Jin side 28-2.


→つづき


まだ深熱を残しながらも、胸に抱いた2本のペットボトルで少し冷やされた気持ちを携え、カードキーを挿し込む。


カチャッ


ふぅっ...


あまり大きな音を立てないでくれよな。

ヌナが起きちゃう。



そっとドアを開けると、バスルームに立ち込めていたシャンプーの香りが鼻先に届いた。


やばいな。

またドキドキしてきた。


ドアを閉め、ベッドのある方へ歩き出すと、人影が動いているように見えた。


あれ。

起きちゃったのかな。


『ヌナ?』


柱越しに顔を覗かせると、ヌナが起き上がってベッドに座っていた。


「ジン...」


『あっ...ごめんね!喉が渇いたから水を買いに行ってたんだ。ヌナも飲む?』


「ジン...」


ん...?


差し出したペットボトルは、行き場を失っている。


『ヌナ?...ヌ...』


閉じられた瞼から光るものが見えた。


「ジン...ジン...」


ちょっと...待って...


ヌナ...

眠ったまま...?



慌ててヌナの隣に座り、肩を抱きながら頬に流れる涙を拭う。


『ヌナ、僕はここにいるよ?ヌナ?目を覚まして。ねぇ起きて、僕を見て?』


肩を抱いた手のひらに力が入る。


「ねぇジン...ごめん...なさ...」


ヌナの頬にとめどなく涙が溢れる。


起こさなきゃ!


『ヌナ!起きて!もう僕はどこへも行かない!ずっとヌナのそばにいるよ?目を開けて!』


声が大きくなる。

ヌナに、ちゃんと届いているのか?


「ジン...ジン...ジ...」


思わず。

僕の名前を呟くヌナの唇を塞いだ。


あまりに哀しくて。

あまりに情けなくて。


こんなことしか、できない。


ヌナの涙で僕の唇が濡れたと思っていたけど。

どうやら、それだけではないようだった。


→つづく