JIN side 12-1.


僕は今、どこにいる?



一度目の過去では、留学先から帰国してみんなのことを知ってから、もう何ヶ月も塞ぎ込んでいた。


でも今回はその分の時間を何にだって使える。


高さのある空を見上げるのだって、混み合う街中を歩くのだって。

好きな時間に好きなことをしていい。


自分の罪に隠れるように生きていた、あの「過去」はもう消え去った。


...そう思いたかった。


それなのに。

あの「過去」が作った今の僕だから。

今の僕はあの「過去」から繋がっているから。


まるっきり違う、同じ「過去」の時間を過ごすことがどうしても難しい。


朝目覚めて、みんなや彼女から呼び出しがなければ、ふと見た窓の外が真っ暗、なんて日もよくある。


特に今は彼女の母親について調べることが多いから、自然と部屋にこもる時間が長くなる。


なんとなく、起業するタイミングを見計らっていた。

一度目の過去と同じくらいがいいのかも知れない。


こんなにも「過去」を変えてしまって...

もうこれ以上は無茶をしてはいけない気もした。


こんなに時間に余裕のある生活をしているのは僕だけかもしれない。

一度目の過去よりみんなと過ごす時間が少ない気がする。


いや、正確には一度目の過去のこの時間は一緒には過ごしていない。

みんな、バラバラだったから。


あの、何にも変え難かった輝かしい学生時代。

「一日中」という概念を越えるほど、ずっとそばにいた。


僕が壊した関係を繋ぎ止めることができたからこそ、それぞれの未来に向かって進み出しているのは分かっていた。


でも。

僕は。

今の僕一人だけが、「過去」に取り残されているような感覚になるんだ。


みんな。

置いていかないでよ。

やっとみんなと一緒にいられる日々を取り戻したんだ。

みんなのそばにいたい。

それだけでいいんだ。


「ここ」に置いていかないで。

待ってよ...