老衰で死ぬのではなく、人は殺される。
昔は騙されて知らないうちに殺されたが、今は騙されていることを承知で殺される。嘘っぱちだとわかっていても、ずらかりようがない。
食べることも、眠ることも、何から何まで危険を承知でやらなきゃならぬ。
標高188.66メーターの加治丘陵を登り下りするのは拷問に等しい。
慣れない内は辛かったが、慣れてくるとうまくはぐらかす。必死こいて杖をつき、7.7キロメーターの日々をこなして、ようやく3年目を迎えた。
色んな事がある。
死ねばそれっきり、書き散らしたメモ帳も知りあいたちの想い出も消え去る。
後は闇か。
カーンと澄み渡る虚空か。
願わくば、灰色のボーっと、した無色透明が好ましい……。