8.恐怖権力・独裁権力・硬直権力

前書き~独裁権力を所有するという事に人々が感じる無類の蠱惑力は全ての人間にとって普遍的であり不滅である。我々は動物から人間に進化して始めてこの衝動を最大化した。独裁意思は我々の進化の産物なのだ。もしそれが進化といえるようなものであるならばのことであるが.


恐怖権力・独裁権力・硬直権力は権力の本質が最も直截的に表現されている。独裁権力はその蠱惑力が普遍的であり不滅であるだけではなく、その本質もまた、権力というものがあり続ける限り普遍的であり不滅なのである。それ故、民主制の中にあっても人々の独裁への願望と行動がそれ自体消滅するということはない。

 .恐怖

ⅰ.恐怖が権力の味付けをする。恐怖を深源に持たない権力は権力の味覚が薄い。恐怖で彩色した権威を身に纏うときの飛躍の快感、恐怖で味付けされた権力ゲームのスリリングで予兆に満ちた展開の味が人々を永遠に惹きつけ続ける。実際、正義の装いをこらした生計支配力、地位与奪の権能、逮捕・調査尋問・拷問・処刑・粛清の使命と権能が我々に対して現実に提示されたならば、その事実に酔って狂わない人間はいない

ⅱ.恐怖権力の行使と闘争は、それが対等のリング上におけるものでなければ英雄的な衝動を喚起せず、自分自身に対する尊敬を導かない。そのことは家畜の屠殺行為や、動物狩猟趣味が非英雄的であるのと同じ理由によるものである。

このために自分自身への尊敬と英雄的な衝動がないところでは窒息してしまうような深い人間は、その空洞に耐え続けられない。

これに反して非常に多くの、というよりも殆ど全ての人間がそうであるような浅薄型人間は、自分に対する尊敬と英雄的衝動を必要としないで生きていられるというお便利な人たちであるから、恐怖権力行使の快感に惑溺し、埋没する。

ⅲ. 恐怖の成長と進化過程は次のようである

 a.恐怖する

 b.恐怖をもってする支配者の意を迎えようとする

 c.便乗しようとする

 d.利用しようとする

 e.忠誠心を起こす

 f.自分自身をも完全に騙しおおせて、恐怖権力体制の権化と化す

ⅳ.階級社会の中における激しい出世競争が恐怖ゲームから降りるということを許さない。

反逆者は処罰されるのではなく、主としてライバルによって蹴落とされる。

スターリンのソ連において起きたような粛清の自動運動、粛清の自己増殖運動が、その頂点に粛正の親玉を据えて粛清競技大会を繰り広げる。

この運動は人々の作業によって展開するのだが、逆に運動が粛清電磁場空間のような客体空間となって人々の作業を取り込み、励起し、駆り立てる。

ⅴ.恐怖手段を不法に行使してしまった権力は、その時から一気に行くところまで行こうとして、手を緩めることができない。手を緩めても、反省しても、恐怖手段を行使したという事実が消えるものではなく、その事実が独り歩きを始めていて消すことができない。しかも手を緩めれば自分が逆に他人からやられるであろう。そのために恐怖権力は自分の恐怖心に突き動かされてより攻撃的になるのだが、より攻撃的にすることによってますます自分自身の恐怖が増殖する。