JIN side 19-1.
大きな誤算。
簡単に会えるわけ、なかったんだ。
四回のノックの後、所長さんの返事からドアが開くまで間があった。
ゆっくりと開いたドアの先には東条さんがいた。
『東条さん、僕、「現在」へ戻ってきたんですね』
あぁ...
この人にも随分迷惑をかけたよな。
僕が自分やヌナを見失って、頼るは東条さんしかいなくて。
まずは、謝らなきゃ...
『おい、やめろっ...』
所長さんの鋭い声より早く、体に衝撃が走った。
東条さんが僕の胸ぐらを掴んでいる。
そうか...
怒ってるのか、勝手な僕に。
「頼むから消えてくれよ、瑞上の目の前から」
日本語が、難しい。
まだ、耳が聞こえづらい。
うまく聞き取れない。
『...東条さ...』
『やめろっ!覚醒直後だぞっ!』
所長さんの怒鳴り声が、くぐもったままの耳にのろのろと届く。
『なんでお前の「彼女」の運命、あいつが背負わなきゃなんねぇんだよっっ』
え...
いま、なんて?
「彼女」の運命...?
あいつってヌナのこと?
背負うって何を?
いつの、「彼女」の運命だ?
『...ヌナッ...』
東条さんの緩まない拳を、力の入らない手のひらで覆う。
なに...
何があったの?
僕が過去へ戻ってる間にヌナに何が起きた?
「彼女」の運命を背負うって、「彼女」が助かる代わりにヌナが...?
嘘だっ...
嘘だっ!!
『東条さん、なんですか。ヌナに何があったんですか、今どこですか?ヌナに会いたい、会わせてください!会って謝りたくて、ちゃんと伝えたくて戻ってきたんです!ヌナに...』
つづく→