東条Side 24.


こんな俺を知ったら、君は。


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俺は、自分が思っていたより卑怯だし、欲の塊だった。


彼とのわだかまりが解け、以前の様な関係性を目指し、歩み始めた。

その前向きで、明るくなっていく姿を見ているのが辛い。


何より、おもしろくない。


ようやく。

あいつの手に入れたかった「未来」が現実になったのに。


俺自身、安心できると思ったのに、なぜなんだろう。



完全消灯間際の研究所。


デスクで一人、手元のペンを弄ぶ。

考え事をする時の、くだらない癖だ。




「おっ...」


狂った手元からペンが飛び出し、派手な音を立てて床に転がっていった。


「どこ行った...?」


仄暗い中、小さなペンを探すのに自席のデスクライトでは心許ない。


日常的に過ごす場所で、見慣れたものを、だとしても。


見失えば、先まで見通す光が必要になる。


...


...


「そうか...」


ようやく見つけたペンを拾い上げ、流れるような字体で記された自分の名前を指でなぞる。


あいつが、誰かとそういう仲になっても。

ずっと自分の視界に入っていた。

ずっと自分のそばにいた。


でも。

今回ばかりはそうでなくなるかもしれない。


俺の元から、去っていくんじゃないだろうか。


俺の手の届かないところで、見たこともない顔で暮らすんじゃないだろうか。



そんなの、我慢できるわけがない。


手の中のペンを白衣の胸ポケットに挿し、そっと包み込んだ。



俺は、自分の本当の望みに気付いてしまった。



あいつを。

瑞上を独り占めしたい。



燃え続ける青い冷静は、一瞬にして燃え上がる赤い情熱より。


温度が高い。