2015年10月27日(Tue)
★失われゆく米国優位
9月17日付Defense Newsが、RAND研究所の報告書「米中軍事力のスコアカード:軍事力と地理的な要素によるパワー・バランスの変化 1996-2017」を要約、紹介しています。
すなわち、1997年以降20年間における米中の相対的な能力の変化を観測した結果、次の10の分野において米国の優位が失われつつある。
①米空軍の基地に対する中国の攻撃能力、
②台湾海峡及び南沙諸島周辺空域における航空作戦、
③中国の領空に対する米軍の侵攻能力、
④中国空軍の基地に対する米国の攻撃能力、
⑤米国の水上艦艇に対する中国の作戦能力、
⑥中国海軍の水上艦艇に対する米国の作戦能力、
⑦中国の宇宙配置システムに対する米国の対抗能力、
⑧米国の宇宙配置システムに対する中国の対抗能力、
⑨米中両国のサイバー戦能力、⑩米中両国間における戦略核兵力の安定性、といった分野である。
★高まる中国の軍事力行使の可能性
今後5年から15年の間、米中両国が現在の延長線で軍事力を整備していく場合、アジアにおいて米国が優勢にある地域は縮小する。中国は局地的な海空優勢を獲得する能力を向上させ、米軍が緊急展開するまでの時間の隙間を利用して、米軍を撃破することなく限定的な目的を達成することが可能になるケースもあり得る。より深刻なことは、このような認識から、中国の指導者が隣接国との紛争に際して米国が介入しないと信じる場合があるということである。米国の抑止力は劣化し、危機に際して中国が軍事力行使という選択肢をとる危険が高まる。
米国としては、アジアにおける米軍の能力が低下するという中国の誤解を是正し、米軍と交戦する危険が高いと認識させることが重要である。このために優先すべき施策は、
①十分な数の生存性の高い前方展開基地、
②(敵の影響力が及ぶ地域から離れて攻撃できる)スタンドオフ兵器、
③ステルス能力のある戦闘機及び爆撃機、
④潜水艦戦及び対潜水艦戦能力、⑤宇宙における能力などである。
一方、在来型の戦闘機部隊や空母戦力は迅速に縮小すべきである。また、中国に過度に接近した固定的な基地に依存する前方展開態勢は危険であり、フィリピン、ベトナム、インドネシア及びマレーシアにおける有事のアクセスを可能にするための政治・軍事面における関係強化をめざすべきである。
RAND研究所は、米陸軍航空隊(現在の米空軍)が第二次大戦における作戦を分析するために設立し、数値などのデータに基づく科学的な分析手法を編み出したことで知られており、作戦解析(OR:Operations Research)などで実績を挙げてきました。今回の報告書は430頁に及ぶ大作ですが、米中両国の軍事力を測るための様々な要素を科学的に分析したものと考えてよいでしょう。
本報告書の核心は、主として中国海空軍の近代化の結果、米軍の前方展開態勢が脆弱なものとなり、米中対決の初期段階において中国が一時的に局地的な優位を獲得し、後詰めの米軍が展開するまでの間に軍事的な目標(例えば隣国との軍事衝突で勝利すること)を達成し得るという点にあります。報告書は、これを克服するためにスタンドオフ攻撃能力などの整備を優先すべきであると主張していますが、この点は、2010年に米国防省が公表した統合エア・シー・バトル構想と軌を一にしています。いわゆる第一列島線(南西諸島~南シナ海東部)及び第二列島線(小笠原諸島~マリアナ諸島)を一種の抵抗線とする中国の接近拒否能力(Anti-Access/Area-Denial : A2/AD)の影響下で作戦するために、長距離から攻撃できる海上航空作戦能力の整備を急ぐべきである、との主張です。
また同報告書は、アジアにおける米国の前方展開態勢について、例えば沖縄のように、中国に隣接した固定的な基地に依存することの危険性を指摘しています。現に米軍は、沖縄を含む在日米軍基地及び在韓米軍基地に加えてグアム及びオーストラリアにおける前方展開基地の整備を進めていますが、RAND報告書の提言を機に、米議会などにおいてこの政策をより徹底するよう求める動きが出てくることも予想されます。
解説:
中国の近接戦能力が増大し、アメリカが極東で中国と近接戦を行うと犠牲が出るので、前線を後退させ、長距離機動打撃力を強化すべしという
拳闘でいえば、接近戦をして足を止めて叩き合うなと言っている
したがって、日本周辺においては日本が主力として中国の攻撃を引き受けなければならない.実際、日米新軍事ガイドラインにおいて、日本周辺における有事には日本軍が主として打撃力を行使し、米軍がこれを支援するとしてあり、旧ガイドラインと役割が逆転している.
それなのに安全保障法制の国会審議で、日本は後方支援に徹し、戦場には接近せず、万一戦闘に巻き込まれそうになったら任務を中断して逃げるなどと与野党が言い合っていたが、現実に目をそむけて国民に真実を隠しているのである.