東条side⑨-1.
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君と、君の恋人。
どちらか一方しか守れないとしたら。
彼を研究所へ呼び出した。
瑞上には会おうとすらしないくせに、タイムリープの件で、と切り出すとすぐに顔を出した。
なんなんだ、一体...
『話したんですか、瑞上さんに。過去で出会った彼女とのこと』
『あの...いえ...』
なんだよ、こいつ。
煮え切らねぇな。
『以前、お話ししたことを覚えておられますか?タイムリープを行うことで、被験者本人や周りの人間に故意に利益不利益を被る行為を行わなければ、試験は中止しないと』
はい、と小さな顎を引いて返事した彼は、叱られると分かっている子どものようだ。
『どう考えても不利益、被ってますよね?瑞上さん』
『それはっ...』
反論、あんのか?
『東条さん...僕の頭が...いや心がおかしいと思われるかも知れませんが...話してもいいですか』
心外だが頼られてるんだ、俺。
お前の彼女を。
瑞上を自分のものにしようと思ってるのに。
お前なんかより、俺の方がずっと前から見てきたんだ、瑞上を。
『どうぞ。俺で良ければ聞きますよ』
若者にありがちな言い訳をどの程度積み上げてくるのか、またどれだけ引き出せるか、半ばゲームのような気持ちで構えたが、そこにはタイムリープの闇深い部分が潜んでいた。
つづく→