※再掲分です。


東条side 19-1.



あの夜の、瑞上の部屋の状況。


あいつの心に堕とされた影は、俺の予想を遥かに越えていて、余計に近付けなくなった。


眠っている間に起き出して、意識のないまま、あの扉をノックし続けている。


きっと。

彼の家の扉。


過去の「彼女」絡みで閉じ篭もっていた、あの辺りの記憶が一番強く、瑞上の心を締め付けているんだろう。


眠っていて、痛みを感じにくい。

自分では止められないから、毎晩でも繰り返す。



「夜間せん妄...」


手元のスマホには、今の瑞上の状態を示すような文献が多数挙げられていた。


手の傷も、治らないわけだ。


それに加えて、あの夜。

自分の犯した失態。


幸い、本人は気付いていないだろうけど。

自分の女々しさに、情けなくなる。



*******


監護対象から外れ、研究所を出た次の日からメールが来る。

瑞上に会いたい、と懇願する彼からだ。

もう、しょっちゅう。

そろそろ一ヶ月になるか。


それをやる相手、間違ってねぇか?

いや。

連絡を取るな、と釘を刺したのは俺だけど。


好きな奴へのラブレターを読まされる身にもなれっての。


「いつまで続くか見ものだねぇ...」