⭐︎久しぶりのヌナ編です⭐︎
39-1.
自分で自分を操る、過信。
事故の相手が花屋のトラックだったと聞かされて確信した。
痛みで瞼を閉じる瞬間に感じた香り。
あれは、間違いなくスメラルドだった。
東条先輩が事故の概要を説明する短いその間に、頭の中でパズルが一人でに組まれたような感じがした。
スメラルドの影響で記憶を失くしたことにしようと思い付いた。
バラバラになっていたジンへの想いや、整理の付かない未練は箱に詰め込めばいいんだ。
普段はその箱にきちんと蓋をして鍵をかけておく。
ジンに会いたくなったら、その箱を少し開ければいい。
ううん。
開けなくたっていい。
触れるだけでジンが心に広く蘇るから。
脳波検査をしてしまえば最後、子ども騙しの嘘はあっという間に暴かれてしまう。
できるだけその機会に触れないように、うまく振る舞う必要がある。
...できるかな、私に。
正直。
真面目。
接頭語に「バカ」が付けば褒め言葉ではなくなる。
そんな私に、一番近くにいて一番鋭い先輩を欺けるかな。
でも。
やるしかない。
私は、ジンと日々を捨て去ることはできないから。
つづく→