8.軍事的同盟の解析

基本原理;国家は遺伝子と同様、徹頭徹尾利己的である。その基本衝動は自己保全・他人支配・優越にある。したがって軍事同盟の基本衝動もまた、互いの自己保全・他人支配・優越志向によって支配される。

一方健康な国家ならば、健康な遺伝子と同様、他人との関係の中で、互いの間の尊敬や信頼を求める。

健康な軍事同盟は、この二つの相反する性癖間の不断の葛藤がある.

 1.純正な軍事同盟の条件は、

ⅰ.一方の被侵略、及び被侵略予防のために、もう一方が義務として支援参戦し、又は義務として予防的に支援し、あるいは参戦するあるいは一方、ないしは両方の国にとって戦争の大義が存在する場合には、共同作戦を戦う

いずれの戦いにおいても双方は互いに自分の戦争を戦わなければならないという根本的な困難がある.

ⅱ.同盟国による上記以外の軍事的冒険に対しては、必ずしも支援をする必要はなく、義務も負わない

ⅲ.互いに軍事的な仕掛けを行い合うことはない

ⅳ.兵器、テクノロジーの輸出先に同盟国と敵対する国があってはならない

ⅴ.当事国間の関係は対等である

ⅵ.常時、随意の一方的な軍事同盟契約解除権が保障されている

この六つである。勿論、このような理想形が実現したことはなかったし、これからもあり得ない.

問題34.理想形が実現したことはなかったし、これからもあり得ないであろう、その理由

規範的な軍事同盟というものは、不断に懐疑し、相克し、煩悶し続けるものであり、又そうすることによってのみ完成しようとして、維持され得るものである。何故ならば、二つの独立した主権国家が軍事的同盟関係を結ぶことによって国家意思と国家の運命を共有するならばそれは既に一つの国家に等しいからであり、それは矛盾である。

共通の価値観にもとづく共同の敵などというものは存在しない。二国間にのみ独自の、共有的な価値観などというものはない。共同の敵というものは単にその時々において揺れ動くような敵性を持っているものにしかすぎない。

軍事同盟国が、その一方が、あるいは互いに密かに、相手同盟国を支配下に置こうとし、あるいは同盟国間の支配圏、搾取圏における衝突があるために、または将来そのような衝突が予想されるために、相手国の弱体化を図り、敵の又敵(=第三国)をけしかけたりさえすることもよくある。

賢明な軍事同盟国ならば、いずれ(非常に遠い将来に於いてであっても)相手国と敵対衝突することもあるという選択肢も視野に入れて密かに準備している筈である。互いにそうしあうならば、反って将来における実際の衝突は避け易い。そして、軍事同盟に対する過剰な幻想も消失するであろう。主権国家が他人の戦争を本気で戦うということはあり得ない。昔なら、容易に分け前分捕り形の契約を締結して軍事同盟なりと称することが出来たが、今では何か大義をこじつけて参戦し、ついでのように装って分け前を取らなければ国民が承知しない。

何らかの国益を持ち帰らなければ他人の息子を骨壺に入れて戻した、その言い訳が立たない。元々、相手方を守るための軍事同盟ではない。軍事同盟の目的は国益にある。特に核戦争に繋がるような場合、同盟契約が守られるという見込みは全くない。

 2.同盟関係を育て、利用するのではなく、同盟関係に頼り縋るということは既に国家主権の明け渡しを含む。

軍事同盟の中に非合理的なものが含まれていると、他人の運命に自分が故なく巻き込まれて、他人の戦争を自分の戦争のように引き受けてしまったりする。

あるいは、他人の戦争から自分の戦争を不必要に作り出してしまったりする。よって、軍事的同盟はビジネス的でなければならない。ビジネス的と云う事の意味は、自他の標的とその違いを互に明瞭にしておくということであり、その上で同盟が必要であるならば、互に夫々の標的を尊重しようとするようにならざるを得ないので信頼関係がよくなる。

そうすることによって、ビジネスが成功するためには信頼というものが大切であることを知るであろう。互いに利用しあうという事が本音であるのならば、それに徹した方が、後で建前に裏切られて不信感を持つよりは良い。国家間に於いて「信頼のための信頼(純粋信頼)」などということは反って気味が悪いのだ。

勿論、同盟関係の中では、どうしても互に主導権を取ろう、取られまいとしあうものなのであるが、この事と信頼関係とが相容れないというわけではない。

一度び、共通の敵を相手に、互いに自分の戦争をした同盟国間の信頼感は非常に高いものになり得る。

しかしながら、主権国家の軍隊というものは、自分達のバックに何も存在せず、そこには全くの真空しかないなかで、自分達の力のみを頼りにしているのだと云う事が基本である。二つの国が軍事的な結合をリンクさせると、一方が単独で戦争をした場合にもう一方も否応なくそれに巻き込まれる。逆にリンクをすれば同盟関係が抜き差し成らぬものとなって成熟して行くという事もあり得るであろう。

しかし、主導権の取り合いや同盟というものに対する懐疑は依然としてあり続ける。同盟関係に対する熱の入れ方の温度差というものも常に存在する。

同盟関係には、互に相手をこちらの方に巻き込もうとし、つき合わさせようとする葛藤が付き纏う。

対等的な軍事同盟契約の困難さは、二つ以上の異なる国が常に運命共同体であり続けるということを互いに要求しあう為に発生する。だが一方は自分の私闘に相手国を巻き込もうとはするが、相手国の私闘を自分達のそれとして扱いたくはない。もう一方の方も全く同様である。それゆえ、対等的な軍事同盟契約が難破廃棄されないで存続するならば、その契約が対等的なものである限り、不断に利害、意見の対立、衝突が打ち続くのだが、この交渉を通して契約の限界に関する相互理解は確実になり、権利と義務の間のバランスが出来上がってくる。

このような煩悶を抜きにしてうやむやに流してしまえば、不合理や相互不信が蓄積する。

 3.軍事同盟関係があるということは、平時における協力推進の役に立つ。

共同的な危機管理-大量破壊兵器管理、拡散防止、テロリズム対策の共同実施

情報、技術、兵器体系、戦術、の共有

経済的な関係強化

環境、人権、その他の地球的な課題に対する協力関係・・・など。