ⅲ-アメリカ軍需産業界の重鎮がアメリカ政府の高官に就任する事が多いのは、アメリカの大統領選挙や、国会議員選挙に際して軍需産業が多額の政治献金をしているからであり、したがってアメリカ政府は定期的に戦争を実行して、溜まっている武器を費消し、新兵器の性能を検査し誇示し、兵器輸出を推進しなければならない。

そしてイラクの大量虐殺用兵器開発・所持疑惑などは絶好の戦争機会であり、戦争理由である。

ⅳ-9/11以降のアメリカは、イラクが、アルカイダなど世界中のテロ集団に大量破壊兵器を供与し、自国にもテロリストを養成し、憎いアメリカに対するテロリズム志向の一大勢力権になるということを本気で恐怖している。さもなければアメリカが数百万人分ものワクチンを自国の軍隊や国民に接種し、アメリカ軍のイラク攻撃隊に物々しくて真剣な毒ガス防御用マスクを準備したりなどはしなかったであろう。

アメリカの国防長官ラムズフェルドと部下の中央軍司令官トミー・フランクスは、アメリカ軍が一ヵ所に大兵力を集中した瞬間に、そこにイラク軍が毒ガスや、細菌などを撒いて、大惨事になることについて非常に恐れていたので兵力の一カ所集中に対して非常に神経を尖らせていた。

実際、S・フセインは対イラン戦争の末期にイランの市民とイラクのクルド族の人民に対して、マスタ-ドガスを吹きつけ、幼児を含む多くの人々(5000人規模とみられている)を殺害したのだが、アメリカはそれを見て知っている。

*(S・フセインは、イランとイラクの国境に近いハラブジャというクルド人の居住する村に化学爆弾を投下して婦女子小児の区別なく五千人のクルド人を殺戮し、一万人を超える後遺障害者を生んだ。これは、;88、イラン-イラク戦争のどさくさにまぎれて、クルド人居住区の地下に存在するキルクーク油田(推定埋蔵量は100億バレル)をものにしようとしての行為であった)

だからアメリカはイラクの生物化学兵器がS・フセインの手によって憎米国や憎米組織に流れ拡散することを本当に怖がっているのだが、反面においてS・フセインがイラン人やクルド人に毒ガスを吹きかけているのを承知の上でなおイラクに対して軍事支援をし続けていたのはアメリカである。

「;54~;60にかけて自国のユタ州で炭素菌、サリン、タブン、VXガスなどの上空撒布実験を行ったのはアメリカであり、対ベトナム戦争における実戦使用によって名高いエ-ジェントオレンジ(枯葉剤)、神経ガスなどをアラスカ、ハワイ、メリ-ランド、フロリダなどの各州で自国民に対して撒布実験をしたのもアメリカである。その成果を踏まえてイラクに生物化学兵器を供与したのはアメリカである。」(広瀬隆~「世界金融戦争」~NHK出版~2,002.11.30)

アメリカは、フセインが、アルカイダによるテロの大成功を見て、「これだっ!」と手を叩いたものと想像したのだろう。仮に今のイラクに大量破壊兵器が存在していなくても、大量破壊兵器はS・フセインの心の中にある。フセインはチャンスさえあれば必ず大量破壊兵器を持とうとする筈である。イラクの核がイスラエルを睨み、イスラエルがイラクの核によって人質に取られる。そして他の中東諸国がイラクに触発されて次々と核兵器保有国になろうとするならばアメリカにとって悪夢である。イラクの大量破壊兵器撲滅は査察などによっては不可能である。査察を無限に続けてもフセインがやる気を失わない限りは、フセインは大量破壊兵器の開発や製造をやろうとし続けるであろう。

査察を止めたり、査察の手を抜いたりすればとたんにフセインは核武装をし始めるだろう。

*(第一次湾岸戦争のすぐ後、アメリカが9700万ドルの資金を提供して、アメリカ国内に反サダム・フセイン体制亡命イラク人の組織イラク国民会議(=INC)が組織されていた。

この組織は元イラクの政治家、軍事関係者が主たるメンバーになっており、そのリーダーであるアーマッド・チャラビーが第二次湾岸戦争後のイラクの新しい体制の首相になることを予定されたが、イラク人がこのチャラビーをアメリカの傀儡、自分の欲望達成のためにイラクを売ろうとする売国奴と感じ取って猛烈な反感を浴びせかけた為、アメリカ政府もやむなくこのチャラビーを失脚させてしまった。

もともとはこのINCが、「イラクの核兵器開発、化学・細菌兵器の貯蔵、アルカイダ組織との接触、相互支援」、などという如何にもありそうな情報をアメリカの情報機関や記者達に吹き込み、9/11テロに見舞われてすっかり神経が参ってしまっていたアメリカ人とアメリカの政治家達がその情報にいかれてしまったという事情がある。結局INCはアメリカ人の中にフセインの脅威を刷り込んで、アメリカによってフセインを退治させて自分達がその後釜に座ろうとしたのであった。しかし、フセインを放逐した後、アメリカ軍による大掛かりな捜査にもかかわらずイラクには核兵器も化学・細菌兵器も見つかっていない。こうしたものは第一次湾岸戦争の後に行ってきた国連のイラク大量破壊兵器監視廃棄活動によってその殆どが発見され廃棄されていたのである。フセインとアルカイダとの接点も全く存在せず、両者は反って反目しあっていたことも判っている。)

北朝鮮の場合もそうだが、アメリカ(やアメリカが巨大軍事基地を持つ日本)が安心する為にはS・フセイン(や金正日)を征伐するしかその方法がない。

実際、一時期のアメリカは憎米的な大量破壊兵器生産・保有国のすべてをテロの温床として、片端から叩き潰してしまおうという気持ちになったのである(しかし、アフガニスタンとイラクでもう息切れがしてしまった)

アメリカの国防総省は、2,002年の国防報告書において対テロ戦の執行について次のように言った。即ち、「戦争目的が同盟を規定せねばならず、同盟が戦争目的を決めてはならない」と。

これは分りやすく云えばこうである。

「アメリカの方針に協力するものだけがアメリカの同盟者である。我々はやる。協力したい奴は来い」

更に、アメリカと軍事同盟を締結している国々は次のことに注意しなければならない。即ち、アメリカは同盟関係に準拠した戦はしない。アメリカは自分がしたい戦争のためにのみ戦争をするのだということだ。(考えてみればアメリカならずとも当然なことだが)

イラクから生物兵器や毒ガス兵器を供与された国や集団が自前で生物・化学兵器を製造し始めて、そいつらがまた生物・化学兵器を諸方に売り渡すという筋書きは、(もしこの筋書きが本当のものであるならば)、結局、生物・化学兵器がまるでナイフやピストルのように世界的にポピュラーなものになるというぞっとする筋書きに繋がるのである.

色々な憎米国家、憎米集団が互いに破壊兵器を融通し合っている。彼等に対して、当のアメリカに加え、ロシア、フランス、中国、ドイツその他の大国が適当に、ご都合に合わせて武器を輸出しており、併せ、革新的な軍事技術が拡散する程度は拡大し、速度は加速しつつある。こうして蓄積した暴力の標的が圧倒的にアメリカに集中する。脅えるアメリカは、もうやられるのを密かに待って、しかるが後に滅多打ちをもって応ずるという正義のガンマン的スタイルを取ることができなくなってしまった。

彼らが単独先制攻撃の分野に踏み込んだのは必然的な反応であるが、このように反応し続けるだけの体力は、いくらアメリカでも持ってはいない。

アメリカはこの先制的な言い掛り滅多打ち攻撃をすることによって、益々憎まれる種を撒き散らして行く。だが、アメリカに対して「贖罪の為に、ここはテロリスト達によってやられ続けなさい」などと言う訳にも行かない。

アメリカはアフガニスタン(その領土を通過するカスピ海からの石油パイプラインの施設が、タリバンによって拒絶されていた)やイラク攻撃のチャンス到来の時を待っていたのであり、2001.9.11のニューヨーク貿易ビルとペンタゴン(アメリカの国防省)ビルへの攻撃テロは、そのための絶好の口実とする素材であった。アメリカが知っていて密かにこの同時多発テロを誘導したと迄断定する訳ではないが、アメリカの一部にこれをイラク攻撃のチャンス到来と読んだ人々が居ることは間違いがない。