JIN side⑩
いつものように集まる仲間。
隣には大切な彼女。
ずっと思い描いていた「過去」。
東条さんと所長さんの元でタイムリープから意識転送した新月の夜。
僕は無事に「過去」に辿り着いた。
NJ『どうしたの、ヒョン。なんか冴えない顔』
いつもの場所でみんなと顔を合わせる。
あぁ、何年振りだろう。
JM『えっ...ちょっと待って。泣いてるの?』
HS『一体何があったの!?』
揃ったみんなの顔を見たら肩の力が一気に抜けた。
そしたら涙も溢れてきた。
良かった。
みんないる。
僕の目の前に、みんないるんだ。
JK『ヒョン、お腹空いてるの?ピザ食べる?』
口いっぱいピザを頬張るジョングクを抱きしめた。
TH『なんか...何年も会ってないみたいな雰囲気だね』
そうだよ、テヒョン。
タイムリープで会えたには違いないけど、それとはまた違う。
もう何年も何年も。
会いたかったのに会えなかったんだよ。
YG『ヒョン、とにかく中に入って座りなよ』
冷静なユンギの一声で、みんな定位置に落ち着いた。
YG『何か困ったことあったのか?』
『いや...大丈夫だよ。みんなに...会えなくなる夢を見たんだ。すごく長い夢でね。だから今、みんなの顔を見られて安心したんだ』
NJ『ヒョン...なんか小学生みたいなこと言いますね...』
ナムジュンの言葉に空気が止まった。
でも次の瞬間、みんな大笑いし始めた。
TH『もう、びっくりさせないでよー』
JM『そうだよ、夢の話なんて』
HS『俺たち、いつもここで会ってるのに〜』
JK『おなか空かせて寝たから悪い夢見たんじゃない?ピザ食べなよ』
YG『ジョングギ、食べ過ぎ』
口々に話すみんなを眺めてるだけで幸せだ。
そうだ。
ここが僕の場所...
*******
ポケットの中のスマホが彼女からの連絡を知らせる。
彼女に会える...
夢の中では彼女すら失ってしまってたんだ。
辛くて苦しくて。
夢の中、街中を一人で歩き回って彼女を探していた。
結局見つからなかったんだよな。
でも、今から会えるんだ。
現実の彼女をこの手で抱きしめられる。
長く悲しい、怖い夢からはもう醒めたんだ。
...そんな悪夢を見ている間にも、温かい希望の光があった気がする。
よく思い出せない。
ただ、その希望のおかげで目を醒ませたのかもしれない、と漠然と思っていた。
『ジンッ!』
彼女の長い髪が夜風に揺れる。
駆け寄る彼女を力いっぱい抱きしめる。
...あれ...
『いたっ...どうしたの、ジン?』
反射的に彼女を自分の体から引き離してしまった。
『あっごめん!...僕の胸に虫が付いてたような気がして』
『えっ、そうなの?虫嫌だー』
パタパタと服を払う彼女が目を合わさずに言った。
『今日も話、聞いてくれるでしょ?私にはジンしかいないんだから』
僕にも君しかいないよ。
でも...
なんだろ、さっきの感覚。
抱きしめた時の、違和感。