体重が一カ月で3キロ減った。

 かかりつけ医に相談したら、徹底的に原因を究明しましょう、と言われ、隅から隅までの検査をした。そうしたら、大腸の入り口付近に癌が見つかった。CTで精密検査したら、肝臓への転移も見られるという。病名は大腸がんでステージ4、このまま放置すれば余命3年、治療すれば5年生存率20%だそうである。この頃はがん告知もそれほど深刻でなく、CTの画像を見せながら淡々と説明してくれた。

この頃は癌は不治の病ではないらしい。

 単なる病気で、治療回復は可能らしい。昔みたいに悲壮感は全くない。先ほどの余命も5年生存率も昔の統計結果であって。医療技術が発達してずいぶんと良くなっているそうである。最新の統計結果はまだ出ていないし、治療効果は日々更新されている。そういう意味では安心でもある。医療技術に期待するしかない。誰でもみんな余命と生存確率は持っている。気付かないだけであり、宣告されないだけである。明日死ぬ確率でさえもゼロパーセントではない。その生存確率が少し減っただけだと理解している。

癌は切除せずに抗癌剤で治療することになった。

 最近の抗癌剤は副作用も緩和され、昔のように髪の毛が抜けたり、全身の痛みでのたうち回ったりすることはない。普段の生活をしながら治療が可能である。3週間ごとの通院点滴と毎日の服薬でそのまま日常生活を続けている。抗癌剤は癌を攻撃しやっつけるのではなく、癌の侵攻を押さえるものである。癌細胞も自分の細胞であり、その細胞の成長を阻害すれば、当然その他の正常な細胞にも影響を及ぼし、抗癌剤の副作用はゼロではない。

一回目の抗癌剤点滴で早速副作用が現われた。

 ひどい便秘である。便意はあるが排便できない。3日ぐらい生みの苦しみを味わったが、便秘の薬を処方してもらって何とかなった。山羊の糞見たいのがドバっと出てそれからは通常便になった、消化器内は軽い炎症を起こしているみたいで、肛門付近が排便のたびにヒリヒリと痛いが、これも徐々に治った。あとは、手足のしびれと味覚神経の異常である。私の場合は味覚神経が敏感になり過ぎて、最初の一口でこめかみの下に衝撃が走る。慣れると脳がブロックしてくれるのか正常に戻るが、食事の前には必ず生起していた。

食欲は落ちてなくて、吐き気もない。

 ただ、筋肉が日に日に落ちていって、体重が毎日のように減っていった。そして、身体のあちこちの筋肉に力が入らなくて、やる気が出なくて倦怠感がずっと続く。この頃はずっと横になって休んでいたが、このままではだめだと、近くのスポーツクラブに通って、スイミングとジムのストレッチを始めた。水泳は全身運動だが、筋力がなくても水中にいれば楽に体を動かすことが出来る。今の自分には最も適した運動だと思う。

ウォーキングも試したが、

 副作用で足の裏に水泡ができて一時期歩けないほどで、やめてしまった。負担がかかると血管が弱くなっているので損傷を受けて内出血を起こすようである。手先と足先はどす黒く変色して、しびれて感覚が鈍くなっている。ビリビリとしびれが酷い時は物を掴めないし、歩くこともできない(まぁ、我慢すれば物理的には可能だが…)。私は趣味でギターの弾き語りをやっているが、指がひどい時は演奏は不可能である。困ったものではあるが徐々に慣れてきてしびれは取れてきている。

3週間の点滴の時に吐き気止めを処方される。

 時間を決めて服用するよう言われるが、私は吐き気は全くないので、医師にその旨伝えるが、予防のために飲むように勧められる。ところが、この薬、私には合わないのか、喉がやられて声が出なくなる。申し訳ないが、この薬はパスしているが、今のところ何の問題もない。吐き気の症状が出てどうしようもない時には考えるが、今のところ服用する気はない。今までは常用する薬は全くなかったが、抗癌剤のためにたくさんの薬を合わせて飲まなければならなくなった。胃腸の薬、血圧の薬、便秘の薬、炎症止め、しびれ止め、整腸剤、そして抗癌剤である。

点滴も3回目を過ぎて身体も慣れてきた。

 一時は7キロも減った体重が5キロまで戻し、徐々に体重も増えている。顔つきもゾンビか修行僧みたいだったが、この頃はややふっくらとしてきた。癌細胞を抑制するために生命活動も抑制されているのである。端的には体細胞特に筋肉が減り、赤血球・白血球が減り、身体が衰弱している。しょうがないことである。しかしながら、癌細胞をやっつけるのは最終的には人間の免疫力なのである。これを忘れてはならない。癌の病名にめげないで体力はつけなければならないのである。

服薬の抗癌剤は2週間服用し1週間は休む。

 この間に体力を回復するように計画されているようである。次は4回目の点滴治療であるが、主治医の判断により今回はパスである。癌が進行してなく治療結果が良好なので、体力回復のための一時休止である。治療は3週間×4でワンセットであるが、3週間伸びることになる。ワンセットの治療が終了した後の結果が楽しみである。癌とは一生付き合うのだろうが、自分の力で癌細胞をやっつけて健康調和が図れるようにしたいものである。癌は人間の宿命であり、癌のおかげで人間は進化し、生命を維持している。ただ、悪い癌は退治しなければならない。人間世界も同じような気がする。