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タスマニア原生地帯(オーストラリア)

植竹です!

今回はオーストラリアタスマニア原生地帯を紹介します!

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公式テキストキャッチフレーズ
太古の自然を残す未開の島

タスマニア原生地帯
オーストラリア連邦


登録年…1982年
拡張年…1989年
危機遺産登録

英名…Tasmanian Wilderness
仏名…Zone de nature sauvage de Tasmanie


位置…オーストラリア・タスマニア州
経緯…S41 34 60 E145 25 0
面積…約1,407,513 ha
登録区分…文化遺産
登録基準…(3),(4),(6),(7),(8),(9),(10)
登録ID…180ter




公式テキスト分類…オセアニアの複合遺産
公式テキスト掲載ページ…第②巻285p
公式サイトユネスコ本部(英語)

概要
オーストラリア大陸の南に浮かぶタスマニア島はその断絶された自然環境から太古の生物や独自の進化を遂げた生物が多く、中でも5つの国立公園を含む南西部約1万3,836㎢が登録されています。
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また島にはかつてタスマニア・アボリジニという先住民が暮らし、ステンシルという技法で描かれた岩絵が残っています。
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構成
国立公園
ウォールズ・オブ・イェルサレム国立公園
クラドル・マウンテン=レイク・セント・クレア国立公園
サウスウエスト国立公園
ハーツ・マウンテンズ国立公園
フランクリン=ゴードン・ワイルド・リバーズ国立公園

州立保護区
デビルス・ガレット州立保護区
マラクーパ・ケーブ州立保護区
リッフィー・フォールズ州立保護区

保護地域
アダムズフィールド・保護地域
サウスウエスト・保護地域
セントラル・プレート保護地域
マーブル・ヒル保護地域

森林保護区
ドライズ・ブラフ森林保護区
メンダー森林保護区
リッフィー・森林保護区

その他
セント・クレア礁湖
ファーム・コーブ・ゲーム・リザーブ
マーツイカー・アイランド
マックスウェル・リバー保護考古学遺跡
ワルガタ・ミナ保護考古学遺跡
マッコーリー・ハーバー歴史遺跡


歴史
このタスマニア島はかつてはゴンドワナ大陸の一部でオーストラリアと陸続きだと考えられています。

1万2,000年前あたりになると
オーストラリア本土と海峡で隔てられた島となりました。

10,000年以上前から
この地にはタスマニア・アボリジニが暮らしていました。
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1642年
オランダ人探検家に発見され、


1803年には
流刑地としてシドニーから最初の植民が行われました。

1830年代までは
ブラック・ウォーと呼ばれるイギリス人とタスマニア・アボリジニの戦争が行われました。
その結果、伝染病や強制移住、狩りの対象となるなど凄惨な仕打ちを受けてタスマニア・アボリジニはその数を減らし、

かつて4,500人ほどいた純血のタスマニア・アボリジニは
1876年にトゥルガニニという老人が死亡した事で絶えてしまいました。

1960年代には
島内でダムの建設が計画され、

1980年代初頭に認可が下りましたが、

ほどなくして
1982年
自然遺産として世界遺産に登録されたので計画は頓挫しました。


1989年には
タスマニア・アボリジニに関する文化的な価値も認められて複合遺産になりました。



特徴
・地理的特徴としては、氷河期に氷河の流動によって大地が浸食され平坦な山頂や多数の湖、荒々しい斜面が生まれました。
・1万2,000年前あたりで本土から隔絶されると、競合する哺乳類がいなくなった事から、原始的な形質を持つ単孔類カモノハシや有袋類のタスマニアデビルなど他の大陸で絶滅して行った生物たちが独自の進化を遂げて行きました。
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・島の南西部は偏西風の影響でオーストラリアの中でも屈指の湿潤地帯で、冷温帯性雨林となっています。この為、熱帯気候の多雨林とは違い、高山ではコケ類やミナミブナなど亜高山帯の樹種が生い茂っていて木生シダやタスマニアスギなどのゴンドワナ大陸時代から存在している植物が存在しています。
・また、樹齢2,000年のヒューオン・パインや高さ90mの高木ユーカリなどタスマニアの固有植物もあります。

・文化的特徴としては、タスマニア・アボリジニの存在が挙げられ、太古より、狩猟採集生活を行っていました。この石器時代と同様の暮らしはイギリス人との接触が起こる19世紀まで続けられていました。
・ステンシルという技法で描かれた岩面絵のテーマは土着宗教的なものが多く、目立つところに描かれています。
・狩猟に使った骨格器やナイフ、のこぎり、矢尻なども発見されていて、それらがカンガルーの骨でできている事からかつて陸続きだった時代のオーストラリア本土からもたらされたものと考えられています。

逸話・伝説
・イギリス人と対立したタスマニア・アボリジニの中には同じ人間にもかかわらず、狩りの対象とされた人もいたそうです。

登録基準詳細
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
(6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰または芸術的、文学的作品と、直接にまたは明白に関連するもの(この基準は他の基準と組み合わせて用いるのが望ましいと世界遺産委員会は考えている)。
(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
(8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。
(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
(10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。




関連用語
ステンシル 版画の一種で神や金属板を切り抜いて作った図柄の型の上から絵具を塗り込んで描く技法。
カモノハシ 哺乳綱単孔目カモノハシ科カモノハシ属に分類される哺乳類。現生種では本種のみでカモノハシ科カモノハシ属を形成する。名前の通りカモのように幅が広く、ゴムのような弾性のあるくちばしを持ち、四肢は短く、水掻きが発達している。オスの後脚には蹴爪があり、この蹴爪からは毒が分泌されている。哺乳類ではあるが乳首は持たず、メスが育児で授乳の際は、腹部にある乳腺から乳が分泌される。哺乳類では非常に珍しい卵生で、巣穴の中で1回に1-3個の卵を産む。
タスマニアデビル 哺乳綱フクロネコ目フクロネコ科タスマニアデビル属に分類される現生で世界最大の肉食有袋類。現在はタスマニア島のみに生息するが、古くはオーストラリア大陸にも生息していたことが化石により判明しており、同大陸ではヨーロッパ人到達以前の14世紀終わり頃に絶滅した。
単孔類 、軟骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、および一部の原始的な哺乳類に見られる、直腸・排尿口・生殖口を兼ねる器官を持つ生物。
ゴンドワナ大陸 プレートテクトニクスにおいて、過去に存在したと考えられている超大陸。名前の由来はインド中央北部の地域名で、サンスクリット語で「ゴンド族の森」を意味する。現在のアフリカ大陸、南アメリカ大陸、インド亜大陸、南極大陸、オーストラリア大陸や、アラビア半島、マダガスカル島を含んだ、かなり大きな大陸であった。




☆☆植から目線コメント☆☆
長い歴史の中で本土から孤立した事で独自の文化や生態系が
他の大陸とは違う軸で成長して行った面白い例です。
ただし、その歴史にはイギリス人との戦いでアボリジニたちが虐げられたという
凄惨な事実も隠されています。
残念ながら純血のアボリジニは根絶してしまいましたが、
今度は世界中の協力で、
動物たちを同じ目に遭わないように守っていくのが課題だと思います。



植竹でした。