東条side-2.


つづき


叔父は韓国の政府機関公認の科学研究所で記憶に関する研究をしているが、秘密裏にタイムリープについても研究しているらしい。

臨床試験の症例はわずかで、まだ分からないことも多いらしいが、その試験に俺を起用したい、ということだった。


故郷である韓国で、母には心身ともに休息し、病気になり得たタイミングやきっかけを思い返してもらい、その情報を元に叔父がタイムリープし、未来である現在を好転させる予定だったらしい。  


しかし、なかなかうまくいかず試験は頓挫。

叔父は短期間で、無理な回数タイムリープし、体調、精神面を考慮して数年単位でタイムリープを行うことはできなくなったらしい。


そこで白羽の矢が立ったのが俺だった。

親父が韓国に移住、と急に言い出したのは、そういうことだったのか。


「それならそうと早く言えば良かったのに」


『お義兄さんの親心だろ?』


命の危険が全くないわけでないこの試験を、俺に担わせることを渋っていたのは父らしく、通りで韓国移住を提案した割に、無理強いしてこないわけだった。



母と叔父はかなり歳の離れた姉弟だ。

幼い頃に両親を亡くした叔父にとって、姉は母であり、父でもあった。

姉である母への思い入れは桁違いだろう。


ちなみに俺と叔父とは10ほどしか年齢が違わなく、少し離れた場所に住む、優しくてかっこいい兄さんという間柄だ。


『とりあえずタイムリープのことは理解したけど、俺が母さんの病気を治すのは無理だろ?だって医者でもないし...


母の今の病気は先天的なものや、難病ではなく、事故で負ったある傷がきっかけで発症してしまった。


『だから、その事故さえ回避できればこんな重い病気にはならないんじゃないかって』


母自身を過去へ送れば早そうな話だが、叔父が選択肢としてタイムリープを得た時には、母の現状を考慮すると事故当時まで遡るタイムリープについては、既に間に合わなかった。


叔父は色んなデータを見せながら説明してくれる。

懸命さや必死さは伝わるが、それを俺が過去でこなせるかは正直分からない。


だいたい、叔父さんでうまくいかなかったことが俺に務まるのか?

叔父さんは一応この道の研究者で、俺は全く関係がないとは言えないが別分野の専門だ。


やるだけ無駄...

喉まで出かかる、投げやりな言葉。



それでも。

半年間、父の話に耳を傾けず、母を蔑ろにしてしまった負い目が重くのしかかっていた。


母を助けなければ。

もしタイムリープを諦めてこのまま悪くなる一方だったら。

俺に、母の名を呼ぶことは二度と許されないだろう。



心を決めて、一度目のタイムリープに挑んで思った。


これは多分...

無理だ..

難しすぎる...