4.色々な軍事同盟の事例

イ.第二次世界大戦

ヒトラーが欧州制覇の為にフランスを席巻し、イギリスとも戦争になったが、アメリカ国民はこの戦争に対して冷淡であり、アメリカの実業界はナチス政権下のドイツ資本、ドイツ企業との交流-(資本の相互進出、企業の相互進出や提携など)-が深かった。アメリカのフランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領は、自分の中にある、欧州戦争への介入-(ドイツへの宣戦布告)-をしなければならないという気持ちと、アメリカの不介入という世論との間で引き裂かれていた。しかし、アメリカの国民は、今は冷淡であっても、何らかのきっかけさえあれば一斉にイギリス支援・欧州戦争介入へと向かって立ち上がる筈であり、イギリスはそのことを願っていた。一方、ドイツと日本は不合理な軍事同盟関係を結んでおり、その内容は相手や理由の如何を問わずに、一方の戦争に対してもう一方が支援をするというようなものであった。だがドイツと日本が抱いていたこの軍事同盟に対する認識は異なっており、ヒトラーは日本を、模倣は出来るが独創的な文明を開拓する能力を欠いた黄色人種とみなしており、日本は結局ドイツの従者になるであろうと考えていたのである(「わが闘争」)。ヒトラーは、あわよくば日本をソ連に立ち向かわせようと願望していた。更に、ユダヤ人抹殺への協力を日本に依頼したが、日本はドイツのこの両方の希望に応えなかった。一方、日本に於いては、ヒトラーの破竹の勢いに対して小児的に心酔し、バスに乗り遅れるな、欧州を制覇するヒトラーと結託せよ、という時流に漫然と乗ったのであるが、その具体的な標的(例えば、ドイツと組んでアメリカ、又はソ連と戦争をして打ち負かそうというような願望はあったが、実現可能な構想など)は何も示されていない。

日本の場合は完全に空虚な「アメリカ憎し、ヒトラー礼賛」という情感が支配していたのである。

したがって、ドイツと日本両国は結局、軍事同盟を単に漠然と締結していたのであり、共通の具体的な世界戦略はなかった。(もとより、共通の具体的な世界戦略を伴う軍事同盟などというものは、複数の独立主権国家の間にはあり得ないことである)

ルーズベルトは、ドイツと日本の軍事同盟が不気味であった。もしアメリカが欧州戦線に介入した場合、日本が、ドイツとの同盟によってアメリカを攻撃してくるならば、アメリカは日本とドイツとに、二方面戦争をしなければならないからである。

だからルーズベルトは迷っていたのであるが、イギリスのチャーチル首相が何とかアメリカを誘い込もうとして、ルーズベルトに国際電話をかけ、おそらくこう言った筈である。

「日本は貴国の太平洋艦隊に対して攻撃をするつもりであり、我々はその確実な情報を掴んでいる。その具体的な計画は・・・」

これでルーズベルトの気持は決まった。日本を経済封鎖して対アメリカ攻撃に誘い込み、それを理由にして日本とドイツに宣戦布告をすることができる。そうなればアメリカ国民は本能的に憤激して立ち上がるであろう。

ドイツとソ連は相互不可侵条約を結んでいたが、それは、何時相手がこの条約を破るか・・そのタイミングが問題だ、というようなものであり、両国の間には信頼が皆無であった。

イギリスを追い込んでいたヒトラーは急に不安に取り憑かれる。今こうしてイギリスと戦っているときに、ソ連が急に独ソ不可侵条約を廃棄して対ドイツ戦争に踏み切るのではないか?・・・と。

しかもヒトラーの願いに反してイギリスは容易に屈服しそうにもない。

そしてヒトラーは、独裁者にしかできないやり方であるが、急遽、忽然として、イギリスに向かっていたドイツ軍の主力をソ連攻撃に転換させ、逆にドイツのほうから独ソ不可侵条約を廃棄してソ連攻撃に踏み切ってしまった。その為にイギリスは息を吹き返してしまい、逆にドイツ軍は厳冬のロシアに迷い込んで壊滅的な打撃を受けてしまったのである。

解説~1.抽象的、契約的、永続的な軍事同盟(=軍事同盟契約)などというものは、同床異夢にしか過ぎず、それが常に、いつまでも機能すべきであるという考えは不合理的であるのを超えて、有害である。独立した主権国家間の同盟というものは、時々の具体的な標的を明らかにしての、スポット的なものでしかあり得ない。あり得るのは同盟的関係であり、しかも、この関係を長く保つには両国の非常な努力が必要であるという事である。

解説~2.相互不可侵条約や欲望共有同盟などというものは、元々相互に不信が存在し、「何時こちらがやられるか解らないし、逆に何時かはこちらから裏切ってやってやるぞ、」などと互いにそう思い合っているから締結される訳なのである。したがって、相互不可侵条約や欲望共有同盟は破られる為にあり、相手を騙して縛っておいて、いつか不意打ちを掛けようとする為のものでしかない。だから正確には将来破約確定条件付き相互不可侵条約とか、将来破約確定条件付き相互欲望共有同盟などというのが正しい。

信頼が存在するならばそもそも相互不可侵条約などを締結する必要はないのである。

したがって、このような同盟を本気真面目に締結しようなどと考える者がいたとするならば、そいつは余程出来の悪い政治家だろう。

解説~3.有効であったのは、同盟や契約ではなく、アメリカとイギリスとの間の血縁的な同盟的状態であった。勿論、それでも両国の間には疑惑や逡巡、計算と利害の対立、騙しあい、などが存在していて一心同体ということはあり得ない。