東条side④-1.
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→花様年華①
俺の光になる得る、君。
韓国で学会に参加した次の春、無事に博士課程を修了した瑞上は、研究所へとやって来た。
「よろしくお願いします!東条先輩」
「んー...まぁその呼び方でもいいけど...」
一応ここでは上司になるわけで。
かと言って、まだ格好のつく肩書きもないのが現実だ。
「じゃあ、どうすれば...」
そんなことで、いちいち真剣に悩むなよ。
「お前の好きに呼べばいいよ」
返事より先に笑顔に花が咲く。
持ち前の明るさや研究熱心な姿に所内の人間からもあっという間に受け入れられた。
いい研究者になるだろう。
いや、なってほしい。
この場所で、ずっと一緒に...
*******
「たっ...退職届っ!?」
おい、どういうことだ。
こっちへ来て、そこそこ年数も経つ。
俺はもちろん、彼女も昇格している。
それなりに高給取りだ。
休みの日にも喜んで研究室に篭ってるようなやつなのに。
何が不満なんだ!?
「結婚するんです」
は?
なっ...なんだ?
お前は俺の育て上げた、稀に見る逸材なんだ。
こんな中途半端なところで研究投げ出して結婚...
いや、結婚が悪いわけじゃない。
相手をこっちへ来させるくらいわけないだろ?
だいたいっ...
「お前、彼氏なんて...」
一体いつ、どこで?
「こっちへ来る前...論文書き終えた頃に」
そんなに長い間...
え?
全く気が付かなかった...
「何度もこっちへ来てもらえるよう話はしていたんですけど...結婚するなら帰国して専業主婦になることが条件で」
なに嬉しそうに言ってんだ。
バカか?
お前みたいな優秀なやつがなんでここを辞める必要がある!
確かに瑞上も、いい歳だ。
結婚だけじゃない。
子ども好きの彼女が、出産や育児を視野に入れていないわけがない。
医学が発達したとはいえ、特に出産は文字通り命懸けで挑む必要がある、が...