➡アメリカの主体は白人種にある。理念としての自由も民主も平等もこの事実には勝てない。したがって、アメリカにおけるヒスパニックを初めとする非アングロサクソン系白人や有色人種と、アングロサクソン系に代表される白人種間の人口と権力の構成比が逆転するときにアメリカのIdentityクライシスが発生し、アメリカの衰弱が始まるであろう。
アメリカの白人達は、そのときになって彼等、プロテスタントの信条であるところの(信仰や人種に関する)自由と平等に対する彼等自信の忠誠心によって彼等自身が裏切られていた事を知るであろう。
アメリカのIdentityは多層的であり必ずしも一枚岩ではない。まず、メイフラワー号に乗って新大陸にやってきた人達(=WASP=White-Anglo-Saxon-Protestant)の原Identityが中心にある。この原始Identityに加えて更に色々な移民達の持つ夫々の原始Identityが付け加わって岩盤層を形成している。
Waspに続いて後から参加した色々な国の人達の主要想念は常に(追想ではなくて)現在形である。即ち、強くて富める自由と民主の大陸にして海洋の国家、自分が今その国の一員であることの自覚と喜び。
多くの人達がこの国で色々な役割と地位とを獲得し、その生存を投入している。
このようなアメリカの多層的原始Identityが集まってアメリカの主Identityを形成している。アメリカのIdentityが多層構造であること、アメリカのIdentity形成が現在進行中であること、この二つの特徴によって、アメリカが頻繁に行う独善的な、間違ったやり方に対して、アメリカの反応は多様であり、アメリカの一角から反論が湧き上がるのを見て取れる。
アメリカは思考と言論表出への抑圧に対しては極めて神経過敏に拒絶反応を示す。
もっとも、アメリカにおける言論表出自由への執着は、裏腹の、この自由を抑圧抹殺しようとする行為と、自由への衝動との間の荒々しい闘争によって成り立っている。
実際、自由の国アメリカに於いて、過去における政府の所業の秘密を知る退職者、問題提起をする議員、アメリカ政府の暗部の盲点を追及するジャーナリスト、などがCIA、FBI、その他の謀略機関に手にかかって巧妙に不審死を遂げてきている。
「(注)1~アメリカ軍によるイラク人レジスタンス容疑者たちへの虐待が兵士の内部告発によって発覚し、この情報を米CBSテレビが報道した。
(2,0004.5月)
この報道をアメリカの政府も軍も抑圧することができなかった。報道によれば、食べ物を与えないこと、性的な辱め、殴打による自白強要、水攻め、睡眠妨害、裸にしておいて犬をけしかける、電気をかける、・・・などを米軍情報部隊や米中央情報局(CIA)が現地兵士(憲兵中隊の兵士達)に唆したという。この拷問法はイスラエルの軍や謀略機関が教唆し指導したものである。
(勿論、人間性の常として、兵士たちの中には大喜びをしてこの指令に従ったものが結構いたのであろう)
このような報道を認めるということは、短期的にはアメリカにとって一見、とても不利なことであろう。
しかし長期的に見ればアメリカに対する信頼を世界に植えつけることになるであろう。もしこの報道がなければアメリカ軍による逮捕者の虐待・拷問はもっと長期にわたり、もっと大掛りなものに発展したはずだからである。
(注意)~(その後、アメリカ政府はこのような拷問施設をアメリカ国外-例えば、南米や東欧の国-に移転させ、そこで相変わらず拷問を継続しているとも言う。)
*-この報道はおそらくアメリカ政府内における対イラク対策に関する方針と方法を巡る権力機関相互間の確執(たとえば「アメリカ国務省+アメリカ軍」対「国防省内や国務省内にいる、俗に言うネオコンサバティブ(新右翼)派」間の争いなど)があって、反ネオコンサバティブ派がリークしたものであろう。
(なおそれでも、アメリカの報道全般が御用報道と化しつつある状態については別に述べる)
発端は一兵士の内部告発手紙によるものだ。
これにセイモア・ハ-シュという記者が着目して調べ上げた。一番の始まりは、ラムズフェルド国防長官が「テロ容疑者達には戦争捕虜の拷問や虐待を禁止するジュネ-ブ条約を適用する必要はない」と命令した事にあり、イラク駐留米軍のリカルド・サンチェス司令官も当然それを知っていたわけである。
このことは、逆にテロリスト達にも口実を与える。
「我々がやっていて、これからもやろうとしているようなことをアメリカ軍はやっているではないか」と・・・。セイモア・ハ-シュは次のように語っているという。「現在ではイスラム社会全体が、アメリカが倒錯社会だと思っている。これは由々しきことさ。性的倒錯というのが彼らの使っている言葉なのだ。我々はえらい面倒を引き受けてしまった。
我々はアメリカへの危険を増大させてしまった。
えらいことだ。」(~セイモア・ハ-シュ独占インタビュ-「捕虜虐待は米国の国家犯罪だ」~文芸春秋~2,004.7)
「(注)2~B.ウッドワードというジャーナリストによるブッシュの対イラク戦争に関するドキュメント「攻撃計画」が出版された。これはブッシュ政権による対イラク戦争の主導者達に対するかなり暴露的な内容を持っているのだが、当のブッシュ大統領を始めとする主導者達はウッドワードによる彼等への取材インタビユーにはきちんと答えている。」
「(注)3~マイケル・ムーア監督による、ブッシュ政権の利己的な陰謀や無能さを描いたドキュメンタリー映画[華氏911]がアメリカで大ヒットしている
(尤も、この映画は多くの恣意的な編集を含んではいるともいう、しかし、私が見た限りヤラセという場面はないように思える。)
この映画はアメリカ政府に近いディズニー社が中立性への配慮を理由として配給を拒否したものを、別の会社が引き受けた。ブッシュ政権はこれに対して何の抑圧統制も加え得ない。
言うまでもなく、もし、アメリカ政府がこの映画に、あるいは映画の制作者に何らかの目に見える抑圧や統制を加えたということが判明したとしたならば、ブッシュは失脚するであろうし、アメリカの親米国や同盟国もアメリカに対する信頼を失うであろう。
アメリカ政府にできる事は、この映画の歪曲や矛盾や誇張を指摘し、映画制作者に対して訂正を求めることである」
「(注)4~米上院情報特別委員会が;04.7.9発表した報告書では、ブッシュ政権がイラク攻撃そのものを先ず既定方針にしてしまってから、それに都合の良い情報だけに耳を傾けてイラク攻撃に突入したが、フセインによる核開発疑惑からアルカ-イダとの関係まで、多くは間違いか誇張だったとしている。
同じ月に、超党派の9.11独立調査委員会と退役外交官・将校グループがブッシュ政権に対してノーと宣言した。」
「(注)5~華氏911のなかでブッシュがイラク攻撃を正当化する理由の一つとして次のように言っている。「フセインは私の父を暗殺しようとした」
(*第一次湾岸戦争の後、ブッシュの父親がアメリカの大統領としてサウジアラビアを訪問した時にフセインが暗殺を指示したというもの)-これはアメリカの大統領にしてはあまりにもふさわしくない言い方である。少なくとも次のように言うべきものである。「フセインはわが国の大統領を暗殺しようとしている人間である」」