115.本命はイラクだ

手始にアメリカはアフガニスタンのタリバンを征伐したが、本命はイラクであり、アメリカの妄想は、

アルカイダ→イラク→イラクの核→イスラムの核という恐ろしい妄想である。

そして、アメリカのキリスト教原理主義者たち(ブッシュもそのうちの一人だ)はその恐怖と優越の想念とを、イラク攻撃によって表現し、それによってイスラム原理主義者たちの憎悪をかき立てることにより、彼等の妄想を現実化させてしまったのである。

 

(注)1.~イラクの大量破壊兵器に関する煽動的な、世論誘導記事の一例。

イラク軍拡着々-射程1,500キロミサイル-3年内に可能-米国防総省-核兵器開発「物質」入手なら数カ月

[ワシントン14日=土井達士]「米国防総省高官は十三日、イラクが中距離弾道ミサイルの開発・製造を着実に進めており、2,005年には国産の射程約1,500キロのミサイル配備が可能になるとの見通しを明らかにした。イラクの大量破壊兵器やミサイル開発については、ブッシュ米政権が、サダム・フセイン政権打倒が必要な最大の理由として挙げている。

・・・パウエル国務長官は先に「イラクは既に百五十キロ以上の射程を持つミサイルの発射実験を行っている」と指摘した・・・国防総省高官は又、・・・イラクの核兵器保有の可能性について、「核分裂物質を入手できるかが問題で、(入手できれば)数ヶ月で核兵器が完成する」と警告。・・・」(産経新聞~2,002.9.15)

しかし、イラク戦争が終わった今ではイラクにミサイル開発の兆候が存在しないことが大体の見通しとなってしまっている。

アメリカはこのほかにも色々な情報操作を行いつつある。

特定人への憎しみを人達の中に刷り込むために、著名なジャーナリストに、虚実織り交ぜた情報を巧みに与え、それを書くように誘導する。

攻撃に対する敵の反応をあらかじめ察知しようと謀り、そのために未だしていない攻撃を、もう始めたと発表し、敵の反応や能力を試す。

(イラク攻撃が終った後で)イラクは立派に自助努力を開始し、民主化の道を歩みつつあるなどと広告代理店を使って宣伝する。・・・など。

(注)2~バクダットが陥落し、サダム・フセイン大統領が処刑され、結局出てきたものは何もなかった。核兵器も化学兵器も見当たらず、対米テロリスト組織との結合も証拠立てられなくなって、あとは石油支配、イスラエルの対イラク戦争要求、イラクの民主化(!)などという散文的な動機だけが残存して、アメリカが自分達自身の手で自分達をも情報操作してまで行ったイラク戦争に対するアメリカ国民の関心は2次的なものになり、もっと本質的なアメリカの原戦争、即ち、アメリカの国土防衛戦争であるとともに、イスラム教対キリスト教という宗教原理主義者間戦争であるアフガニスタンにおける対タリバン戦争のほうにアメリカは回帰した。

 

アメリカは戦時体制になった。アメリカの言論の自由が「人畜無害な言論の自由」に変質してしまった。テロリストに加担していると邪推されるような言論、テロリストが何故にアメリカを憎悪しているのであるかという疑問に対する追求を口に出すこと等は危険な行為になってしまった。

アメリカの反テロリズム法は共産主義的な抑圧がアメリカに出現したかとさえ思わせる中身をもっている。

この法律は次のような権利を合衆国政府に保証する。

市民権のない人達(2,000万人)に対する無期限の拘留権~これに関連して大統領が次のように宣言する。「テロリストの容疑者とみなした非市民に対して秘密軍事裁判にかけることができる。この裁判において死刑宣告も可能である」

政府職員による国民の家屋に対する無断立ち入り、無断調査権

国民の電話、インターネット、電子メール、クレジットカードに対する政府のアクセス権

連邦捜査員による公共図書館の利用記録押収権(誰がどんな本を読んだかを調べる)

CIAによるアメリカ国民監視権

司法長官によるテロ組織指定単独裁量権

捜査令状発行条件緩和(=「相当の根拠」から「犯罪捜査に関連していること」へ)

アメリカの国民はこれを受け入れた。アメリカのジャーリストたちは沈黙した。アメリカの議会は上院、下院とも圧倒的な多数による賛成でこの法律を可決した。アメリカの白人は何十年と続くかもしれないテロとの戦いを引き受けようとしてこのような自由の制限を受け入れる気持ちになった。勿論、多くの制限は移民やマィノリテイたちが主として受け止めることになるであろう。(参考~「だからアメリカは嫌われる」~Mark Hertsgaad~忠平美幸訳~2,002.11.6~草思社)

陰険なテロによってアメリカの受けた「恐怖と衝撃」の物凄さがこのような国家権力による処置を容認させるに到ったのであるが、これがキューバのグアンタナモやイラクのアブグレイブ収容所でのイスラム教徒に対する拷問や虐待に繋がっている。