82.アメリカの世界支配のための主要標的-3
❖情報支配-情報は「他国の情報を掴む」「自国の情報を隠す」「自国や他国に関する情報をでっち上げて流し、信じさせる」-この三つの力によって成り立つ。エシュロン*-(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージランドというアングロ-サクソン同盟による世界規模の盗聴機関)-に見られるように情報優位はアメリカが持つ世界戦略の要の一つであるが、勿論、これは商品として直接に金になることはない。そして逆にとても金が掛かる。
❖このようにアメリカはドルの持ち出しによる世界の秩序支配を商売にして、その巨大な消費を維持し、併せ、その消費力によって世界経済の景気を牽引するという役割を果たしている。
必然アメリカの経常収支とアメリカの財政は赤字基調にあり続けざるを得ないという宿命を持つが、アメリカの世界秩序維持者という立場に対する信任がドルへの信任となり、巨額のドルがアメリカへの投資としてアメリカに還流している。
アメリカの優位性は絶えず脅かされようとしており、そしてアメリカの諸優位性が崩れればアメリカは衰弱するであろう。
アメリカの世界管理機能は直接的には金にならない。したがって、アメリカの経常収支と財政収支は常に赤字への圧力に曝されていて、これが一定の限度を越えて進行し、ドル信任力が低下すればアメリカは衰弱するであろう。
アメリカの巨大消費力による世界経済牽引機能は、もしかするとインドや中国のような巨大人口国の経済発展によって取って代わられる可能性がある。
だがインドや中国が、アメリカが見せているような(曲りなりにもにせよ)世界秩序に関する理念や気組みを持つということは不可能である。消費力だけが問題の全てではないのだ。
➡アメリカが戦争と金融操作によって国家の生業としていることにより、アメリカは没落する必然性を内包する。その理由は次のようなものである。
❖まず金融操作は世界の経済を混乱させるだけであり、「世界の富のいわれなき移動」(=泥棒行為)によって経済合理性を破壊するが、逆に金融操作には経済に対する貢献が何もない。だからアメリカがいつまでもこのようなことを続けていられる訳ではない。
❖戦争の輸出は多くの国々が反対し始めている。
アメリカの戦争に伴う集金に対しては、次第に応じたがらない国々が増加するであろう。
*-アメリカが自らイラクに武器を供与しイラクによるクウエ-ト侵略をそそのかして起こさせた第一次湾岸戦争により五兆円という戦費を費消し、もってアメリカの軍産複合体に慈雨を与えたが、その際に日本を始めとする同盟国に対して中東原油の受益者負担金として、総戦費の50%以上に相当する2兆6千億円を回収して濡れ手に粟のダブル収穫を達成した。
*-アメリカの第二次対イラク戦に掛かる費用は
⋆戦費- (最低で)400億ドル
⋆軍の駐留費-
(300ドル/年)×(2~3年)=700~1,000億ドル
で合計にして7.7兆円~11兆円とされている。(アメリカの議会予算局)アメリカはその内の8割を同盟国に負担してもらおうと目論んでいる。
❖アメリカによる戦争は憎米者達を生産し続け、この中の非常に多くの者達が対米テロを願望し始めるに違いない。
❖アメリカの経済政策としての戦争がアメリカの景気を上昇させ得るか否かは、アメリカの戦争的財政出動がアメリカの有効需要をどれだけ、いつまで喚起させ得るかにかかっている。有効需要は景気上昇の発火点になり得るような国内総需要の増加をいい、究極的には最終消費者の消費需要の増加によって示される。それ故に、戦争支出に伴う有効需要とはアメリカ政府による戦争公共支出→軍事産業とその周辺産業、それに兵隊の収入などの増加→この家計収入への分配→それがどれくらいの割で消費需要となって消費市場に湧き出るか・・・に掛かっている。その他に、上に述べたような戦争支出の経済効果を見込んで人々が消費支出や株式投資を先取り的に前倒しするような心理効果というものも存在し得るであろう。
仮に戦争で消費が煽られたとしても、それが発火点になって新しい成長の爆発が継続的に起動しえるものか否か-それは爆発するべき何かが既に経済そのものの中に(戦争支出とは別に)準備されていなければならない。その何かとは、いわずと知れた新しい消費フロンティア(地平線)の拡大である。消費フロンティア拡大の状態は二通りある。一つは新しい発明(昔の自動車とかTVとかがそうであった)の普及であり、これは勿論、それに対する購買力の裏づけが付けを伴うものでなければならない。
もう一つはまだ消費欲求が満たされていない非常に多くの人々が、消費の予備軍として存在して、この人達に何らかの方法でGDP(国内総生産)の分配が行き渡ること、そしてこの人々が分配金を貯蓄しないで消費することである。しかしアメリカがもう戦争の中に救いを求めるようなとき、そのような経済状況~消費フロンティアの拡大する可能性という状況が背後に果たして有るのだろうか.
なるほど一つの戦争投資によって一過性の消費を煽り立てることが出来て、運良くその消費がある程度は効果を継続するかもしれない。しかし煽りはあくまで煽りでしかない。もし、アメリカが世界の帝王として戦争経済に身を委ね、次々と悪者を見つけ出して、又は悪者を作り出して戦争を行ない続ければ世界は破滅するであろう。
❖国家戦力が商売道具のようになれば、その神聖性は失われ、兵士の精神は崩れ資質は低下する.
❖管理職だけの会社が潰れるように、国も、国全体が管理者になれば基本である労働が痩せ細るから国は衰弱する.
アメリカの支配的権力の行使による世界秩序保持という仕事は、アメリカの巨大な消費に見合うだけの収入をアメリカに齎さない。アメリカの経常収支と国家財政赤字とが一定の限界を超えればアメリカのドルへの信任は世界から消滅する。
❖アメリカが国家的に管理業務に偏向したということは、アメリカの社会構造もまた管理者社会的構造(即ち、上位支配者階層と下層貧困労働者階層への二分化と、中産階級の没落・減少構造)へと偏向したということになる訳である。何となれば、実体経済における実体生産力は中~中下流階級が担うのであるが、アメリカが実体経済における実体生産力を他国に担わせれば、アメリカ自身の内部における中~中下流階級が痩せ細るからである。
だが、・・・
「近代の世界史を通じて、国家の政治的な安定と社会的な平和を保ってきたのは、安定した中産階級および、自分達も向上すればその仲間入りを果たせるという下層階級の信念である」(「だからアメリカは嫌われる」)
したがって、このままアメリカが二分化階級社会へと、共産社会のように階級分裂の道を歩み続けるならば、その行く末は嘗てのソ連の末路のようなものになるであろう。
しかしアメリカは、このような社会構造をより自由で平等な構造に復元させるような政策(富裕層に対する増税と貧困階級に対する減税、福祉政策の推進、トラスト制限の強化、などの諸政策)を推進することが出来ない。何故ならば、アメリカが執行する管理業務は本来、直接的に富を生産することができない性質のものであるから、このような諸政策を行なう為の財源がないのである。
仮に大企業に対して増税政策を採るものとしても、大企業(食料会社、エネルギー産業、軍需・航空・宇宙産業、情報やエレクトロニクス産業に関わる大企業)はアメリカの世界管理者としての業務の支え手であるから、アメリカがその本来とする世界管理者としての立場を放棄しない限り、大企業の力を弱くするような増税政策や反トラスト政策を採り難いのである。
➡アメリカについて確実にいえることはアメリカが最強者であり続けようとすることである。他国がそのことを受け入れてアメリカを殊更に凌ごうとしない限り、アメリカは確かに我儘な存在であるが、世界のもろもろの自由に対して寛容であり続ける。
少なくともそうであるように振舞い続ける。
アメリカは、アメリカを超えようと試みるライバルの存在を容赦せず、その萌芽、その兆候をもすかさず抑圧し叩こうとするであろう。しかし反面においてほとんど意識せずにアメリカは自己の存在理由を確認しようとするが故に、自己確認の方法としてとライバルの台頭出現を望んでおり、それを創り出そうとさえするであろう。
アメリカは自分自身がその原因と成って創り出した所の世界中に蔓延する対米憎悪―その増殖、その浸透に怯えている。実際、核拡散に対して非常に神経質であるのは独りアメリカが突出している。
ロシアや中国、そして事によるとフランスさえも、本心何処吹く風で、彼らは核の買い手がついて儲かりそうであれば平気で売付けようとするであろう。
国家暴力が自由と並んでアメリカの存在の根拠である。故にアメリカの行動の多くを、アメリカの軍事産業が儲けるためであるという動機付けに帰着させる事は間違っている。アメリカが言うのは「ここは私達の分野だ。私達の存在理由がここにある。―それは自由と国家暴力(と正義と人権)だ。」ということである。アメリカはそういっているに違いない。
故に、緊張と紛争―これをアメリカは決して手放そうとはしない。
アメリカの大統領は国民を統御する前にアメリカ国民によって選出されなければならないのであるが、アメリカの国民は統御されるよりも、刺激を受け、鼓舞されることをより好む。アメリカの経済はその巨大な消費力によって世界経済の牽引力であるが、彼らが行う反対給付は主として国家間暴力による世界の秩序保持にある。アメリカがするこのような強力であるが故に反って弱点に満ちた世界戦略が永久に栄え続けることは出来ない。しかしアメリカは歴史上課せられた自らの役割を今果たそうとしている。仮にアメリカが忽然として地上から姿を消してしまったとして、その後に描き出される世界のイメージはまことに恐ろしいものになるであろう。
中東のアラブ諸国は競って核武装に走り出すが、これを押さえうる意欲と力をもつ国はアメリカを措いて他にはもう無い。そうなれば中東の地はイスラエル対アラブ諸国間による恐ろしい核戦争の舞台になる可能性が格段に高くなるであろう。
ロシアと中国が虎視眈々とアメリカの後釜になろうとして待ち構えている。しかし、これはあまりにもぞっとしない筋書きである。
アメリカの関与がもしなければ、紛争の規模と破壊の凄惨さは、そのスケールを縮小し得るかも知れない。しかしその場合、紛争は未解決のままに燃焼し続けて、時に世界から忘れ去られ、世界から遮断されたままいつまでも打続くかも知れない。
アメリカの意図がどうであろうとも、平定と再建の可能性と並んで、もっと深刻化した紛争再燃の可能性を同時にアメリカが齎す。アメリカの意図がどうであろうとも、アメリカの抑圧によってアメリカに次ぐもろもろの暴力的暴発が押さえ込まれているが、その暴力的な衝動が消滅する気配は皆無である。
―暴力との訣別、この問題はアメリカさえいなければ・・・あるいはアメリカが世界の帝王として何とかしてくれれば・・・というようなレベルで為しえるものではない。我々は歴史の必然でもあるようにして兵器の発達が持つ蠱惑とその魔力に取り憑かれてしまった。独りそこから逃避しようとしても周りが許さない。
全員が全員を互いに縛りあっているが、それは絶対に解けない縛りである。