JIN side 19-2.
→つづき
東条さんに掴み掛かろうとするが、力が全く入らない。
すっ、と避けられた東条さんの体を越して倒れ込んでしまいそうなところを所長さんが支えてくれた。
『落ち着こう、2人とも。な?君、覚醒後に興奮するのは良くないんだ。おい、お前も一旦冷静になれ』
『冷静でいられるかよ!』
『やめろっ!』
畳み掛けられたパイプ椅子を蹴り上げながら東条さんは怒鳴り続けた。
「やめられるかよっ!あいつをあんな目に遭わせて、辛い思いばっかさせて!当の本人はこんなスッキリした顔で戻ってきやがった。ヒョンがいなきゃ殴ってるっ!」
全部は分からない、けど...
僕に怒ってる。
ヌナに何かあったことを、すごく怒ってるんだ、東条さん...
『東条さん、本当に...申し訳ありませんでした...』
『おい、君!何やってるんだ、体を起こせ!』
所長さんの腕を振り払い、土下座に近い形で床にひれ伏す。
『あの...僕のことはこの後どうにでもしてください...どんな罰でも受けますし、何をされても構いません...なので、その前に...ヌナに...ヌナに会わせてください、お願いします』
ヌナに会わなきゃダメだ。
ヌナに伝えなきゃ。
東条さんに何をされるか、そんなのどうだっていいんだ。
ヌナに会いたい。
『俺、言ったよな?「彼女」の運命、あいつが背負ったんだよ。なぁ覚えてないのか、君の「彼女」、どうなったんだっけ?』
それは...
『花屋のトラックに轢かれたんだよな?その「彼女」を助けるためにタイムリープしたんだろ?やり直した過去で回避した事故をあいつが背負ったんだよ、だから?どうなったか分かんねぇの?おいっ』
また胸ぐらを掴まれて、無理矢理立たされる。
血走った東条さんの瞳に捉えられると、心臓が焼かれているかと思うほど熱く跳ねる。
『死んだんじゃねぇのかよ、その「彼女」っ!!』
『もうやめろ、いい加減にしろっ!』
勢いよく突き放されてベッドに倒れ込んだ。
静まり返った、この部屋の中では僕の鼓動しか聞こえない。
死んだ?
「彼女」の運命を代わりに背負ったヌナが...
ヌナが...
『あっ...あっ...ヌナッ...うっ...』
息ができない。
声が出ない。
ヌナはもういないの?
僕がヌナを...