朝鮮学校のある風景-その四 ④ 五月は新人戦に運動会・完 | トンポ・トンネ 日々イモジョモ

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連載中の「統一評論」(2010年7月号)の原稿に加筆
 
 
 
朝鮮学校のある風景-その四 ④
 
 
 
 
五月は新人戦に運動会
 
 
 
 

 
 
■運動会② 今年は天も味方して…
 開会式を前に、案内放送のテントの前で、先生に最終的な伝達事項が伝えられる。共通の話題は、天候が崩れないかということと、4連敗中の青組が今年こそ優勝できるかという二点だ。
それに、女の先生の場合は日焼け防止である。「曇り空だからといって油断はできない」と、この日も大きなつばのサンバイザーを深めに被っていた。
音楽担当の朴先生は一日、テントの中で座りっぱなしだが、つばのついた帽子に、日焼け止めも塗っているのだろう、寒さを避けるためか着ぶくれして一見、ぬいぐるみ人形状態である。
今日は女らしい」
いつもと違う髪形をした秦先生を見て某先生が一言
「私は女ですよ」
「少女みたい、乙女みたいという意味ですよ」
 笑いがおこる。いつものことだが、先生方の機知にとんだやり取りは面白い。
そして、いよいよ入場行進が始まる。
高学年から順次、メインスタンドの前を通り過ぎる。六年生がいくら手と足を高く上げ、整然と行進しても、一クラス三二人を誇る五年生が元気よく行進しても、ちょこまかした新入生には勝てない。ひとりひとりが自分の名前に色を付けた小旗を持っての行進が始まると、オモニたちの「こっちを見て」の大コールである。
 
 
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「『大きくなって何になる?』元気に行進する新入生の希望を紹介します」
高学年による案内放送の内容もいい。
「心が温かくウリマルを上手に話すカン・リャンウトンム。大きくなったらサッカーの選手になりたいそうです。」
「朝早くに登校してボール蹴りを楽しむウ・ユジントンム。ニュースキャスターになりたいそうです。」
「何事にも一生懸命取り組み、大きな声で発表するアン・セリュントンム。公認会計士になるそうです。」
新入生一九人の特徴と将来の夢がひとりひとり紹介されていく。
元気に小旗を掲げて練習通り行進する児童だけではない。恥ずかしそうにうつむき加減の児童もいる。緊張してか、つまずきそうになったり、小走りになったりしてしまう児童もいる。
場内からは大きな拍手、歓声が鳴りやまない。
少し長くなるが、全員の紹介を書きとめておく。
休み時間にはトンムと楽しく遊びまわるチョン・デフィトンムは、新幹線の運転手に、
ひらがなの練習帳にきれいな文字を書くホン・ジユントンムは、コメディアンに、
何事にも積極的で大きな声で発表するリ・ミョンストンムは、すし屋の店主に、
駆けっこが速く、サッカーが上手なカン・イルストンムは、建築家に、
色紙を上手に折り、絵が上手いパク・テウトンムは、忍者に、
ボールを上手に蹴るカン・スヨントンムは、庭師に、
活発で冗談を良く言うリ・ジャンウトンムは、コメディアンに、
大きな声で答え、素直なキム・リャンジェトンムは、サッカー選手に、
優しくて礼儀正しいキム・サンユトンムはサッカー選手に、
仲良しが多く、純真な心を持ったチェ・スネトンムは、キャラクターのコラショーに、
友だちの手助けをする心やさしいリ・ファリョントンムは、歌手に、
字がきれいで、絵が上手なチョ・ユナトンムは、パティシエに、
算数が好きなソン・ヒィナトンムは、保育園の先生に、
情が深いヤン・エリトンムは、歌手に
礼儀正しく、いつも明朗なコズチソヨトンムは、スケート選手に、
ウリマルが上手で、踊りの上手なオ・ミウトンムは、バレリーナになることが夢だといいます。
メインスタンドの左手、写真撮影用に用意された特設の台には、デジカメやビデオ片手のアボジとオモニがぎっしり、中腰になってシャッターを切り続けている。
 
 
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胸に「チェーサム」の文字が刻まれた白地のおそろいのシャツを着た、若い理事たちの顔も思わずほころぶ。定番の徒競争、障害物競争、ボールころがしに玉入れ、騎馬戦、綱引きに縄跳び、それにウリハッキョならではの農学舞と集団体操…祖父母や学父母と一緒に興じる競技には、笑いと声援が絶えない。
 卒業生による障害物競争もある。参加者の多くは、東京朝中に進学した中学生たちだ。中でも目を引いたのが、終わり近くになって走った、光った頭に巨体、黒のサングラスに派手なシャツ、一見なんとか風の若者だ。そばに座っていた、四〇年余りチェーサムで教壇に立っている高先生に聞いても、誰か分からないという。
最終組ではなんと今秋、計画している同窓会の打ち合わせで会ったばかりの同級生のニョドンムが走っていた。
競技を終えた彼女を追っていくと、そこには例のなんとか風の方と並んで座っている。
息子だという。
「最年長、とても還暦過ぎの走りにはみえない」と、茶化すと逆に「イルトンムも卒業生なんだから、走らなくては…」とたしなめられる。
「知っているでしょ、キュランのオッパ()」と、帰国した妹の同級生だといって、弟を紹介してくれる。テントから人があふれている。
チッカ(甥か、姪)の応援のために、一族総動員で来たようだ。
在校生が一三六人、なのに学芸会では五〇〇の席が奪い合いだ。運動会が始まる二時間も三時間も前から、テントを担いで、場所取りに奔走する理由がわかったような気がした。
一言で、ウリハッキョの行事は家族、親戚が久々に会えるかけがえのない社交場になっているようである。
昨年は土砂降りで中断を余儀なくされた全校生参加の集団体操も無事終わり、「統一旗」もグランドに舞った。
いよいよ、「アッパとオンマの力比べ」-男女対抗の大綱引きである。
一回目は男組の勝ち。昨年とは違う。「今年こそは勝てそう…」。
「勝ち組と負け組は商品が違います」案内放送のこの一言で、テントから女性群が這い出すように出てくる。
二回目は女組の勝ち。いやな予感だ。決勝前になおも女性軍の数は増えつづけている。中には、男子中学生も混じっている。子供もオンマの味方か…。
男性軍は、増えようがない。酔っぱらってとても縄を引っ張る状況ではない。
競技が始まるなり、ビールを飲みだし、「これからの青商会は、子供を三人以上生んで、みんなウリハッキョに入れる。体で学校を守っていかなくてはならないのだ」と、後輩にわけのわからないことを言っていた彼も、テントの中で沈没しているのだろう。
どこかのテレビ番組の受け売りだろう。腰を低くして、足を踏ん張る。目線は空を仰ぐように…、そんな指示が飛ぶ。
「ヨンチャー」。始まった瞬間、勝負はついた。
女性軍から歓声が上がる。これもいつものパターンである。
今年児童は、五年ぶりに青軍がリベンジを果たしたが、綱引きは今年も家庭での「力関係」から抜け出せなかった。
 賞品はいずれも家庭用品だったので、二つともオンマの手に渡ったのは言うまでもない。
 「今年は天も味方してくれたようです。お疲れさまでした」との校長先生の言葉とともに、長い一日は終わった。
 案内放送係の金教務主任と音楽の朴先生が放送機材の片づけに取り掛かる。
 その金先生に一言三言かけて、その場を離れる女性が…。昼食時間にも、教育会が準備した弁当を食べていた彼に、何事も言わずナムルか、サラダを置いて行った、その色白の美人だ。いい距離感、何ともいい感じだ。
 「何か手伝えることがありますか」と六年生。後片づけの係りは、六年生のようだ。一番の仕事は、ゴミ集めのようだ。
 三年生が金先生を囲んで座っている。「一年生と二年生に、オモニ会からの健康飲料を持って行くように…」
 そんなことも、よく言われる「低学年の長」としての三年生の役割なようだ。
 成先生と四年生の児童の間には、すでにその健康飲料が積まれている。
 「お先に」と声をかけると、一斉に「スゴハショスンミダ(お疲れさまでした)」。
 金校長は、「天も味方した」と語っていたが、雨が降らなかったばかりか、カンカン照りでなかったことは、「日焼け大敵」の女性の先生にも「天は味方した」ようだ。運動会の翌日からは、日差しが強い晴天が幾日も続いた。
×     ×
 運動会が始まる前、金校長がオモニ会のテントを訪れ、会長と二人の副会長に感謝を込めてネーム入りのボールペンをプレゼントしていた。
学校の行事に参加するたびに、思うのは、オモニ会の役員の苦労である。
この日も、コーヒーコーナーを出し、九〇人分のオードブルの受け渡しに、創立六五周年記念グッツのタオルの制作・販売に、後片付けと、自分の子供を応援する時間も惜しんでの活躍であった。
これからも、一日給食、夜会にバザー、各種競技大会、敬老会など、学校行事は目白押しだ。
 そんな活動、思いを東京朝鮮学校オモニ会連絡会のブログ「パラム()」の東京第三オモニ会のコーナーに、是非とも引き続き、詳細につづってほしい。ここでは書ききれない、もう一つの「朝鮮学校のある風景」として、ウリハッキョに関心を寄せる多くの人々に感動を与えること間違いないだからだ
(ウリハッキョを記録する会・一粒出版 金日宇)
 
 
*次回は、「統一評論」8月号発売の7月18日前後の掲載となります。
 
 
 
在日のこれまでと今を本に
一粒(한알)出版
TEL.FAX 03-6279-3356
www4.ocn.ne.jp/~uil/tokyo3.htm
 
 
 
■シリーズ・朝鮮学校の歩みⅧ「続・東京朝鮮第三初級学校物語」(体験記録編・一九四五~二〇〇九年)刊行のお知らせ
 二〇〇七年刊行の「物語」の続編。草創期から現在に至るまでの児童・学父母・教職員の体験記録と児童の作文・アンケート調査の結果などを収録。
 
目次・内容などは 
www4.ocn.ne.jp/~uil/tokyo3.htm
 A五判・三九〇頁・頒価二、八六〇円
 一粒出版 TEL.FAX 03-6279-3356
uil21@yahoo.co.jp
 
 
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