※再掲分です。
東条side 19-1.
あの夜の、瑞上の部屋の状況。
あいつの心に堕とされた影は、俺の予想を遥かに越えていて、余計に近付けなくなった。
眠っている間に起き出して、意識のないまま、あの扉をノックし続けている。
きっと。
彼の家の扉。
過去の「彼女」絡みで閉じ篭もっていた、あの辺りの記憶が一番強く、瑞上の心を締め付けているんだろう。
眠っていて、痛みを感じにくい。
自分では止められないから、毎晩でも繰り返す。
「夜間せん妄...」
手元のスマホには、今の瑞上の状態を示すような文献が多数挙げられていた。
手の傷も、治らないわけだ。
それに加えて、あの夜。
自分の犯した失態。
幸い、本人は気付いていないだろうけど。
自分の女々しさに、情けなくなる。
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監護対象から外れ、研究所を出た次の日からメールが来る。
瑞上に会いたい、と懇願する彼からだ。
もう、しょっちゅう。
そろそろ一ヶ月になるか。
それをやる相手、間違ってねぇか?
いや。
連絡を取るな、と釘を刺したのは俺だけど。
好きな奴へのラブレターを読まされる身にもなれっての。
「いつまで続くか見ものだねぇ...」