41-1.
それが運命だとしたら。
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ここへは、あの時。
韓国で初めて待ち合わせた、あの暑い日に一度来たきりだった。
私も、ジンも。
それぞれ違った理由を抱えて、人目を避けていたから。
東条先輩に、このカフェを待ち合わせ場所に指定されて、正直焦った。
ジンとの思い出が、少しでも脳裏を掠める場所は避けているから。
その反動で眠っている間に、あんな...
治りきらない指の傷が、色素沈着してきているように見える。
「もう歳なんだから、いい加減治らなくなるわよ」
自戒も込めて、指先に問うたところで効き目はないだろうけど。
本当は待ち合わせ時間ギリギリに到着して、店の前で待っていようと思った。
そうすれば、店内に入らずに済む。
それなのに。
なんで、今日なのかな...
カフェの開店10周年のイベントらしく、店員が駅前でクッキーを配っていた。
何の気なしに受け取ると、そのまま店内に促され、ドリンクを注文する羽目になってしまった。
別に。
いいけど。
先週まで吹雪くこともあった空も、今日は空色が眩しいくらいだ。
三寒四温を経て、春を迎える。
この時期は、命の芽吹きを感じられて、なんだか自分まで新しく生まれ変われるような気さえする。
鞄から本を取り出して、続きのページをめくりながら、腕時計に視線を落とす。
「先輩来るまで、ちょっとだけ」
つづく→