日本の核武装意思16-アメリカのデフォルト(財政破綻)に際し、日本が持つ米国債150兆円を帳消しにして日本が米第七艦隊を譲り受けたいと言う願望、ないしは発想(宮崎正弘氏)について
発想は願望から出てきてすぐ仮装の現実認識に成長する
功名心は自覚されずロイヤリティだと思い込む
1. 道徳的、精神的問題
本件の実施はアメリカのプライドを傷つける.アメリカの大統領は、財政救済と引き換えに魂の一部を売り渡すかのような取引をして歴史に名を残したがらないであろう.
米第七艦隊はかつてマッカーサーの指揮下にあってレイテ沖海戦から台湾-沖縄を経由して日本軍と戦い勝利した過去約100年の歴史を持つ艦隊であるが、アメリカはこれを今になって彼らにとっての敗戦国に空け渡さなければならないのである.勿論この事情自体は我々日本人にとって意味をなさないものであるとしても、やはりアメリカの置かれる陰惨な状況は考慮しなければならないであろう.
以上からして、本件はやり方次第ではわが国が火事場泥棒のように見られる可能性がでてくる.
したがって、両国は互いにこの二つの取引を無関係な、夫々独立したものであるかのように冷静に装う必要がある.
日本の米国債保有は、その資金が日本の対外債権という国民の資産であり、日本政府が国民の法的、道義的な合意を経由することなく米国債で運用してきたものであるが、これを兵器の購入のために放棄すると言う国民的合意を得なければならない.
2.地勢的問題
アメリカは、単に太平洋だけでなくインド洋を含めた東アジア、東南アジア全体を第7艦隊の所轄地域にしているから、日本が第七艦隊を買えば、アメリカに代っててこの地域での防衛責任をも引き継がなければならない
第七艦隊は第五艦隊、第三艦隊などと常時、戦艦・飛行機・兵員・指揮官の融通をし合っていて、共同訓練も頻繁に実施しているが、日本が第七艦隊を買えばそれ以降この総合運用が切断される.
第七艦隊の基地は日本だけでなく韓国、台湾、フィリピン、グァムにもある.日本は第七艦隊を買うとともに、これらの国の了解を得てこの外国の基地とその防衛を承継しなければならない.
3.継続と発展
日本はアメリカの第七艦隊という船と飛行機と爆弾と言う物品を買うのではない.
日本は、ブラックボックスなしの兵器移転と、そのメンテナンス、製造、将来に向けての絶え間のない進化の競争体系をアメリカ軍から完全に承継しなければ第七艦隊といえども10年もたたないうちに取り残された古物と化すであろう.アメリカは売却した後まで日本に対してこの方面への協力はしない.アメリカがさっさと手を引くことは目に見えている.
「日本の第七艦隊」は、意思の中枢-情報-伝達という技術的・人的な神経-情報経路をアメリカから切り離された形で引き継がなければならないだけでなく、これからは自分達でこれを運用し発展させなければならない.
しかし、戦後のわが軍にはそのような自主的な伝統も蓄積もない.
4.人的問題
日本自衛隊はアメリカ軍に代って、指揮官、技術者たち、兵隊(特に海兵隊)、併せて2万人(平時)から6万人(動員時)のプフェショナルを必要とするに至る.反対にアメリカの方はこれだけの米軍人が失業して追い出されることになる.日本にとって、特に伝統のある海兵隊の編成はかなり長期間の間不可能であろう.
5.結論
国家戦力を丸ごと金で買って成功した事例は存在せず、成功する可能性も存在しない.なぜならば戦力は自分達が自力で構築し訓練するのが必須の前提だからであり、わが国は金を払うとしても、それは軍隊を買うのではなく、主として技術と能力を習得するべきであり、その点においてタフでなければならないのだが、しかし、アメリカとの同盟を堅持しつつなるべく常識的に取引をしなければならない.
6.核の問題は解決せず.
「核兵器には核兵器」という視点でいえば第七艦隊は核武装をしていない.したがって、第七艦隊を購入すれば即核武装が手に入るものではない.アメリカの核主力は長距離弾道ミサイルであり,この戦力はアメリカ本土の大陸間弾道ミサイルとアメリカ西海岸にいる潜水艦発射ミサイルが担っている.第七艦隊があれば中国や北朝鮮の核兵器に対抗できると思っている人もいるが、実はそのような期待はできない.
しかも、仮に第七艦隊が核武装艦隊であるとしても、日本が核兵器拡散防止条約に加盟している以上は、第七艦隊さえ手に入れば、我々が核兵器拡散条約から脱退するという難事を省いて核が入手できるということになるわけでもない.
付記:核シェアリング(ニュークリアシェアリング)
これは冷戦時の遺物だ.冷戦時代の強大なアメリカがNATOと組んで行った核兵器供与で、平時から戦術核を爆撃機に積んで、米軍の指導により核爆弾を与えられる国が訓練し戦時に使う.巷間言われているように戦時にアメリカが被供与国に核を任せ自らは撤収するというものではない.作戦時にも発射許可など全般にわたりアメリカが管理指導する.
ソ連の地上軍の戦車などを打撃する短距離用核爆弾が貸与され、中~長距離ミサイルではないから、中国が相手の日本にはこれをやる意味がないし、第一核拡散防止条約違反になるから、財政的に落ち目のアメリカが対日本核シェアリングなどに応ずる見込みもなく、日本にとってもそうするだけの意味もない.