JIN side⑧-2.
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踏切で出会う「彼女」が、テヒョンの姉のソアとクラスメイトだと知った時、これを使わない手はないと思った。
「彼女」がいれば、二人とも救える。
まだホソクとジミンを救い出せていないのに、ソアと繋がりのある「彼女」に出会うことは次のステップへの伏線だと確信を得た。
テヒョンが一度目の「過去」より早い段階で父親に手をかけ兼ねない、と焦っていた僕は、「彼女」と打ち解ける時間を短縮するために、「彼女」の落とした手帳に記された「彼女好みの人間」を演じるようになった。
でも、その目的が、「彼女」にすぐに好かれるように、となったのはいつからだ?
なんでそんなことする必要がある?
僕には「現在」にヌナがいるのに。
8回目の、「彼女」と出会ったタイムリープ覚醒後に、取り乱したことをヌナにちゃんと説明したかった。
なんならいっそ、抱えている秘密、一度のタイムリープで「過去」を何度もやり直していることも打ち明けたかった。
漠然と、ヌナに助けて欲しかったのかもしれない。
でも、ヌナに時間をもらえなかった。
そりゃそうだよな。
あんなふうに焦った僕を見たら、ヌナ、嫌な気持ちになったよね...
ヌナに会えない時間が増えていく一方で、「彼女」に拠り所を見出してしまったのも事実だ。
僕は僕の心が分からないまま、ただ「彼女」との時間を過ごすためだけに、ジョングクを事故に遭わせてしまった。
だめだ...
だめだ、だめだっ!
一体、僕はなんのために、誰のために過去へ来たんだ?
しっかりしろ...!!
*******
12回目のタイムリープでは、運転経路と時間帯を変え、ジョングクとの事故が起きないよう注力した。
結果、ジョングクを事故に遭わせずに済み、予定通りにテヒョンもソアも救い出せた。
安堵を得たと同時に、ヌナに事情の全てを説明すべきだという正論が、僕の胸を押し潰した。
その日の夜、「彼女」から食事に誘われた。
前々から両親について相談がある、と聞かされていた。
楽しくデート、という感じではないかもしれないけど。
僕の「過去」の中で何度もテヒョンたちを救うことを手伝ってくれた「彼女」へ、せめてものお礼にと花束を買った。
スメラルド。
初めて見た花だ。
「彼女」と会えるのは、もしかしたら今夜が最後かも知れないな。
すぅっと花の香りを嗅ぐと、頭がぐっ、と重くなった。
…?
名残惜しく感じる心に、引っかかる誰かの面影...
『ジン!』
彼女の声に視線をやると、眩しい光に視界を塞がれた。
プププーーーーッッッ
ドンッッッ
けたたましいクラクション。
鈍く響いた衝撃音。
彼女が血を流して倒れている。
救急車を呼ぶ必要はない。
あぁ今度は...
彼女を助けるんだ...
*******
スメラルドの香りを嗅いだことで、ジンの過去の彼女の「 」が外れてしまいました...
ジンの中心がヌナから彼女に置き換わってしまったようです