31-1. save Taehyung #1
ねぇジン。
心の中を...覗いてもいいかな?
NOTESの使用許可を得て、11回目の試験が始まった。
東条先輩の判断でNOTESについてはジンに説明しなかったようだ。
まぁ...説明したら絶対使いたくない、って言うよね...
今までの愛想もなく、ジンは助手たちに簡単に挨拶を済ませて、いそいそとベッドへ横たわる。
私の姿...見えてる...?
早く過去へ行きたくて仕方がないような印象だ。
『キム・ソクジンさん、11回目の試験です。焦らず慌てず。安全第一に過去で過ごしてください』
先輩に、ジンは小さく返答し、すぐに目を閉じた。
正常化もあっという間だ。
脳波計を確認し、波が落ち着いている間にNOTESを起動させる。
1回目の試験では現在から過去にいるジンへとメッセージを送信したが、今回は電波を逆流させ、ジンの行動や言動を受信する。
「うまくいくといいけどな」
NOTESの真っ白な画面を見つめながら先輩が呟く。
その数秒後、文字が表れた。
誰かのパソコンでの作業を遠隔操作で見ているような感覚だ。
ジンの過去での状態を確認し、安全を守るのが、私たちの一番の仕事だ。
気にはなるが、NOTESに記される内容は試験後に確認することに決められている。
大丈夫。
大丈夫。
何があっても。
誰が出てきても。
私はジンを絶対失いたくないから...
11回目の試験は無事に終わった。
晴れやかな顔で目覚めたジンが、一番に視線の合った助手に話し始めた。
『友達を救えたと思います...一番厄介で、どうやって解決したらいいか悩んでいたけど...みんなに協力してもらって、なんとか』
あぁ。
その笑顔。
懐かしいなぁ...
もうずっと長い間、見られていない気がする。
それからも、計測機器を外してもらいながら楽しそうに話すジンを見ていると、初めて会った日にカフェでお茶をしたことを思い出した。
私はジンの真正面に座っていたけど、私に突き刺さる痛い視線の発信元の女性たちはこんな風に見ていたんだな。
私も、そのうちの一人でいた方が気が楽だっただろう。
私なんかが、ジンを独り占めする時間が長すぎたのかな。
幸せで温かい思い出があり過ぎる分、今のジンを見守る自分が俯瞰から見て痛々しい。
こんな鈍く重い痛みを感じるのは、ジンのことを自分勝手に愛し過ぎてた代償かもしれない。
→つづく