「夜更かし」の反対語は何だろうか。「昼暮れさし」だろうか。

十五ヶ月記念にメールを送って、それからも少し起きたまま漫画を読んでいた。

木村紺「神戸在住」。
高校の頃、俺の世界観は狭かった。多少オーバに云えば、知った場所=地元と、知らない場所=東京しかなかった。全国に流通している漫画に出て来る様な土地は全て、漠然と東京だった。そんな思い込みの中で、「神戸」と云う身近な地域が登場する背表紙は鮮烈だった。

読んですぐ、主人公の辰木桂に自分を重ね合わせた。
話の筋書きや当初見慣れなかった絵の繊細過ぎるタッチも今は大好きである(絵柄は最終巻に至る頃には随分変化してゐるが)。しかし、奥行きある造形の為された、辰木桂と云うキャラクター=登場人物/人格なくして、此処迄の思い入れは無かったに違いない。
桂は読書が好きだ。歳の近い兄弟がいる。関西に住んでいる。涙腺が緩い。恋愛経験が無い。余り着飾る事に興味が無い。アルバイトをしていない…等々。
桂が主人公だったおかげで、「神戸在住」は俺の本棚に於いて特権的なスペースを与えられてゐる。

物語は桂の大学卒業を期に終わる。
終わって仕舞う前に俺も桂と同じ大学生になった。大学の所在地やアルバイトを始めた事等、少しずつ桂とは違いが出来たが、それでも俺は此の漫画が好きだ。そもそも性差を超えて好きだったのであるから、今更幾らかの差異は関係が無かった。

ただ、幾らしょっちゅう読み返すとは云え、俺が2、3回生の頃完結して仕舞ってからは意識の上で過去の漫画と成ってゐた。

桂の後から俺が4回生に成り、俺には彼女が出来た。
彼女と1年少し交際した上で「神戸在住」を読むと、新たな読み方を知る事が出来た。
つまり、桂と俺の恋人とを重ね合わせて見ると云う遣り方である。

俺と桂が重なるのとは違う部分で、恋人は桂と重なってゐる。即ち、女性である事であり、大学で油絵を専攻した事であり、亡くした祖母が好きだった事であり、猫好きな点であり…。

恋人に関する知識が桂への感情移入をより容易にし、桂が私の恋人理解を深める助けをして呉れる。

恋人に読ませてみたい。
此の漫画を気に入るだろうか。それとも面白味を感じないだろうか(感情の起伏は丁寧に綴られるが、話に殆ど起伏は無い。震災の話を除けば、ひたすら桂の大学生活がスケッチされるのみである。にも関わらず面白い事が作者の高い力量を示してゐると俺は考えるが…)。
今朝見た夢。
舞台は昔祖母と伯父が暮らして居た家。しかし夢の中では座敷が何十倍の広さ。
その二階にある座敷では、遠井家一同と彼女の家から彼女を含め六人以上が出席しての大宴会。
遠井家の兄弟と彼女の兄弟と云う子供達だけが給仕を一任されてゐる。
しっかりしてゐる彼女。彼女を追うばかりで精一杯の俺。彼女に叱られる彼女の姉御。
一方、遠井家の敷地の外側から鬨の声が。数万の戦国武士同士に依る合戦が始まろうとして居たのだった。
混乱を察知したのは我々子供世代のみ。果たして無事宴会は行われるのか……。

目覚めた。
俺はどうも夢ですら長い話にオチを付けられないらしい。



昼過ぎからデート。
初めてのポムの樹。鮭アスパラガスあんかけオムライス柚子胡椒ソース。
アルバイト先の異常さに就いて。
解けないiPhoneのパズルゲームアプリケーション。

カラオケ。
彼女のダブルワークに就いて。
「異邦人」。
「ハイスタンダード」のヒダカトオル声に就いて。

戎神社の十日戎。お祭りは常に楽しい。
唐揚、箸巻。
彼女が居なければ生涯食べなかったであろう、苺飴と葡萄飴と。甘くて果物の味が沢山する。


記念にクッキーを呉れた。何かで返そう。
他の誰かと行った話は不要だった。思い出した毎に全て聞いて欲しく成るのは悪癖。恐らく半分は虚栄心(少しはモテたんですよ)。

読みの問題。配点各一。
海浜
梱包

イルカ、海亀、ラッコは大きい。
0歳のペンギンは大人と柄が違う。そして、ペンギンは黒いのにイラストにされると青く塗られる謎。

ビリヤードで彼女に褒められた(!)。
ボーリングでターキー。
まさかの自己ベスト大幅更新。

我々より自然にベタベタするカップルが存在する驚き。ほっぺコネコネ。
友達と相対したような口調への驚き。
男同士女同士でよく話して、俺と向こうの女子、その逆の組合せは両方少なかった。遠慮(?)。

ダブルデートの後は二人きりの時間が必要。
河原。
一昨日、彼女と初詣へ行った。
京都は出町柳、下鴨神社。
京阪出町柳駅下車、鴨川を渡りすぐ北側。好立地。
様々な社の総体として在って、幾柱もの神々がお祀りされてゐらした。
我々はもう知り合って交際してゐるけれども、改めてこの結ばれた縁の持続に就き祈る機会として、縁結びにも御神徳あらせられると評判の此処を選らんだ。
因みに世界遺産、国宝である。

湧いたり枯れたりすると云う、京都七不思議の一なる小川が流れていた。

三が日を過ぎ、天候も悪かったが中々の人出。屋台もまだ在った。
B級グルメのシロコロ焼、「こち亀」的なベーコンエッグ・タイ焼を食べた。
しょっぱいものばかりである。
どうぞご自由にとは書かれてゐたが、休憩所では中にお店も有って、休む為だけに入るのも申し訳なく、結局駐輪場の屋根の下で立って食べた。

天候が悪かった。詳しく云えば雪だった。
温かい土には積もらないが、冷えた屋根等には積もってゐた。

材木に見える(が意味があるのかも知れない何か木端)を燃やして焚火をしてゐた。
何かが燃えている、温かい。シンプル。
燃焼とは急激な酸化。人もゆっくり酸化してゐる、らしい。温かい。シンプル。

森、和風建築、雪。
此れ等の組合せは、俺の想像力の中で、「叛乱」の舞台である。
二・二六と、彼女の指摘した桜田門外の変、加えて今思い出した吉良邸討入の各事件がそうさせるのだろう。

彼女とは互いに願を掛け合い、お守りを贈り合った。

「幾ら幾ら円のお納めです」
「ようお参りです」


追記
手水で身を清めるのを忘れていた。何処か聖性を信じてゐるからこそお参りに行ったのに、知った手順すらすっ飛ばして仕舞って後悔してゐる。
アルバイトでは、良く顔を合わせる同僚と、そうでない人とが居る。
俺に対して同僚を並べて、親しさのグラフを彼等の頭上に伸ばせば、一緒に働いた時間に比例して描き上がるだろう。
恋愛シュミレーションゲームの如き、綺麗に整った、数値化された親しみの図が現実に権限して可笑しい。

俺は男性と云うものを、精力の強さを誇り合う原始的な生物だと心得て居る。
男性社会では、性交の実行人数や、フェティッシュの対象の些末さ或いは異常が競われて居る。
童貞を恥ずかしがったり、素人モノと呼ばれるジャンルのアダルトビデオの良さを説いてみたり、皆同根の意識から発してゐる。
個人間でも、「世間」に対しての「身内」でも其の模様は見られる。

俺の働く店でも、「みんな変態ですよ」「夜勤採用の条件は変態さっすからね」と云う人物評を幾度も聞いた。働く度に毎度聞いているかも知れない。
又、聞く度に、コメントに潜む特権意識に気付くばかりだった。

恐らく続く
深夜バイトの休憩をしている。
休み時間に読む為のメールが彼女から届いていて喜んだ。

彼女は一人で出掛ければ土産を呉れ、公園でデートすればお弁当を作って来て呉れ、夜勤明けの俺に合わせて早起きして呉れる等、沢山の事をして呉れる。
最近其の様な事が重なっていて、平時以上に彼女を深く愛おしく思う。

出会って一年、もうじき恋人同士と成りて一年。彼女と知り合わなくては此のブログも無かった。
来年も再来年も同じ事をきっと思うだろう。と云うより思いたいし、思う様にする。
珍しく悪夢を見た。
映画「告白」のDVDの効果に違いない。
細かな状況は忘れたが、ずっと絶叫してゐた。酷い苦痛を伴ってゐた様で、体もずっと激しく動いてゐた。
其れが夢の中だけだったのか、現実に喉を震わせ手足を中空に舞わせてゐたのか判然としない。
一度余り叫ぶので早起きの父に起こされたような気もするが思い過ごしかも知れない。
又、窓の外に女性の助けを乞う痛烈な、声を聞いた気もする。
女は今にも強姦されると云う様な事を言ってゐた。
何処迄が夢だったか。
くっきりと台詞が聞こえたと云う事は、女の叫びは俺のみに聞こえた幻だったのだろう。
全て曖昧な、ぞっとする一夜が明けて今より採用面接へ出掛ける。
朝は問題なく早起き出来、時間にたっぷりの余裕を持って面接会場へ行った。
面接も、言葉に詰まったりはせず、何を聞かれても平常考えてゐる事を答えられた。
もし落選する時は、俺より優秀な応募者が有ったからだろう。自滅したようには思えないので、精神衛生上の必要からもそう信じて置く。

まあ面接もそうして終わり、自分で満足のいく中食を用意する等して、気楽に過ごしてゐたのに、夕方からは一転詰まらなかった。

彼女からメールが暫く中断した位で一々と気弱に成り、出掛けようかと思えば雷が激しく鳴り雨が屋根を叩く音が響き、コピー機を使わんとすれば原稿を置くガラスが修正液で汚れてゐたと云う様に。
加えて何故か捻挫してゐる右手首が相変わらず痛い。

唯、彼女は優しいので、俺の弱ったメールに返す時は根気良く慰めて呉れた。
長らく遣り取りし、其れでやっと平癒した。
心に芽生えた妄念でひとりでに疲れた気持ちに成り、彼女と云う現実が解決して呉れた。よく現実は辛いと云うが、此は全く逆のパタンだった。
俺の地元を彼女と歩いた。
坂を上り階段を降りる。
公園に座り神社に頭を垂れる。
又、帰り途は自動車で送った。

楽しい一日は終わるのが惜しい。
寝るのが勿体無い。




ああ、次いでに誤解を解いて置こう。
些末な事だが。
俺が彼女わ手で無遠慮に触れながら、「もっと積極的にしていこうと思って」と言った。
彼女は、自らの態度を積極にするようにと俺から注文をされたように受け留めたらしい。
あれはそうではなく、俺がもっと彼女を皮膚で感じて行こうと図っただけの事だ。
彼女に注文はない。
ピッツァ専科ポパイ。
花隈
ピザセット、旨い。