自分の体と心を、この固い鎧で覆い隠すようになったのは、
いつからだったのか。そして、
隠さなくてはならない出来事とは
いったいなんだったのか。

(そもそも、そんな出来事はあったのか??)

男は視線を下に落としたまま
答えのでない自問自答を繰り返していた。

今日も昨日も。そして一昨日も。





(ん?  )

男は頭上で何かの気配を感じた。

(鳥か )

先日、男の頭の上に、
小さな鳥が巣を作ったのだ。
男にとってこのことは(覚えている限り)初めての経験で、彼の頭の中は『困惑』という単語でいっぱいになっていた。

(だからこんなくだらないことを考えてしまうんだ)

男はため息をついた。





頭上からヒナの声がする。
母鳥を呼んでいるのだろう。
やがて、それに応えるように羽音が聞こえてくる。

ここ最近の決まりごとだ。

(泣けば母鳥が来てくれる。
いったいこいつらは、誰にそのことを教わったんだろう)

男は、ふと思った。

(俺もあんな風に泣いたら、
誰か来てくれるんだろうか。。)

「そんなこと、あるはずがない」

そう呟いたその時だった




「ボクはいつもここにいるよ」

(だ、誰だ?)

男はあたりを見回した。

「ここだよ!ここ」




それは緑色の小さな葉っぱだった。

「ボクはね、生まれた時からずーーっと
おじさんと一緒にいたんだよ。
おじさんは気がつかなかったみたいだけど」

小さな緑の葉っぱは、細い腕をうんと伸ばして、
男の小指の先っぽに、しっかりとしがみついていた。

「おじさんが気がついて、ボク、とっても嬉しいんだ!」

「ど、どうして?」




小さな葉っぱは、キラキラの笑顔で言った。

「だって今日からもう、おじさんはひとりぼっちじゃないジャン」