階段の上の切手屋さん | uguisuのブログ

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予定があって
立ち寄った街で
切手と出会いました
 
正確に言うと
切手屋さんと出会いました
 
数日たってるのに忘れられなくて。
忘れるどころか日に日に鮮明になって。
なので、
ちょっと聞いてください。
 
ある日予定を済ませて
急いで帰ろうと
近道を探して路地裏へ。
 
通りすぎようとした細い外階段に
「切手、コイン、古本」
という文字を発見。
 
フラりと入るような雰囲気はなくて
切手を買うためだけに上る細~い階段。
 
しかも3階。
 
「上るだけ…」と思って3階まで。
予想通り
中が覗けない鉄の扉がひとつ。
 
一瞬、扉の前でたたずんで
やっぱり帰ろうと振り返った瞬間に
 
上の階段から
男の人が降りてきまして。
 
エプロンしていて
明らかに風情がお店の人。
 
こちらの様子をちょっと伺う風に
私を見たので
 
「入ってもいいですか?」
鉄の扉を指差して
つい言ってしまった。
切手屋さんにありがちな
無表情とは縁遠い
 
でも親しみやすくもない
ひじょ~にニュートラルな口調で
「どうぞどうぞ」
(半分よくきたねみたいな雰囲気も漂わせ笑)
 
重い鉄の扉をギィーッと開けて
中に入った瞬間に
それまで机の上で
何かしていたらしい数人の人が
 
一斉にこちらを凝視。
 
壁も机の上も山のような切手ファイル
 
無意識にいつもの習慣で
数秒の間に
「自分が見ても良さそうな棚」を探す
…のですが見当たらない。
 
また思わず
「あ、こんな感じのお店なんですね。
収集家の方用の…
すみません、目的なく来たもので…」
と謝ってしまった笑。
 
さっきのエプロンの人以外は
それに何の反応もなく
また机に目を落とす
 
この人たち
お店の人?
お客さん???
 
するとエプロンの人が
「目的のない人はとりあえずその棚がおすすめかな!」
…と私の背中にある壁を指差すのです
 
振り返ってみたら
会社の書類入れみたいな浅い引き出しが
天井までいっぱい。
 
「鳥」「電車」「きのこ」
「ロシア」「フランス」
引き出しの一つ一つにシールが。
 
なんだかよくわかんないけど
とりあえず引き出しを開けて
切手を見るふり。
 
自分の居場所を確保しつつ
背中に広がる見えない空間の
様子を伺ってみます。
 
ここはしばらくいてもいいか
早々に退散した方がいいか???
目に入ってくる切手は
使用済みの
何ともいえない可愛い風情。
 
だんだん落ち着いてきて
そうだ。
今準備してるmanoの染め花標本箱に
使おう!
 
「あの~お花の引き出しありますか?」
「花の切手が一番多くてね~。どこの国にもあるからないんだよね~」
 
なるほど…。
 
そんな会話を何回かする間も
机で何やらやってる人たちは
手を止めて私を見る
…けど、何も喋らない…
 
う~ん、緊張!
 
だけど、
花の切手探しという
目的がハッキリしたら
俄然やる気が出てきて
数十枚の花の切手を探し出しました。
 
「これください」
「おぉ、ほんとに花だらけだね笑」
なんて言われながら、
 
黙って作業している人たちの手元を
その時初めて覗いてみると
 
まったく同じ切手が
何十枚と山になってて
ただひたすら
めくって見てる…。
 
「何やってるんですか?」
って聞かずにはいられません。
「何を探してるんですか?」
 
答えを待たずに
エプロンの人が横から入ってきて
「あ、この人たち変態だから
話しかけないで。」
って。
 
 
その間、お店に入ってから1時間弱。
 
ようやくようやく?
笑いが起きたのです。
 
あまりに唐突なジョーク。
「変態さんたち」も
言われるままに薄笑い。
 
いやー、この人たち、
サイコーに面白い人たちなんじゃないの??
 
「常連さんたちなんですか?」
本人たち答えず
またエプロンの人が
「おかしいでしょ?しょっちゅう来て
一日中こんなことしてるんだよ。変でしょ?」
 
おかしくって
楽しくって
でも私が聞いたことはひとつも答えをもらえなくって
教えてもらったのは
「変態さん」ってことだけ。
 
思わず
「マツコの世界に出れそうですね」
って言ったら
「きもーいとか言われそうだよね」
なんて返ってくる。
 
すごくこの空間が好きになって
ずっといたくなって
でもこれ以上長居する理由がなくて
 
「おかしい人は夕方5時過ぎるとビール片手にやって来るんだよ。変でしょ?」
 
って言うので
 
「今度私もビールもってここに来ていいですか?」
って聞いちゃいました。
 
一瞬ギョッとして
「別にいいけど。」
「こんなところでよかったら」
帰り際に
「しかし、よく入ってきたね。勇気あるよ。」
 
誉められました。たぶん。
 
 
そんなわけで
面白エピソード付きの切手、
コラボキットに入れますね。
 
切手のおはなしでした。