JIN side 21-1.


僕の還る場所。



『あらー?ソクジンくん久しぶり!』


底抜けに明るい声が、僕の肩を少し震わせた。


『かなり長いこと顔見てなかった気がするわぁ。仕事、忙しくしてたの?』


『あ...はい』


僕は今、半年以上の浦島太郎だから、余計なことは話さないようにしなきゃ...


『えらいわねー、ソクジンくんは!

もううちの子は昔の仲間と集まってばっかり。まぁ楽しそうで羨ましいけどね...ってあなたもその仲間か!』


肩をバンッと叩かれ、苦笑いしながら会釈し、鉄格子の階段を登る。


『ナムジュナに明日の朝はタンク車が来るから早く起きるように言っておいてー!』


もう、すっかり親子だな。


『はい、分かりました』


大きく手を振るおばさんに軽く手を挙げたと同時に、扉がガタガタと音を立てて開いた。


NJ『アジュモニ!全部聞こえてますよ!』


ナムジュンが返事と照れ笑いを下のおばさんへ落とした。


『...ナムジュナッ...』


NJ『ヒョン。もしかしたら来てくれるかも、ってヒョンが過去に戻ったっていう日から集まってたんです』


ナムジュンが扉を広く開けると、みんながいた。


そんなに長い間、会っていないってわけでもないかも知れない。


でも、今の僕の胸をきつく締め付けるほど、懐かしく温かい光景がそこにはあった。


HS『あっ!ヒョン〜!』


TH『ちゃんと戻ってきた!やったね!』


JM『早く入って!寒かったでしょ』


JK『このタイミングで来るなんて、ヒョンは意外と食いしんぼうなのかもね』


大きな鍋に大量のラーメンとソーセージ、野菜が煮込まれている。


『あぁ...プデチゲかぁ...』


真っ白い湯気が湿らせた目元から涙がひと筋、こぼれた。


みんなの息を飲む音が聞こえそうなほど静まり返る。


YG『...そりゃなんでもかんでもうまくいく、なんてことないだろうな』


ソファの真ん中に促され、ぽそっ、と座った僕はそのまま消えてしまいそうな虚無感に襲われた。


みんなは、ずっと「現在」を生きてる。

その力強さが漲(みなぎ)っている。


僕自身、「過去」を繰り返す中で成長することはない。


やり残した「過去」を清算することで心は満たされるかもしれないけれど...


いや。

それもどうだか分からない。



JK『とりあえず、麺が伸びちゃう前に食べよ。ヒョンの話はヒョンのペースで。はい』


器によそわれたあたたかい食事。

正直言って食欲はない。


『あ...りがと...』


順番に配られたプデチゲをものすごい勢いで食べ始める6人を見て、呆気に取られる。


YG『食べろよ。何があったか、このあと話すって選択肢しかないんだから』


スープを啜りながら、こちらを見ずに話すユンギ。


あぁ、そうだよな。

食べて、みんなにちゃんと話さなきゃ。


つづく→