11月17日にポケモンRPGの新作ゲーム「ウルトラサンムーン」が発売されたので、私は現在、恐ろしく多忙(笑)である。
かれこれ「ポケモン」との付き合いは20年近く…
最初は幼かった息子と一緒に遊ぶために始めたものが、その息子はとっくに足を洗ったのに、付き合いだったはずの私が、いつまでもいつまでもハマっている現状である。
歩くときは常に「ポケモンGO」と共にあり、今ではすっかり “高レベル” のトレーナーだから、家の近所の “ジム” では牢名主化している。
そこにもってきての新作RPGの発売だ…
こういうのは本当に困る。
季節的に仕事だって忙しいというのに、あぁ…でも…ポケモンを無視できる自制心は、全くもって無いのである
うちの家族もそれは皆様ご存知で、家事全般を放り投げられることにも十分な覚悟と慣れをお持ちのようだし、そこに私も甘えてここ2日…
仕事する以外の時間を、ほぼポケモンに捧げてきたわけだが、ここにきてN響定演だ。
N響には、ポケモンより更に倍の年月ハマってきた歴史があるので、やはり優先されて当然だろう
しかも指揮は、このところもっともお気に入りで “推し” ているソヒエフ
演目も、滅多なことでは生演奏に接する機会のない、プロコフィエフの「イワン雷帝」だ。
…というわけで、昨日の予定として私は、「N響」と「ポケモン」だけは、しっかり頭に入っていた。
だというのに、午前中に「仕事」があることはポッカリ脳みそからこぼれ落ちていたらしく、前の晩遅く(←ほとんど明け方)までゲーム廃人をしていたのが祟り、ふっと目が覚めたら7時!
仕事に間に合うためには、7時20分には家を出なければアウトなので、文字通りバネのように飛び起き、化粧せずに外出するしかないので大判のマスクをし、駅まで走りに走った…
職場では「お風邪ですか?」と何人もに心配されたけれども、、、いえいえピンピン元気です…とも言えず…たまに偽の咳をしてみたり
そんな感じで半日仕事をし、小雨の中を向かった渋谷のNHKホールだった。
私の「イワン雷帝」という人物への知識は、とても浅い。
とりあえず「恐ろしいロシアの皇帝」というイメージに尽きる。
自分の唯一の跡取りである、実の息子の皇太子を、怒りに任せて殴り殺した「絵」を見て以来、もうその印象しかない。
山のように人を殺し、拷問するのも大好きだった…とか、ネガティブな情報しか聞いたこともない。
だから今回、いかにナレーションが素敵な片岡愛之助さんであろうとも、大好きなソヒエフが指揮しようとも、オラトリオの内容に共感したり、ましてや感動することはないだろうなぁ…と思っていた。
音楽なら、これまた好きな作曲家のプロコフィエフによるわけだから、断片的に知っている箇所もあるし、他の作品との相似点も色々あって「楽しめるだろうな」とは期待していたけれど、正直それ以上のものを求める気持ちはなかった。
ところが…だ!!!
まず、合唱が、すんばらしかった!!!!!
東京混声合唱団と東京少年少女合唱隊による合唱が、それはそれは凄かった。
特に中盤のアカペラ部分の美しさときたら、まるで遠くに小さく輝いていた星団が、猛スピードで接近してまた去っていくような、宇宙的なスペクタクルに満ちていた。
あの眩さは、特別な「人の声」にしか出せないものだ。
そして幕切れの大迫力!
NHKホールだというのに、音圧に身体が押し込まれるような実感があり、不意に涙があふれた。
「物語」には何一つ感動しなかったけれど、「音圧」にやられる…という、なかなか稀有な体験
いや、たしかに物語そのものには「ピン」とくるものはなかったけれども、片岡愛之助のナレーションには「おおっ」と胸揺さぶられる瞬間が何度かあり、ビックリしてしまった。
もはや「内容」は関係ないというか、流石は歌舞伎役者の台詞まわし、声の調子、凄いもんです。
どう考えても悪人としか思えないイワン雷帝を、片岡氏が演じると、なんだか「大河ドラマのヒーロー」のようで、もしかして良い人だったの?…と錯覚してしまいそうな勢い…
ソリストの2人もしっかりした歌唱で、それを支えるのがソヒエフとN響の柔軟にして堅固なコンビ。
本当に、文句なしの名演でした。
第1871回 N響定期公演 Cプログラム
2017年11月18日(土)
開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール
指揮:トゥガン・ソヒエフ
プロコフィエフ(スタセヴィチ編)/オラトリオ「イワン雷帝」作品116
メゾ・ソプラノ:スヴェトラーナ・シーロヴァ
バリトン:アンドレイ・キマチ
合唱:東京混声合唱団
児童合唱:東京少年少女合唱隊
語り:片岡愛之助