Jin side 35.


愛してる。

ただ。

本当にそれしかないのに。


*******


JM『うわぁ、晴れてきたね!』


空は昼まで、低い雲を抱えていたが、今は見事に全てを払いのけた。

夕陽が煌々と輝く。


NJ『なんだよ、ジミン。おまえ楽しもうと思ってんの?』


今日は花火大会。


JM『そんなこと...あるわけないでしょ...』


YG『ナムジュナ、やめろ』


JK『そうだよ、ちゃんと話し合って今日決行って決めたのは、俺ら7人なんだから』


そして、ヌナの記憶を消す日。


『ごめん、巻き込んで...今からでも僕ひとりで...』


TH『ダメだよ。ヌナとの最後の思い出、ヒョンだけのものにしないでよね〜』


テヒョンが手際良くテーブルクロスを掛ける。


HS『綺麗な花火を見せたいんだよな、ヌナに』


ナムジュンの言葉にしょげるジミンの頭を、ホソクがそっと撫でる。


NJ『分かってる...分かってるけど、なんかやっぱ...うまくいくか?こんなこと』


『ナムジュナ...』


そうだよな。

本当うまくいくのかな、こんなことして。

ヌナにとって、良いことなのかな。


YG『お前が挙動不審になんなきゃ大丈夫だよ。くれぐれもスポすんなよ!』


NJ『ちょっ、ひどくないですかぁー!?』


ナムジュンの大きな声に、みんなが一斉に笑い出した。


ヌナは研究所での仕事終わりにこちらへ向かうことになっている。

その時間までに、最高のパーティを用意する。

忘れてしまうのに。

忘れさせてしまうのに。


その瞬間までは。

ヌナに世界で一番幸せだと感じてもらいたい。


***


『ヌナ、おかえり』


『ジン、ただいま、ってなんか...自分の家でもないのに変な感じ。照れる』


もう外は寒い。

ヌナの頬をほんのり赤く染めたのは外気のせいでなく。

僕であれたら、と本気で思ってしまう。


『お邪魔しまぁ...わっ!なんてすごい料理なの!』


『ジョングク、自分の家で下ごしらえして、こっちでもずっと作ってくれてたんだ』


「きゃ〜!すごすぎる...私の持ってきたデザートがかすんじゃう」


美しく盛り付けられた一皿ひとさらを丁寧に眺めては感想を言う。

グクの得意そうな顔が、ちょっと憎らしい。


HS『ヌナお疲れ様〜さっ、コート預かるよ〜』


『ありがとう!あ、教えてくれたみたいに軽いコートに換えたの。それだけですっごい体が楽なんだ』


TH『ヌナ、これ見て。姉さんがデザインしたテーブルクロスとマット』


『わぁ、かわいい!ね、もしかしてこのクマのマーク...』


TH『僕の...アイデア』


微笑み合う二人は、もう一つの姉弟のようにも見える。


ヌナは、もう既に。

僕だけじゃなく、みんなにとってもかけがえのない存在なんだ。


NJ『ねぇヒョン...今ならまだ...』


YG『お前の気持ちも分かる。でも散々話し合っただろ。何度も同じこと繰り返し考えた。結果は出たんだ』


ナムジュンの垂れた頭を、ユンギがぐしゃぐしゃと撫でる。


YG『ヒョン一人に背負わすわけにはいかないんだ。ヒョンの人生に深く関わった俺たちみんなで、ヌナを守るんだ』


そう、守る。

ヌナを僕から守るために、記憶を消すんだ。