ニ.(参考)~EU

 a.EU通貨統合が発足した。EU加盟各国にとっての第二次主権だ。今後はユーロの通貨価値(為替レート)が加盟国全体の共同行為によって決定し変動する訳だ。

 b.経済が国家主権の基本にある。のんびりした時代は終わった。ガツガツした世紀に入ってしまっては、国家主権の楯がどうしても前面に出る。

そうしないと生きて行けない。国民が互いに食えるように協働することを通じてその国のIdentityが表現される。基本は国の財布と国の家計を独立して執行することにある。この際、他国との諸関係において、通貨レートが競技の判定役をする。

 c.ユーロ体制の発足とともにこのように国家主権の経済的表現がEUという第二主権に明け渡される。これ以後欧州の各国は少なくとも経済的には一国(EU)の一地方自治体のようにしなければならない。言葉が悪いが、貧乏な国がEUの足を引っ張る。疫病などは無抵抗のまま拡散するのだろうか?貧乏国の人々は一国内の出稼ぎのようにして金持ち国に行ける。金持ち国はこれを嫌がらずに労働力が来たと喜んで受容し続けられるものであろうか。

金持ち国が、時にその第一主権を犠牲に供しても第二主権を優先することが常に可能なのであろうか。そうしてEUの足引っ張り部分をも己の一部のようにして引き受けて行けるのであろうか。

ここが巧く行かないとユーロ自体が又しても、やれフランスユーロだ、やれドイツユーロだと分裂してしまうのではないか。

 d.EU財政官庁の人事権を巡る諸国の争奪戦はもう始まっている。みなどこの国も自国の経済に合わせてEUの財政金融政策を牛耳ろうと目論んでいる。勿論EU内での戦争や内乱などは困る。

仮にそんなことが勃発したとしてそれはEUの通貨、株、経済活動に色々の程度で影響するであろう。

 e.ユーロの通貨価値が自国の経済状況と合致しないもどかしさ、又は気安さは常に付き纏うであろう。

EU諸国が国家の財布と家計をEUのそれに完全に委任して一元化しない限り、今まで述べてきたような色々な軋轢や矛盾は解消しないであろう。EUが欧州の人々の第二次Identityとして完全に定着するとしても、依然としてそれは欧州各国の夫々の国家エゴ、国家自我に抵触しない限りにおいての効用しか持ち得ないことは明らかである。

 f.アメリカによるイラクのフセイン独裁反米体制征伐に際してドイツ、フランスは非協力、反対。イタリア、スペイン、それに新たにEU加盟国になったポーランドなど東欧諸国は米国を支持して、そのため、欧州統合の主導権が独仏から離れたなどといわれているが、実体は、明らかに統合EUなどは全く存在していない事、したがって主導権も何も、そもそもそんなものは存在していない事、対イラク戦争のような深刻な事態に出会っては、欧州各国が夫々全く独自に自らの方策を採ろうとすることは明らかであることを示した。それにも拘らず・・・。

 g.欧州諸国のIdentityは完成している。これらの諸IdentityがEUのIdentityに主役の座を明け渡す可能性は無い。

しかし、欧州全体が一つの意志を示すに値するような効用、必要、義務、を特定の課題の中に見つけ出し得た場合、欧州がその課題を執行するために、一つの意志を決定し、表現し、行使する体制としてEUが鍛えられてゆく可能性はある。

(例)1~地球温暖化防止京都議定書運用ルール決定交渉において、EUが共同歩調で臨んだ。

(例)2~侵略や大量虐殺などを実行した政治家や軍人など、個人の戦争犯罪を裁くための国際刑事裁判所設置構想に対して、アメリカが、自国の政治家や将軍、文官、などが裁かれることを危惧して反対し、そのための条件闘争として、ボスニアにおける国連平和維持活動の延長に反対する(=この案件を採決するときに、国連安全保障委員会常任理事国としてのアメリカが持つ拒否権を行使する)ということがあった(2,002年)。このときには欧州(EU)が一致共同してアメリカを説得した。