富の偏在対均等、ならびに階級の存在


1.準備-マルクス、エンゲルス思想の要約と批判~)

(1)所有権の成立、その本源的蓄積

イ.所有権の確定

-所有権はa-priori(=ア・プリオリ=本質的、根源的、経験以前に経験に先立って)なものではない。所有権は個人による財物への支配権能を権利として聖化するという人間同士の了解によって観念化した。所有の始原は、先取り、詐欺、強奪、排除、であるにすぎない。

このような所有権発生の始原形がもっと巧妙に進化したものとして、搾取がでてくる。

搾取とは資本の所有者が労働者に10単位の仕事をさせてそのうちの7単位を搾り取ることを云う。

労働者には3単位が還元されるのだが、この3単位では、労働者は全く金を残すことが出来ず、彼の明日の労働が出来るための最小の生活レベルを維持することで3単位の全てが費消されてしまう。

ロ.所有形態のアナログ化

-所有権の単位がデジタル式からアナログ式に進化をする事-これが搾取が可能性であるための条件である。

アナログ化によってコツコツと漸次的に所有権を貯めることが可能になり、労働者を最低一人でも雇用できるくらいの所有権が貯り、なおその上に機械や資材を購入できる余裕があればその者は搾取資本家の卵として合法的な搾取を行うことが(少なくとも理屈上では)可能になる。所有のアナログ化した最小単位は貨幣の最小単位で表現される。

そして人々は貨幣の所有によって所有蓄積と所有計量のアナログ化に成功する。

「貨幣地代は、農民が自由に土地を所有できるようにする。・・・貨幣地代を払う農業経営者(=借地資本家)がでてくる。・・・(彼等は)農村賃金労働者を搾取する。・・・」(「資本論」第三巻第六篇47章-資本主義的地代の生成)

ハ.商品と貨幣

-所有を蓄積する方法がアナログ化するには、財や労働力の商品化が必要である。商品化とは、財、ならびに財を産み出す労働(=やはり財の一変形である)が、貨幣で測った交換価値一般として、抽象的に扱われる事を云う。財はその具体的な効用が、抽象化された効用一般に還元され、したがってそれは交換価値として、所有、交換、搾取の各過程において貨幣を媒介にして市場に出てくる。

貨幣とは、金(ゴールド)などのようにある特別な商品のことであり、我々はこの特別な商品を用いて(=通常は金が用いられたのだが)色々な財の交換価値をその特別な商品の交換価値で置き換える(=測定する)ための必要から貨幣が発生した。そうすると貨幣という特殊な財は、それを使えば、何時でも、誰とでも、何とでも交換が出来る財として人々に所有され、結局、[物持ち=金持ち]ということになって、金持ちが貨幣資本化として姿を現す。どのようにして人は金持ちになるのであろうか。

勿論、金持ちになる方法は、宝くじ、銀行強盗、ケチにして貯める、株や商品投機、など色々あるが、最も本質的・普遍的で、最も巨大である方法-それは労働搾取である。

人は労働搾取によって金持ちになる。だが金持ちでないと労働搾取ができない。ならば一体そのどちらが先であるのか?この疑問に対しては雪ダルマ効果がその答えを与える。

ニ.雪ダルマ効果-

雪ダルマ効果とは、権力や財力が省力的、効率的に集中するような効果の事であり、それは次のように働く。

 (1).権力に加担することが、権力を獲得する近道である

 (2).したがって、権力の周りには権力が集中する

この作用が資本の集中にも当て嵌まる。

 (a).資本は労働が産出した財の分配において、資本サイドの取り分を極大に、そして労働サイドの取り分を極小にすることができる

 (b).したがって、資本の周りには資本が集中する

資本家の基本的属性が搾取極大化であるならば、資本家は労働者に対して(労働者による労働力の所有以外には)一切の所有を禁止する事ができる。

かくして、労働者が労働力以外の財の所有者として直接的に、ということは自力で、資本家に出世をすることが不可能な仕組みができあがり、資本の雪ダルマ的な膨張と労働者の絶対的な貧窮化が加速進行しつつ、階級の二元化が完成する