8月2日から行われている、2013ワールドグランプリ女子バレーボール大会。

28日(水)から札幌で日本+上位5ヵ国によるファイナルラウンドが行われており、いよいよ大会も大詰め。

日本は決勝ラウンド、3戦して1勝2敗と苦しい戦いを強いられている。

しかし、残念ながらこの結果は

「必然」

なのである。

なぜ、必然か。
それは全日本女子チームが去年のロンドン五輪以前から抱えている「誤った常識」がチームに染み着いてしまっている為である。

その「誤った常識」とは何か、それは

「高さでは勝てない」

という思い込みである。

よく日本はヨーロッパや北中米、南米のチームと対戦するときに言われるのは
「高さで劣る」
という事。
確かに高さでは劣る。
但し、それは「身長」での話だ。
空中戦で相手のブロックに対して、もし最高到達点でスパイクを打つことができれば、日本の選手でも「高さ負け」はしないのである。

全日本女子の真鍋政義監督は、2011年以降
「ブラジル男子のような高速バレーを目指す」
と公言し、その目標に向かって進んでいる。
なぜそのような考え方に至ったかと言うと、結論は簡単。
「高さで劣る」
という先入観からだ。

しかし真鍋監督が目指す方向性には最大の欠陥がある。それは


「最高到達点で思いきりスパイクが打てない」



という事。
トスの速さ「だけ」を求めてしまうと何が起こるかというと、トスの高さが犠牲になる。要するにトスが低くなってしまう。アタッカーは速いトスに追い付かなければという思いから、助走が十分に取れなくなり、高く跳べない、その場跳びに近い跳び方になってしまう。
十分な高さでスパイクが打てないという事は当然思い切ったスパイクが打てない(江畑幸子や新鍋理沙のように腕を止めるスパイクが多発してしまう)し、そうなると相手ブロックの餌食になる可能性が高くなってしまうのだ。
要するに相手のブロックを外す為、高さ勝負を避ける為の策が実は相手ブロッカーにとっては格好のブロックチャンスになってしまっているのである。
よく「日本のミドルブロッカーは機能しない」と言われるけどその原因も結局はトスの低さなのである。

実は2011年のワールドカップでブラジル、ドイツ、アメリカといった強豪国を撃破した要因及び、昨年のロンドン五輪で銅メダルを獲得した要因は


「高さ勝負で勝ったこと」


なのだ。
おそらく当時現役だったセッター竹下佳江さんのコート内での判断で木村沙織、江畑、そして迫田さおりらアタッカーの「最大値」を引き出す為に、サイドアタッカーへのトスを高めにしたのだろう。
それが結果的に「身長の高い相手」を打ち破る形になったのだ。
真鍋監督はまだそれに気付いてない。
なぜなら今回セッターとしてメンバーに入っている宮下遥や橋本直子にもトススピードの向上を求めているからだ。
それは予選ラウンドを通して見た段階で分かった。
決勝ラウンドでは木村らの要求もあったのか、高めにトスを上げようとしているが、劣勢になった途端にブロックを外そうとトススピードが速くなり、トスが低くなるという悪癖が出てしまう。
結局こういった悪癖を完全に消し去るにはまず
「高さで劣る」
というのが先入観である事に気付かなければならないのである。

そして何より見失ってはいけないのは



「アタッカーの最大値を引き出す」


という考え方。
世界最速バレーと言われているブラジル男子代表のレゼンデ監督でさえ


「まず優先すべき事はアタッカーが打ちやすいトスを上げる事」


という考えを持っているのだ
(ブラジルが速いバレーを実現させているのは「ファーストテンポ」の文化があるから。要するにアタッカーの助走動作のタイミングがセットアップより前に行われている為。もっと簡単に言えばアタッカーが主導権を握り、セッターがアタッカーに合わせたトスを上げる文化である為。日本はセッターのトスにアタッカーが合わせるセッター主導の文化の為どう頑張ってもファーストテンポにはならない)。
誤った常識から選手の身の丈に合わない事まで要求してしまうと、選手が伸び伸びプレー出来ない、要するに「最大値」を引き出せない。
監督含め指導する人間がやるべき事は、選手を縛り付けない事。選手の「最大値」を引き出す為のヒントを与えてあげる、あるいは選手の長所を「認識」させる事ではないだろうか?

監督は王様ではない。
偉いのはあくまでプレーする選手(当然全てのプレーの責任は選手にある)。
その本質を見失っている限り、日本バレーの成長はない。
その本質に早く気付かないと、シドニー五輪世界最終予選の悪夢が3年後に訪れる。