講道館の西郷四郎がモデルの姿三四郎は富田恒雄の小説で黒澤明監督が映画にした.藤田進が演じて、投げられても猫みたいに空中で回転して足から着地するから無敵だ.小学5年生の私はなるほどああすればよいのかと思った.それから「猫ひらり」はクソガキにとって既定の定理であり、後は実行あるのみだ.押見のアンニャは二つ年上で,兄者からアンニャに訛った.吉岡のオッチョは二つ年下で本名の吉男がオッチョに訛った.アンニャとオッチョと私は工業学校の運動場と砂浜の境にある建てかけの小屋に上って遊んでいたが、姿三四郎を実行する時が来た.
何分にも既定の定理の実行であるから何の不安もなく即座に屋根から地面にダイビングしたが、1回転し損ねて背中から落ち、息が詰まった.
アンニャとオッチョは「シューちゃんが死んだ」と言いながら逃げて行ったので「助けもしやがらんでと」憤慨した.30秒で治り、待てーと呼びとめたら戻ってきて、「危ネかったのー」とかいいながニヤニヤしているから私は怒って返事もしなかった.
首から落ちていれば即死しているから残念とか思う暇もなく、さっぱりと永遠の終わりだ.下が砂でなく固い土だったら背骨が折れていたかもしれないが、ホーキング博士見てェに車椅子になりたくはねぇ.