新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」木村・渡邊(05/04マチネ)の感想 | まるこブログ

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昨日5月4日も、新国立劇場へ。

前日と同じ「白鳥の湖」の公演だが、主役キャストがガラッと変わり、オデット/オディールは木村優里、ジークフリート王子は渡邊峻郁、悪役ロートバルトは小柴富久修、宮廷道化師は小野寺雄…という組だ。




初台オペラシティに到着すると、広場で「花の絵」を製作中だった。

イタリアやベルギーで見たことはあったけれど、日本で出会ったのは初めて!

こういうのは、日本人が本気でやったら、とんでもなく素晴らしいものが出来るに違いない。

聞けば「東京インフィオラータ」というイベントだそう







昨日の公演は14:00開演のマチネのみ。

前日は13:00〜と18:00〜の2回公演だったから、その翌日でダンサーはさぞお疲れだろうと思ったが、ステージを見る限り、冒頭から皆さん元気溌剌で踊られている。

プロ魂だ!


それにしても、第1幕は王子役の渡邊峻郁さんが、登場するなり圧倒的に素晴らしかった。

とても若々しい…のに、自然な気品が「育ちと立場」の違いを見せつける。

しかも周りの人々との気さくなやり取りからは、王子の気取らず親しみやすい人柄も滲んでくる。

更に凄いと思ったのは、第1幕最後の王子のソロで、あそこは舞台に一人っきりの下手をすると寂しく冗長になるシーンだが、そんな風にならないどころか、王子の心情をチャイコフスキーの音楽と一体となって切々と表現され、胸がジーンとなった。

「白鳥の湖」は「王子の成長物語」でもあるのだと、ハッキリ訴える演技で、彼がオデット姫に出会うのは、この時から必然の流れだったのだと強く思わされた。


そのまま第2幕に進み、いよいよ木村優里ちゃんのオデット姫が登場。

長い手足が美しく、儚く、私と同じ人類とは思えない!

そうか、彼女は白鳥なのだ…と、ひたすら夢心地で見とれてしまう。

しかしそんな彼女が王子と出会い、2人が、観客がしっかり感情移入できる丁寧さで、みるみるうちに恋に落ちていくから堪らない。

ドキドキする。

「私は、こういうのが観たかった! こういう心理体験がしたかったの!!」と、静かに興奮してきた。

もちろん主役2人の踊りの技術は高く、ダンスとしての見応えも充分なのだが、それ以上に物語を演じる「役者」としての見事さだ。

なんと王子がオデットの手を取ったり、愛情深く顔を覗き込んだり、身体を支えたりする度に、まるで自分がオデットになったかのように嬉しさや満足がこみ上げた。

優里ちゃんのオデットも、観客の気持ちをしっかりと乗せて演じているし、なにより渡邊王子の「愛」が純粋に深い。

昨年の「ジゼル」でも、このコンビには涙を搾り取られたけれど、「白鳥の湖」の第2幕でも…とは、正直想像してはいなかった。


そして第3幕の舞踏会。

黒鳥オディールとなった優里ちゃんは、これぞ!!という迫力で、まぁ誘惑する誘惑する!

渡邊王子の演技も、細かいのに分かりやすく、オディールをオデットと確信を持てずにいる時間から、「彼女に決めた」と変化する心模様の揺れが、そのまま伝わってきた。

裏切りが判明する場面は鳥肌もので、高笑いするオディールに対して、激しく傷つき自分を責める王子は痛々しく、しばしば「白鳥の湖」で湧き上がる「王子ってアホよね〜〜」の感情は、微塵も生まれなかった。


第4幕のオデットに戻った優里ちゃんは、さっきの毒々しい「魔性の雌猫」みたいだったオディールとは打って変わり、ひたすら儚い。

お化粧だけ、なんとなくオディールの強さが落としきれずに残っているように感じたけれどキラキラ、まぁ早変わりで時間のない中だから仕方なかろう!!

ロートバルトに折檻され絶体絶命のところに、あのチャイコフスキーの最高に素晴らしい音楽と共に現れる王子の頼もしさたるや!

ここからの振付と演出には、毎回「えーっ?」となり、「へなちょこ王子」とか「結局オデットに守ってもらってるやん!!」などと感じてしまう私なのだが、なにしろ渡邊王子には「強い愛」があり、優里ちゃんのオデットもそれを完全に受け止めているものだから、全く違和感を抱かない自分にビックリした。

「本当に愛の力で悪に勝つことって…あるのかも」…なんて思えて、涙がツー、ツーと溢れてきた。


終演後の拍手とブラボーは、前日の素晴らしかった米沢さんと井澤くんの組より、倍は大きかったような気がする。(この差はハッキリ「愛のない王子」のせい!!)



木村優里ちゃんと渡邊峻郁さんは、コンビとして非常に相性が良いのだと思う。

ドラマ作りの方向性が同じで、常に観客の気持ちが同化することを念頭に置いて演じられている気がする。

この先、様々な演目で2人を観たい。

マクミランの「ロミオとジュリエット」や「マノン」なんかは、絶対にこの2人で観たい。

とりあえず来月には「眠れる森の美女」があるから、それを楽しみに私は生きていこうと思う。







新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」
2018年5月4日 14:00開演
オペラパレス

【スタッフ】

音楽/ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

振付/マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ

演出・改訂振付/牧 阿佐美

装置・衣裳/ピーター・カザレット

照明/沢田祐二

指揮/アレクセイ・バクラン

管弦楽/東京フィルハーモニー交響楽団


【キャスト】
オデット/オディール     木村優里
ジークフリート王子     渡邊峻郁
ロートバルト                小柴富久修
王妃                              楠元郁子
道化                              小野寺雄
家庭教師                       内藤 博
パ・ド・トロワ
          池田理沙子/柴山紗帆/木下嘉人
ワルツ
          寺井七海・渡辺与布・川口 藍・玉井るい
          中田実里・益田裕子・若生 愛・今村美由起
          貝川鐵夫・福田圭吾・清水裕三郎・趙 載範
          中島駿野・原 健太・福田紘也・浜崎恵二朗
          五月女 遥・広瀬 碧・赤井綾乃・朝枝尚子
          加藤朋子・菊地飛和・北村香菜恵・木村優子
          清水理那・土方萌花・廣川みくり・山田歌子
          井澤 諒・宇賀大将・太田寛仁・小川尚宏
          佐野和輝・髙橋一輝・中島瑞生・西川 慶
          樋口 響・渡邊拓朗・渡部義紀・仲村 啓
小さい4羽の白鳥
          池田理沙子・奥田花純・五月女 遥・広瀬 碧
大きい4羽の白鳥
          寺田亜沙子・細田千晶・渡辺与布・玉井るい
白鳥たち
          飯野萌子・川口 藍・中田実里・益田裕子
          若生 愛・赤井綾乃・朝枝尚子・今村美由起
          加藤朋子・菊地飛和・北村香菜恵・木村優子
          小村美沙・清水理那・関 晶帆・原田舞子
          土方萌花・廣川みくり・廣田奈々・守屋朋子
          山田歌子・横山柊子・稲村志穂里・関 優奈
儀典長                          
          太田寛仁
花嫁候補
          朝枝尚子・加藤朋子・小村美沙
          原田舞子・土方萌花・山田歌子
スペインの踊り
          川口 藍・益田裕子・木下嘉人・清水裕三郎
ナポリの踊り
          池田理沙子・広瀬 碧・原 健太
ルースカヤ                   
          細田千晶
ハンガリーの踊り
          飯野萌子・福田圭吾
マズルカ
          寺井七海・中田実里・若生 愛・今村美由起
          趙 載範・福田紘也・佐野和輝・浜崎恵二朗
2羽の白鳥
          寺田亜沙子・玉井るい
大きい4羽の白鳥
          渡辺与布・川口 藍・若生 愛・小村美沙









最後になってしまったけれど、その他の感想も少し。


まず、小野寺雄さんの道化師がとても良かった。

彼は以前よりずーっと舞台で大きく輝くようになられた気がする。

ロートバルトの小柴富久修さんもそうだ。

なんというか濃いめの「色気」が感じられるダンサーになってこられて、素敵だった。

スペインでめちゃめちゃキメキメだった木下嘉人さんと清水裕三郎さんにも、ポーっと見惚れた。

大好きなダンサー、飯野萌子さんは、相変わらず何を踊っても魅力的。

そうそう、第1幕のパ・ド・トロワもすこぶる良かった。

いつも地味目な柴山紗帆さんが、道化師と関わる時の笑顔の明るさにハッとして「可愛い!」と思ったし、昨年くらいまでまるで好きになれなかった池田理沙子さんを、今では大絶賛の目線で追いかけている自分がいる。

こうして私は、ますます新国立劇場バレエ団がまるごと大好きになっていくのだゲラゲラ



残念ながら今日はこれから仕事があり、5日の公演は観ることができない(涙)

柴山紗帆さんのオデットに奥村康祐さんの王子で、きっと昨日とは違う素敵な舞台になるだろう。

行ける方が羨ましい。

あと私は、6日の小野絢子・福岡雄大コンビの公演を残すのみ。

連休は終わってしまうし、日曜日は重症の「サザエさん症候群」を発症してしまいそうだ〜〜







帰宅する時に撮った「インフィオラータ」