「朝鮮学校のある風景」-その5 六月はサッカーW杯の応援に課外授業-① | トンポ・トンネ 日々イモジョモ

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朝鮮学校のある風景-その五 ①
 
 
*「統一評論」の連載に一部加筆
 
 
六月はサッカーW杯の応援に課外授業
 
  
 六月の上旬は、まだ運動会の余韻が多分に漂っている。
 二月の学芸会もそうだったか、行事を催すと、必ず学父母を対象にアンケートを募る。翌年開催の教訓とするためだ。今年五月の運動会では、学父母の八割から、感想が寄せられたという。
学芸会同様に、毎回取り沙汰されるのは、席取である。開会三時間前、早朝からのそれは、頭痛の種のようだ。
 「せめて一年生と六年生の学父母には優先席を」といった、要求が強い。
 今年は、昨年まで設けられていた「学曾父母(高齢者)の席」は廃止された。家族と一緒の席で、応援したいという要求を受け入れたのだ。
 金校長は、新入生の学父母同士が顔見知りになり、親交を深める場として、新入生の学父母の応援席を特設するのは、いいアイデアかも知れないと言いながらも、卒業生の学父母の優先席づくりの結論は出しかねているようだ。
 
■梅雨入りしたある日の学校
 六月の第三週の月曜と水曜の二日間、学校を訪ねた。水曜日は午後から晴れ間が見えたとはいえ、二日とも雨、梅雨入りする前後である。
雨の日の学校訪問は初めてだ。玄関脇の傘立てには、カラフルな傘が丸い穴の中に一本ずつ整然と並んでいる。
 
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五月の朝鮮総連全体大会で、討論する北海道朝鮮初中高級学校教育会の李会長の姿が浮かんだ。
八年前、アボジのあとを継ぎ教育会の会長職に就いた数日後、アボジがこの世を去った。その時、オモニは夫の遺志を継ぎ、弔慰金の全額を北海道の学校と孫が通う東京チェーサムに送った。
東京チェーサムには、机と椅子のセットとパソコン、傘立てが贈られた。
その傘立てである。カラフルな傘を一本一本優しく包み込むかのように立っている、北海道の「愛国一世」夫婦の在日四世、五世に寄せる思いがこもった、その傘立てから暫し目を離すことができなかった。
中間試験の真っ最中のはずだが、二日間とも、昼過ぎに着いたので、その様子を見ることはできなかった。試験は、午前中に終わり、後は通常授業である。
金校長は、児童一人ひとりの理解度を知り、学期末までの克服課題を把握できればと、さりげなく言うが、児童たちは真剣なようだ。
高学年の教室には、一人ひとり科目別「目標」と「結果」を記すカードが貼り出され、そこには、「少年団の目標九・三点」と記されていた。廊下で会った何人かに、「試験は難しかった?」と尋ねたが、「モルンニダ(分かりません)」と、逃げられてしまった。
水曜日は、午後から晴れ間がひろがった。運動場では、三年生が鉄棒の試験だ。運動会の赤青の帽子をかぶった子もいるが、かぶらない子もいた。雨が上がると思わなかったのであろう、ピンクの長靴の児童が二人、ブルーの長靴の児童が一人、長靴で坂上がりにチャレンジしていた。
「チョアヨ(上手にできました)」、「もう一度」。
ときどき、「そこで何をしているのです」と、注意が飛ぶ。
バスケットボール部担当の金先生はいつみても元気だ。
校舎に戻ろうとすると、急ぎ足で車に乗り込む校長の姿が。賛助金受取りの約束があるというのだ。
教室からは、声をそろえてウリマルで教科書を読む声が聞こえる。また、「○○ザウルス」との日本語が聞こえる。「日本語、それとも理科か?」理科の授業はウリマルで行われるはずだから、「日本語」の授業ではと思いながら、声がする教室を覗く。黒板には「性格はたいへんどうもう」「まがったつめとかみきることができる…」と書かれていた。
六年生の教室には人影がない。
職員室に戻ると、教務主任はパソコンとにらめっこしている。いつもジャージ姿の四年担任の成先生に尋ねると、六年生は音楽室での授業とのことだった。
校舎が児童の声で、ざわめいている。なんかとてもいい感じだ。
授業が終わると、掃除である。ほうきで掃く先生の後を、児童たちは雑巾がけをしながら追いかけている。
 
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暫くすると、校長室の隣の部屋から「ヤッ」「ヤヤ―」「ヤー」の勇ましい声。朝鮮の伝統武道テコンドークラブの練習だ。
月曜日に来た時、一年生がマットの上で体育の授業を受けていた部屋だ。普段は会議室になっているようだが、正面には、大きな鏡が設置されていて、雨天には体育館に、クラブ活動の時は舞踊室に変身するようだ。今は、テコンドーの道場だ。
道着を着ているのは五人、残りの七、八人は普通の体育着のままだ。一、二年生が多いようだ。
師範の後に続いて、「腕」、「胸」、「脚」、「尻」、「腹」をたたきながら、ウリマルで繰り返す。声が小さいと何度も繰り返させられていた。
通りかかった、教育会の洪さんに尋ねる。テコンドーは、月四回の有料クラブで、低学年と高学年の二クラスがあり、なかなか人気を集めているようだ。
 
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玄関先で、教務主任が携帯電話で病院と連絡している。児童が鉄棒に顔をぶつけたようだ。顔に大きな絆創膏が貼られている。泣いてはいない、痛がってもいない。学父母に連絡する一方で、担任に病院に連れていくよう指示している。
夏休み過ぎると落ち着くのだが、それまでは、児童の怪我は少なくないという。新入生を迎えたこともあるが、皆が進級間もなくて、自分の「場」になじめないからだ。それに、狭い運動場だ。高学年が蹴ったボールをよけきれず、四月と五月で二人が腕を強打して病院に行ったと、金校長は話していた。
二年担任の秦先生が、児童の手を引き校門を出ていく。急ぎ足だ。てっきり、怪我をした児童を病院に連れていくのかと思ったが、顔に絆創膏がない。
家庭訪問だという。
先生は教室でも、廊下でも、運動場でも、やることが多い。それに家庭訪問だ。校長も授業をこなしながら、賛助金集めだ。
 
■W杯には選手、記者、応援団として(以下次回)

 
 
 
 
 
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