揺れても、笑っていこう!」をモットーに頑張る尹校長の少しとぼけた顔が浮かんだ。

校舎の入り口が騒がしい。受付が始まったようだ。
昨年同様、新入生には5年生がマンツーマンでついていた。この日の案内だけではなく、2月の学芸会や一日登校、そして入学式の当日には手を引いて一緒に入場することになっている。

名札をつけて、会議室で身長・体重をはかり、制服を合わす。

金校長は、「新入生はおしゃまさんが多いようだ」と話していたが、みんなおしゃれして来ていた。オモニたちもだ。
3年担任の成先生は新入生に盛んに話しかけていた。
成先生・「ソンセンニム(先生)のこと覚えている?」
新入生・「ゴリラ、ゴリラ!!」
それを見ていた金校長・「鋭い指摘!!!」と一言。オモニ達たちも笑っていた。

担当の新入生が気になるのだろう、のぞきこんではヒソヒソ話をしていた。

2階の教室での新入生の面談と学父母の説明会に向かう時も、担当の児童は、新入生と手をつないで階段を上がって行った。

階段にはいつもはない、アニメのキャラクターのシールがあちらこちらに貼られていた。

まず、金校長が短めのあいさつ。「毎年20人台をキープしてきたが、今年は…。入学式まで一人でも多くの児童を迎え入れることができるよう尽力する」。校長の決意表明の場になっていた。
1年担任の秦先生が学校での日課、年間行事、制服と学用品などについて、「学校案内」にそって「ウリマルが分からない方がいるので」と、日本語で説明していた。通学定期券の購入方法や、高学年の児童との通学班などは、遠距離通学が多いウリハッキョならではの話だ。
最後、金校長は、地震の安全対策、家庭との連絡手段について、強調していた。

そのころ新入生たちは担当の児童に見守られながらお絵かきだ。

夜会やバザーなど、学校の行事に参加したことがあるのか、泣き出したり、親元から離れようとしない子はいなかった。

新入生の面談、簡単なテストだ。
砂糖は?」「甘い」、「それでは塩は?」「辛い」、「唐辛子は?」「辛い」、「塩と唐辛子は同じ味?」「???」-そんな問答をした、55年も前のことが思い出された。

面談を終えると、記念のチューリップの球根植えだ。
入学式の日までに咲けばいいのだが、こればかりはお天気次第だ。
今年は入学式に間に合わず、水やりが新入生の日課となっていた。

3階の理工室では、2人の男子児童が紙飛行機を飛ばして遊んでいた。
私・「帰らないの?」
児童・「オモニを待っています」
私・「新入生を連れて来たんだ」
児童・「はい」
3年生と4年生で、妹が入学すると話していた。雨降りで、運動場で遊べないことが残念そうだった。

6年生の教室の前には、修学旅行の感想が貼られていた。

4年生の教室の前には「詩を書こう」。日本語の授業での課題だったようだ。「友だち」、「機械」、「ぼくは足がおそい」、「じしんはこわい」、鉛筆」、「2」、「大好きな秋」、「休み時間」、「秋」、「人と地球」、「早起き」、「雪」、「戦争」、「日本のそうり大臣」、「不思議な時間」、「男の子女の子」、「太陽」、「ぼくのサッカー」、「ごみ箱」、「バスケ」、「ゲーム」、「時計」などなど、タイトル、テーマは多岐にわたっていた。

「不思議な時間」―時間っておもしろい/あそんでる時間がはやくすぎてく/勉強しているときは/おそくすぎてる/不思議だ/サッカーをしているときは早くすぎる/宿題してるときはおそくすぎる/でも時間の早さは変わってないんだよな/変わってないけど/やっぱり変わってると思う
「友だち」―ぼくは学校にバスでかよう/二本もバスにのる/少しつかれるけど/友だちがするから大じょうぶ/友だちといっしょに話をしたり/むずかしい事も・いっしょにのりこえたりする/友だちは最高だ

「戦争」―戦争って/無かったらよかったのに/戦争が/無かったら/人があんなに/死ななくてよかったのに/どうして戦争がおきたのか/国を自分の物にしようと/考えたのか/自分の事しか考えなかったんだ/ぼくたちは/みんなといっしょに/助けあって生きていくんだ
「太陽」―太陽ってなんだろう?/なんで太陽ってあるんだろう?/もし太陽が無かったら/人はこごえて死んでしまうだろう/本当は大事な物だけど/みんなそれに気付かない/ぼくは言う/「太陽ありがとう」
絵も、内容もほほえましい作品もあった。
「男の子と女の子」―なぜ女の子と男の子は仲がわるいんだろう/な仲もいい人たちもいるけど/とくにわたしのクラスは悪い/しゅみがちがうからかな/それともきている服がちがうからかな/すきなものがちがうからか/かみがたがちがうからかな/わたしはずっとおもう/おとなになってもわからないと思う/でもよくかんがえたら仲がいいのかもしれない/わからない問題をおしえてくれる男の子もいる/いろいろてつだってくれる/やっぱり仲がいいのかも

「私が4年生のころは、詩など書いただろうか?」そんなことも思っていると、2階からにぎやかな声が聞こえる。終わったようだ。アボジとオモニがそろって来ていた夫婦が校門を出ていく。オモニは幼子を抱いていた。3人ともおそろいの黒色の傘だ。

夫婦で来たのはこの1組だけだとばかり思っていたが、校舎の玄関にアボジが運転する車が横づけされた。説明会はオモニに任せ近くで時間を潰していたのだろうか。

「名前を覚えましたか?」、「名前、覚えてもらいましたか?」-黄先生の問いに、一斉に手が挙がる。

キャンディーがご褒美? でもうれしそうに受け取っていた。

5年生も一斉に下校だ。なにを話しているのかいつになく、かしましい。
金校長は、5年生になって、この役を担うとあと数カ月で、最高学年になるという自覚が芽生えるといっていたが…。児童たちはオンニ、ヌナ(姉)と呼ばれて嬉しかったのかも知れない。
