31.要約

形態上~1.暴力的敵対者の集団の中で、その裾野部分(弱い部分や、時として無辜な部分)を狙う。(無差別爆撃、住民虐殺、ビル破壊、毒物散布など)しかしどこまでが裾野でどこからが本体であるか、その境界線は漠としていることが多い。

     2.政治、口論、交渉、取引、選挙、外交などで対立を解消しようとする合意に反して「都合の悪いやつは()ってしまえ」という方法。(侵略や暗殺など)

心理上ならびに理由上~

     1.テロリストが別世界にいて一般世界のなかで無差別的にテロをする。理由は総て何とでもこじつけられるのだが、本当の理由はただ一つこうだ~「我々はあんた方を殺し捲ってやるぜ。」~心理的には憎悪と自己顕示が基調である。

     2.テロに依らずとも十分に目的を達成できるが、それでもテロを用いる場合、その心理は主として計算である。(ほかには蔑視、趣味、実験など)(例~原爆投下など)

     3.非力でテロのほか有効な手段がない場合、~(多くは切迫した彼らの正義を持つ)~他に選択肢を持たないということから、この種のテロを仮に手段として容認したところで、結果的にテロのみで所期する目的を遂げきることは殆ど不可能であろう。何となれば彼らはテロ以外のことに関しては無能で非力であるからである.(パレスチナ-イスラエル紛争、におけるパレスチナ人たちがするようなテロ行為など)

大国がいくら自分達の正しさを演出してもテロリストたちには通用しない.実際、大国が憎悪されるのは、大国の所業の中にその理由がある.戦争が私闘である限り(そして戦争の本質そのものが多くの部分私闘であるのだが)国家対テロリスト間の戦争も両方が夫々に己の正義を持つ.

更に進んで、国家が、又はテロリスト達が、互いに相手のテロを誘導し、自作自演し、捏造し合う.

残虐卑劣な敵に対する、自分達が正義の殉教者であることを世界に演出するために、テロが必要である.

成果~

テロが悪い影響を全く後に残さないということはない.一般的には憎悪と報復の相互増幅が始まり、こうなってはどちらか一方が完全に殲滅される他には解決のしようがないように見える.

最低限でも、テロリストたち、テロ組織、さらにはテロ国家、更にそれを超えるもの、の実存に歯形を残す傷、歴史に歯形を残す傷は消えることがない.(歴史上の傷については、テロの痕跡を完全に消し切れれば別であるが、それでも存在の内部に消しがたい澱、瑕疵が頽廃として残る.即ち、自分自身が病んでしまい回復できなくなるのである)

無防備な一般民衆に対する無差別テロは、それが如何なる抜き差しのなさ、ほかに手段のない切迫性に裏付けられたものであるとしても、悪い手段であることには違いなく、世界からの晴れやかな肯定を得るわけには行かない。もし晴れやかな肯定が得られたとしたならば、この悪い手段は市民権を得て、世界中に横行するであろう。なぜなら、悪い手段を大好物とするような人間は掃いて捨てるほどいるのだからである.実際、テロリスト達もまた、自らが選択した無差別的な卑劣性に染まって、人間の本質までが始末の悪いニヒリストに変化してしまう.この変化は一度起きると不可逆的である.イデオロギー的野心や宗教的野心を始めとするもろもろの野心や、自己顕示によって立つような、テロリストの中でも最悪な種類のものもある.

この類のものは、人間全般に対する憎悪と、そして、それと裏腹な権勢欲や顕示欲によって生きるところの、単なる悪質な犯罪者でしかない。

*-次のような事実は例外である。即ち、夫の目の前でロシア兵によって強姦された上で、その夫を殺されてしまったために、生きている意味を失って自暴自棄になったチェチェン人女性が、体に爆薬を巻きつけて自爆テロをしたなどという事例がある.

こうなるともうこれは是非善悪、論議分別の外にあるものとしか言うことが出来ず、我々は云うべき理論や言葉を失い、驚愕してその事実の前に立つ-しかし、そのこと自体の前に、原因になるテロが存在している.

このような例外を除けば、テロリストは必然的に堕落する.

実際、チェチェンに於いても、テロの実行犯たちは、彼等の指導部によって騙されて、それと知らずに遠隔操作時限爆弾を持って犯行現場に行かされたり、誘拐、人身売買、麻薬投与、拷問、などによってテロを強制させられたりしている.

更にチェチェンのテロリスト集団がロシアの資金供与を受けてテロというものを、収入を得るための専業とするに至っている.

ロシア官憲の狙いはテロ集団に金を注入して彼らを肥大させることによって、テロリスト達の存在が、ロシアの対チェチェン侵略に対する世界中への正当化のための口実になることである.

更にはロシア官憲組織自体の存在理由強化にとってチェチェンテロが格好の追い風であること、などにある。それは丁度、警察が犯罪を望み、待ち設けていることと同一の事情であり、軍隊幹部、軍需産業、軍需産業から金をもらう政治家、などが戦争を望み待ち設けているのとも同一である.そして、イスラエルの情報機関とパレスチナ人テロリスト達との間においても、上記ロシア官憲とチェチェンテロリスト達との間の関係と全く同型な現象が起きている。(しかし、イスラエルの場合、彼等のゲームが、生存のための切迫によってより多く動機付けられている点が少し違う.)

同様にして、イスラム教原理主義者テロ集団(アルカイダ、パレスチナ解放テロ集団ハマス、ヒズボラ、タリバン、など)に対してもサウジアラビア、イラン、シリア、(旧)イラクなどが資金供与をしてきている。その目的の一環は勿論、石油利権独占によってこれらの国を支配している独裁者や王族達の安全保障のためである。テロリスト達が彼等に牙をむかないように資金援助をしているわけである。

テロ集団の主要な収入源が麻薬の生産・密売であることも、悪い手段の行き着く必然であろう。

その必然とは、次のような心理並びに現実の過程の中にある。

►悪に対して金を出す人は少ない。しかし、テロリスト達はまっとうな仕事が嫌いである.

►次のような自己欺瞞が出てくる.即ち、

我々は正義である.正義がその手段として悪いことをして当然である.その理由は、我々の目的が正義だからだ.

その実例はアルカイダ、ヒズボラ~(アフガニスタン産のヘロイン)、IRA(北アイルランド共和軍)、FARC(南米コロンビアの革命軍)PLO(パレスチナ解放機構)、サンディニスタ(ニカラグァ)、など数多く、殆ど全てのテロ組織が麻薬業に手を出している.