Ⅵ:橋元竜太郎以降
★小泉純一郎首相時代
ロシアが主催して、第二次大戦戦勝記念国際大会がモスクワで行われたことがあったが、世界中の各国元首が参集するなかで、わが国においても、三百何十国数ある国家宰相の中で、国際社会から最も軽蔑されている宰相の一人である小泉純一郎首相(当時)が、凛として、粛々として、毅然として、ノコノコと敗北宣言に出かけた。結局、もう負けたから北方領土も要りませんと泣きに行ったわけだ。しかし、ロシアには火事場泥棒をされた覚えはあるが、戦争に負けた覚えはない(勝った覚えならある)
日本外務省はロシアに対して何か贈り物をしたり、猿知恵を提案してロシア様から桃色のご返事を頂いたりして、今にも領土問題が解決するかのような雰囲気を醸成し、それをもって彼等の閉鎖内部論理に準拠した手柄と成し、もって税金を貪り、出世のネタにしようするのが真実のところだ。しかし、そう簡単に領土などは帰っては来ないのであるから北方領土問題はロシアを苛める為の材料であるくらいの気持ちでいればよいのだ。
町村外務大臣がロシアのプチンに向かって北方諸島の日露共同管理を申し出て、プチンから、「ロシアの領土としてロシアの法律の下にそうするならば苦しゅうない」などと押さえつけられて、手もなく引き下がった。
共同開発を提案したというということは、ロシアによる領土占有を、既得権としてわざわざ頼まれもしないのにこちらからご丁寧に認定して差し上げたことに他ならない。即ち、「共同管理権を差し上げますから、私どもにも共同管理をさせてください」とプチンに懇願したのである。この外務大臣は、共同管理提案などは、相手方が苦し紛れに申し出てくるように仕向けるべきものであって、こちらから提案すべきものではないということさえ解らないのである。
立場を変えて、自分がロシアの人間であったとして、日本の大臣から「北方領土の共同管理をさせていただかせていただかせて下さい」と頼まれたものと想像してはどうか。
「フフン、馬鹿が、やるに事欠いて、今度は泣きついてきやがったぜ」くらいにしか思わないだろうが。一度相手の立場になり切ってみて物事を判断するのが外交の基本なのだが、それが出来ていない。
「北方領土は、a-priori(ア-プリオリ=本質的に、絶対的に、経験に先立って)に、日本に所有権があり、ロシアはこの島々に不法占拠中である」、という基本認識を貫徹し続けることが第一の基本であり、それを踏み外してはならない。
★麻生太郎首相の外交
「北方領土問題は勝ち負けの問題ではない。ここら辺で半分ずつに分け合って終わりにしましょう」などと、お正月のカルタ取り遊びのような風流なことを口走った。ご面相が風流であるに加えて言うこともなかなか風流な人だ。
しかもその後喋ったことをころりと忘失して、今度は「北方四島は全部わが物だ。ロシアがそれを不法占拠しているものである」などと言い直したが、呆れたロシアの外務省がすかさず、「この発言には、何の外交的な価値も存在しない」などと露骨に侮蔑的な声明を出した。
その後麻生首相は、プチン誘いに乗り外務省が制止したにもかかわらず、日本領であるはずのウラジオストックまで呼びつけられ、
▼ 天然ガスを買わされ、(注1.)
▼使用済み核燃料の処理をロシアに委託させられ、(注2.)
▼ 領土問題に関しては「将来に向かって前向きの云々」というプチンからの有難いお言葉を賜って満面破顔一笑、精一杯の作り笑いをみせて嬉しがらせて頂いて戻ってきた。(注3.)
(注1.)ロシアからガスなどを買っていると、そのうち、いうことを聞かないとガス供給を止めるぞと恐喝されるときが来るのは目に見えている。2010.11.12、東京で行う予定であったこのウラジオストックの天然ガスプラント事業合意文書の調印式にロシアサイドが急に訪日を中止すると通告してきた。この先どうなるかは不透明だがロシアはいつでも日本を揺さぶる道具を手に入れたわけであり、既にサハリン天然ガス開発ⅠとⅡで経験済みのように、プラント施設ができ次第ロシアがこれを全部没収して日本を追い出すという可能性もある
(注2.)核武装のために核燃料処理は自前でしなければならない
(注3.)領土に釣られて土産持参で呼びつけられて土産だけ取られて素手で戻ってきたということになる。
★民主党の領土外交
民主党に領土外交は存在していないが、やれば立場を損なうだけであるから何もしないほうが良かったとも言える。しかし、中国、韓国、そして、ロシアによる侮りと挑発が民主党になってから一段と増大した。北方領土に関しては、
メドベージェフ大統領による択捉島初訪問があり、更にこれに合わせて韓国や中国の企業に対して北方四島でのロシア主導による共同開発提案が行われ(後記:既に実行済み)、追い討ちを掛けるようにしてロシアの爆撃機が日本本土の周りを一周した。そして、北方四島の要塞化宣言もなされた。
* (参考記事)露の新型揚陸艦「北方領土向け」
ロシア軍のマカロフ参謀総長は8日、フランスからの購入交渉が行われているミストラル級強襲揚陸艦(4隻)について、日本の北方領土を含む千島列島の防衛を目的に極東に配備することが不可欠との認識を示した。インタファックス通信によるとマカロフ氏は「千島列島では必要な時に上陸部隊を急派できる移動手段が必要だ」と述べた。
・・・・一隻当たりの価格は6億ユーロ(約653億3300万円)と報じられている。(2010.6.9産経新聞-モスクワ-遠藤良介)
勿論、この急襲揚陸艦の使途は北海道上陸にエスカレートしうるものであるという可能的な想定はあながちに荒唐無稽なものではない。現実の意外な進展と言うものは常にそうしたものだ
民主党において前原外務大臣が「北方領土問題に政治生命を掛ける」といい、訪ロしたが二本勝負をして二本とも面を叩かれて敗北し、ノコノコと日本に戻ってきた。それも戦って面をとられたのではなく、自分から頭を差し出して[どうぞ私の面を叩いてください]といわんばかりの負け方をしたから税金の無駄遣いなどというものものではなかった。そのあと慣例により無事外務大臣職をコロリと放棄して政治生命を保った。
前原交渉の具体的内容としては
a.「北方領土が日露のどちらに所有権があるのであるか」日ロ間で研究組織を編成して互いに論争研究しないか・・・というロシアからの提案に対しては拒否、
b.北方四島の経済開発企業進出を世界に(主として中国と韓国に)開放したいが日本も来るかと聞かれて、「日本の立場を害さない範囲でのハイレベルの参加をしたい」と答えた。しかしこの、「日本の立場を害さない範囲でのハイレベルの参加」と言うのが実際何のことなのか全然わからない。前原さん御自身も判らないであろう。(分かる訳がない。元々の言葉の中身が何もないのだから)
前原はa.b.ともに正解とは逆の答えをした。
a.については、領土問題を相互研究し日本の主張を明らかにし、ロシアの主張と過去の行為の違法性を世界に提示すべき絶好の機会であるから、挑戦を受けて立てばよかった。しかるに前原はこれを拒否することによって逆に日本の理論的な自信のなさとロシアに理論的な自信がありそうだという間違った情報を発してしまったのであり*1、
b.に関しては、ロシアの領土的主権に乗って、(わけの分からない条件付らしいが)日本も四島の開発に参加させて頂かさせて戴いても良いと敗北宣言をしてしまったのである。ロシアの打診に対して参加という言葉で応じた以上、向こうの主導権(領土占有権)を認めたことになる。そうではなく、「そのような企画は容認できない。もしそうなればわが国はしかるべき対抗処置*をとるであろう」とでも捨て台詞を吐いて帰ってくればよかったのである。
(*経済封鎖・ODAや無償援助の即時廃止・企業間取引停止などが考えられる)
ロシアはきちんと、日本の外務大臣訪ロに関して、その際何を言うか、何を提案すべきか、予め作戦を立てて準備していたようであるが、日本の外務大臣は飛んで火にいる夏の夜の蛾のように何の心構えも準備もなく、よちよちと誘い込まれているという印象だ。
(田中-ブレジネフ日ソ領土交渉の時には、田中首相と大平外務大臣は往路の飛行機の中においても北方領土に関する歴史的な経過や問題を勉強し続けた。田中がぐったりしていると、講義している大平が「お前聴いているのか、おい」と叱り付けたりしていた)
ロシアは前原の醜態を踏まえて「もう日ロ間には領土問題はない。この問題は戦争による国際法上の正当性によりロシアの領土と確定している」と、角栄-ブレジネフ会談以前の、にらみ合い状態に戻そうとしてしまったのだが、それはもとより望むところだ。
これまでのぶざまな迷走から再び「元々の日本」に戻る機会が到来したのであり、我々はロシアとの間の経済的、政治的な協力などを必要としなくとも十分やっていけると言う事実を示し続けるべき持久力勝負の時が再び到来したのである。
(*1.当事国が領土の帰属問題について合意することが困難な際、国連機関
である国際司法裁判所
を利用することができる。しかし国際司法裁判所の制度によれば、付託するためには紛争当事国両国の同意が必要であり、仮に日本が提訴した場合、ロシアが国際司法裁判所への付託に同意しない限り審議は開始されない。1972年
に大平正芳
外相が北方領土問題の付託を提案したが、ソ連のアンドレイ・グロムイコ
外相が拒否したことがある。このように本来北方領土問題に関して理論闘争が不利であると見ているロシアが今回わざわざ理論闘争を提案してきたということは、
「お互いもうこの厄介な問題に理論的に(ということは双方の理屈と面子が立つように)何とかしようではないか」という問いかけであるはずだ。
提案第二項で、「さもなくば我々は北方四島の領有をさらに進化させ、外国の企業をも呼び込んで開発させるぞ」という付録までつけたのは日本が第一項の提案になんとか乗ってきてくれというメッセージだ。しかし、無能不勉強な前原はこれを瞬間的に察知できなかったわけだ。)
歴代総理大臣や外務大臣がよく北方領土視察をする。
視察といっても北海道の浜辺から思い入れたっぷりの演技をして眺めたり、飛行機で空から眺めたりという芝居だが、それをすると1cm四方位づつ(丁度、小学生の国語の学習ノートの升目くらいの大きさだが)領土が帰ってくるとでも思っているのか。
吹雪の網走海岸を物寂しく歩んで歯舞島だか何かの島影を眺めて思いに耽る振りをしたりして税金を使って余計な真似をする。あんなものは写真を見て地図で確認すれば分かる。わざわざ行くことはない。挙句の果てにメドベージェフから「日本の首相さんが、北海道の海岸に立って、わがクリル諸島の美しい島影を眺めて思いに耽られる事は総理大臣さんのご自由である」などと嘲られている。
(私はモスクワの空港に到着して飛行機から降り立った際の田中角栄の、侍が切り込みをする直前ででもあるかのような厳しい険しい顔をTVが映し出した画面を今でも思い出す。
それは紛れもなく国の命運を自ら引き受けようとする人間の顔であった。そして、昨今における政治家の資質の急激な低下を改めて思い知らされた。)
追記:露、北方領土に海軍基地建設を検討
・2016.3.26、ロシア国防相が省内会議で択捉国後を中心とした地対艦ミサイルと無人機を主体とする大クリル海軍基地建設方針を述べた
・既に両島には陸兵推定3500人が駐屯している
・日本においては、「プチンは安倍が好きだ」、だから、「シベリア開発への日本の参入協力と引き換えに領土を返すつもりだ」などという甘い人が出てきたが間違いである
・シベリア開発は当地域における人口比が中国人7000万人に対してロシア人が700万人であり、ロシア人は続々とロシア西部に移動しているから、プチンが危機感を持ち、日本を巻き込んでシベリアの主導権を戻したがっているためであるが、中国封じ込めという目的は日露共有できる国益であり、領土と絡めないで推進しなければならない
(いくら協力しても領土などは絶対に返してこない)
(返すかのような振りはするだろう)
・日露戦争でしたようにまたロシアを戦争で叩き潰すことによってのみ北方領土の奪回ができる.他の選択肢はない.
疑似餌につられてチャラチャラしてはならない