NPUとは

NPU(Neural network Processing Unit:ニューラルネットワーク処理装置)とは、「ニューラルネットワーク」の処理に特化したプロセッサのことです。

ニューラルネットワークとは、人間の脳における情報伝達の仕組みを模倣し、AIに適用したモデルを指します。

NPUは、「深層学習(ディープラーニング)」で注目を集めています。深層学習とは、ニューラルネットワークを用いることでAIに高度な学習を行わせる手法のことです。深層学習ではコンピューターで膨大な処理を行う必要があり、高性能なプロセッサが求められます。

その点、ニューラルネットワークに特化したNPUであれば、深層学習において高速かつ効率的なデータ処理が可能です。NPUは、AI分野の主流技術となっている深層学習をさらに加速させる存在として注目されています。

 

 

期待されるNPUの利用シーン

NPUの利用が期待されるシーンは、主に次の2つです。

  • AIシステムの開発や運用における効率化
  • AIを搭載したデバイスの開発

NPUはAIにデータを与えて学習させたり、未知のタスクを処理させたりする際に、高いパフォーマンスが期待できます。そのため、AIシステムの開発や運用における効率化につながるでしょう。

また、NPUはモバイル端末といったデバイスでのAI処理にも適しています。簡単なAI処理であれば、サーバーとやり取りせずにデバイス側で行うことも可能です。そのため、AIを搭載したデバイスの開発にもNPUの利用が期待されています。

 

NPUとCPU・GPUの違い

 

CPUとの違い

プロセッサには、NPU以外にも「CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)」があります。CPUとは、コンピューターの計算や制御に特化したプロセッサのことです。プログラムの実行、メモリ(データ領域)や周辺機器(マウスなど)の制御を行います。

CPUには、コンピューター制御の幅広いタスクをカバーできる汎用性があります。コンピューターには、基本的に1つ以上のCPUが必要です。

一方でNPUはニューラルネットワークに特化しており、どのコンピューターにも搭載されているわけではありません。その分、CPUと比べてニューラルネットワーク処理で高いパフォーマンスを発揮します。

なお、NPUはCPUと併用することが一般的です。コンピューターの汎用的なタスクはCPU、ニューラルネットワーク処理はNPU、のように役割分担させます。

 

GPUとの違い

NPUやCPUと同じくプロセッサである「GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)」との違いも把握しておきましょう。GPUとは、画像処理に特化したプロセッサのことです。

画像を鮮明なグラフィックで表示するためには、コンピューター上の膨大な計算が要求されます。こうした画像処理を高度化するためにGPUが生み出されました。GPUには大量のコア(計算ユニット)が搭載されており、並列処理によって高度な画像処理が可能です。

GPUは多くのパソコンやスマートフォンに搭載されており、画像処理を担います。また、高い並列処理能力を持つため、サーバー側でのAI学習にも適しており、AI開発の分野で広く利用されています。ただし、高度な並列処理を行うため発熱しやすく、冷却に多くの電力を要する欠点があります。そのため、ハードウェアの制約が大きいモバイル端末などには不向きです。

一方、NPUはニューラルネットワーク処理に特化している分、GPUと比べて電力効率がよく、発熱も抑えられる点が優れています。そのため、NPUはハードウェアの制約が大きいエッジデバイスでのAI処理において、高いパフォーマンスが期待できます。AI分野に活用する場合、GPUとNPUでは活躍できる領域が異なることを知っておきましょう。

 

NPUを搭載したエッジデバイスを使うメリット

NPUは、ニューラルネットワークの計算を高速で行えるよう最適化されています。そのため、ニューラルネットワーク処理においては、CPUやGPUと比べて高い速度性能を発揮するでしょう。

ニューラルネットワークに限らずAI処理には、AIに学習経験を積ませる「トレーニング」、学習したAIに未知の課題を与える「推論」の2フェーズがあります。このうち、推論は基本的に運用段階であり、ユーザーがAIの速度性能を体感できるフェーズです。

つまり、NPUはAIシステムの推論を高速化し、ユーザーにリアルタイムな機能を提供したい場合に能力を発揮します。

 

消費電力を抑えられる

NPUはニューラルネットワーク処理に特化しているため、CPUやGPUと比べて消費電力を抑えられる点が強みです。CPUとGPUではAI以外の用途でも多くの計算が必要となりますが、NPUではこうした計算をカットでき、余計な電力を使わずに済みます。

ある調査では、AI処理におけるNPUの消費電力量がCPUの半分程度という結果が出ています。NPUのメーカーや機種などにもよりますが、AI分野においては消費電力を抑えやすいでしょう。

 

 

NPUを搭載したデバイスを使うデメリット

NPUは万能というわけではなく、当然ながらデメリットもあります。NPUを搭載したデバイスを利用するデメリットは、主に次の2つです。
 

価格が高い

NPUは高度な半導体製造技術で製造されるため、GPUなどよりも高価格な傾向があります。そのため、NPU搭載のPCを導入する際には、コストがかかるのがデメリットです。

NPUはまだ新しい技術で普及段階にありますが、技術の進展とともに価格が下がり、より手頃な価格で購入できるようになるでしょう。

 

汎用性が低い

NPUはニューラルネットワーク処理に特化しています。とくにAIの推論では高いパフォーマンスが期待できますが、それ以外の用途に最適化されているわけではありません。

そのため、汎用的なタスクにも使えるCPUなどと比べて汎用性は劣ります。AI分野に活用するのは有力な選択肢ですが、それ以外の用途では本来の能力を発揮できないケースが少なくありません。

 

NPUを活用できる「AI PC」とは

NPUを導入したい場合、「AI PC」を購入するのが一般的な方法といえます。AI PCとは、CPUやGPUに加えてNPUも内蔵し、高度なAI処理を可能にするパソコンのことです。

一般的なAIシステムでは、高スペックなサーバーにリクエストを送り、サーバー側でAI処理を行います。しかし、AI PCなら簡単なAI処理であれば、サーバーを介さずにローカルで実行することが可能です。AIのトレーニングや推論を効率的かつ安全に行えるため、AIの開発や運用に携わる方にとって有用といえるでしょう。

 

 

まとめ

NPUとは、ニューラルネットワークの処理に特化したプロセッサのことです。深層学習やAIの推論を得意とし、速度性能や消費電力の面で高いパフォーマンスが期待できます。

ただし、NPU搭載PCには高価なものが多いため、用途や価格、機種・メーカーをチェックして選びましょう。NPUを活用したい方は、NPUを搭載したAI PCをチェックしてみてください。

NPUはAI分野を中心に、これから普及していくことが期待されます。NPUについて理解を深めておきましょう。