核武装愚論(志方俊之)-2
[核は「持てるが持たぬ」が賢明だ(志方俊之氏)](産経新聞2011.3.7)の内容検査
[冷戦構造が消滅した現在、仮に北朝鮮が日本に小規模な核を一発落としたとして、米国は必ず核で報復してくれるだろうか。理論的にはそうであっても、米国が核以外で対応する可能性はある]
解説:
1.北朝鮮が日本に核を落とすに至るまでにそうするに至る経過があるであろう。
このときアメリカはどう動くか-アメリカは日本に対して多少の蹂躙や譲歩は我慢せよ、といって北朝鮮に対して日本を譲歩させようとする筈だ。このことは最近の尖閣諸島海域で起きた中国漁船船長逮捕事件に関してアメリカが「釈放してもみ消せ」と促したことからしても判り、アメリカは(アメリカ以外のどの国でも同じだけれど)核を持った国との厄介な係争に巻き込まれたくはないのだ。
しかし、日本が核武装していれば、日本は、アメリカの意向を伺い、推理し、疑い、解答のない迷いの中を彷徨い続けなければならないような優柔不断な状態に陥る必要は少なくなる。
核抑止力(より正確には核外交力)は、核を落とされた後の、外国による報復を当て込むと言うレベルの問題ではなく、外交の主体性と力との基底である。
2.中国の将来の版図に、関東以北を日本自治領とし、、本土以南の全部と四国、九州から沖縄にいたる区域を直接中国領とする計画が存在しその地図までできている。
勿論、彼等は実際にそうするつもりだ。特に日本近海にある石油に代る新燃料メタンハイドレートが将来の16億人のエネルギーを確保しなければならない彼等の垂涎の的である。
中国は特に新潟を欲しがっている。何故ならば新潟沖に有望なメタンハイドレート埋蔵海域が存在するとともに、新潟県は中国大陸から日本の中央に乗り入れる最適な場所と地形を持っているからで、今中国が新潟市内に中国領事館用の土地と称して巨大土地を買おうと盛んに物色しているのはその布石に他ならない。
中国と日本の全面対決(または日本の全面事前降伏)は必然であるのだが、日本が核武装なしで核武装国中国とどうやって対決可能であるのか、イメージが出てこない。
アメリカがこのとき(中国は自国に対して相対的に、またアメリカ自身の衰弱や困難により、アメリカの力が弱化した時を見計らって出てくるはずである)どのような態度を示しどのように動くであろうかと言う点については全く不確定であり、、本格軍事介入、日本に対する譲歩強要、傍観、退却、など、どのような仮定もそれなりに成り立つように見える。
3.これで判るように、問題は、北朝鮮が日本に一発小さい核を落とした場合、などという単純なものではないのである。
「核を落とした場合」などとひとごとのように仮定しているが、そのリアリティが何を意味するのであるか書いた人が判っているとも思われない。
(人が数十万人単位で焼き殺されるのだ.だから、絶対に一発も落とさせないことがすべてである)
「では日本も独自の核を持つのかとなると、相当の覚悟が要る。まず核拡散防止条約(NPT)体制から離脱しなければならない。戦後一貫して広島、長崎の悲劇を世界に訴え、国際原子力機関(IAEA)事務局長に天野之弥氏を送り込んでいる日本が核武装へと舵を切れば、わが国の国際的信頼は壊滅状態となる。そうした決断は現在の安全保障条件の下では、国民的合意を得られまい」
解説:
1.中国による尖閣沖の石油開発、尖閣領海に対する漁船(偽装軍艦だ)の侵犯、明らかな尖閣諸島上陸占領意志の表明、韓国による竹島の占領、軍事基地化(注意:露骨ではないが、韓国軍の仮想敵国の主力は日本であるという密かな事実を我々は認識しなければならない)、北朝鮮による日本人拉致、ロシアによる北方領土不法占拠、
など、日本は現に日本を囲む4つもの国から侵略されつつあり、憎悪され、復讐の対象とされてもいる。そして、そのうちの三つまでが明らかな核武装国である。
NPT条約はこの三つのうちの主要な二つ-即ち、中国とロシアの核を正当な権利として認定し、日本に対しては核を禁止すると言う核恐喝侵略推進を固定し保障するための条約であるから、世界中の物の道理が判る人はすべて、NPTに加盟し、「核反対」と気取り、IAEAに局長を送り込んで嬉しがっている日本を馬鹿か、気取り屋か、もしくは救いようのない臆病者か、またはそのすべてであるのだと思っている.
2.「そうした決断は現在の外交・安全保障条件の下では、国民的合意を得られまい」
と言っている部分は、「国民的な合意を形成することを予め私は放棄します」と正直に言い換えるべきであろう。
(日本が核武装しようとすれば)「ウラニウムの輸入が停止し、・・・・原子力発電を続けられない。原油や食料の輸入も、日本関連船舶の国際海峡の通過も制約されるなど地球規模の制裁も覚悟しなければならない。」
解説:
1.NPT脱退に対する経済制裁条項などと言うものはNPT条約にない。
勿論、NPT非加盟のまま核武装したインドに対しても、パキスタンに対してもたいした経済制裁は実施されていないし、多少の制裁もどきも、すぐその後でなくなってしまっている。
アメリカの意向一つなのだ。アメリカが判りさえすれば経済制裁などは起きない。
アメリカも次第に分かってくる。日本の核を禁止し続けていると、近いうちに中国と代理核対決をしなければならない時がくるかもしれない。さもなければ赤恥をかいて極東から撤退し、事態を傍観するだけしか選択肢がなくなりそうだと言うことが。
2.ロシアや中国や韓国の経済制裁ごときは日本にとって問題ではない。困るのは向こうだろう。日本からの中国への利権つきODA支援などと言う腐れ縁が切れるのだから我々は反って大歓迎である。
(国民的合意は得られないのだからこれ以上論を進めても無駄なのであるが)「国民的合意が得られて核兵器を作ることになっても、国土の狭いわが国で、核兵器の実験場や発射基地などの設置を受け入れる自治体などはないに等しかろう」
この説は「国内國際におけるける合意の困難」そして「用地確保の困難」という二段階困難論(実は二段階に対する最初から解決放棄論)の構造になっていて、ここで二段目の不可能材料が持ち出されたわけだ.
しかし、この困難にもかかわらず、
「わが国が、世界第三位の原子力発電能力、H2B大型ロケット技術や、小惑星探査機「隼」が示した正確な再突入技術を兼ね備えていて、NPT離脱後、しゃにむに核弾頭作りに励めば数年以内に何発か持てるであろうことを、国際社会は知っている」
解説:
だがその事実が抑止力であるためには、国内の反対を消滅させ、国の意思を統一し、外国の干渉を引き受け、それを克服することが可能であるということを実際に示めさなければならない.しかし、それははじめから不可能、ないしはそこまでする気がないといっているのである.
「そうであればこそ、“持てるけれど持たないでおく”政策を取るのが賢明である。むしろ、その立場を貫き、約180カ国を数える非核国の指導国として、やがては拡大される国連安全保障理事会の常任理事国に推挙され、核不拡散に向け外交力を発揮すべきだ。」
解説:
核武装を放棄したはずの二段階困難論にもかかわらず、「持てるが持たない」と称して優等生になろうとするならば日本の安全保障常任理事国入りを妨げるものはない。なぜならば、
ロシアと中国の核は認め自分達は核を放棄するというNPT非核国のチャンピオンとして日本が登場すれば、ロシアと中国の対日本恐喝体制の永続を、直接日本が主導してくださるのだからな.
「在日米軍基地に戦術核の配備を認めてまで核の傘を担保しなくても、島国のわが国の周辺には、核弾道・核巡航ミサイルを搭載した米国の潜水艦や艦艇が遊弋している。したがって、それらが有事、緊急時に領海を通過できるように日本側が担保することがむしろ緊要で」
解説:ここは現状認識が全部間違いである
1.まず、「戦略核弾道発射原子力潜水艦」は、アメリカにとって日本近海に存在する必要がない。戦略核弾道発射原子力潜水艦の射程距離からして太平洋のアメリカ西岸か、大西洋にいるのがもっとも安全で良い。(敵に近すぎる場所では打てないし、危険である)
次に、「巡航ミサイル搭載潜水艦」は弾頭から核を外してあるし、この種の潜水艦の用途そのものが海軍特殊部隊展開用の基地艦艇としての役割を主体とするようになっているから、元々が核の傘としての抑止力にはもうならない。
2.直接、米軍が日本の領土内にいることが抑止力である。その場合、日本に対する攻撃はアメリカの心臓や頭への攻撃ではないが、アメリカの足の甲に石を叩きつけるくらいの作用はある。アメリカはわざわざ自分が出張して基地を置いている国に対する攻撃をアメリカに対する直接のチャレンジであると感じるだろう。
「日本が国会をはじめ公開の場でタブーなしで「日本の核を」論じ、日本が核保有へと転換しないようにと、周辺諸国が祈りつつその論議に耳を傾けるような状況もまた一つの抑止力であろう」
解説:
既に二つの核武装不可能性を明言している以上、ここでいう日本の核論議は、昆虫がよく使うような擬態の一種に他ならない.
擬態を使って他人の気を惹こう、擬態を使って他人の気を持たせようというのだが、擬態と言うものはそれが擬態だと知られてしまえばもう何の役にも立たなくなる。そうなれば擬態を演じて見せることによって得られるものは激しい軽蔑だけになる.
“日本が国会をはじめ公開の場でタブーなしで「日本の核を」論じ・・”などと聞こえはよいが実は、
“日本が国会をはじめ公開の場でタブーなしで「日本の核を」論じて見せる振りをして・・”ということだ.