金城哲夫について 2022年6月23日

 

最近 NHKで『ウルトラマン』制作当時の円谷プロに関する

ドラマが放映され、その影響で金城哲夫について少し考えた。

 

ウルトラマン最終回の前に、東京新聞に『ウルトラマンの最後、

こうしたら』という見出しの記事が載った。大人気番組の最終回を

予想する内容。その中で金城は こう語っている。

「ウルトラマンは最後、ものすごい怪獣にやられて

死ななければならない」

このコメントは重要と感じられる。金城はウルトラマンを

「無敵の超人」に描いてはいけないと考えていた。

「神様」じゃないのだ。「食物連鎖」ではないが、「強者の連鎖」

というのがこの世界にはあり、ウルトラマンもその輪のピースの

ひとつに過ぎない、というドライかつクール、宇宙的・

巨視的な視点。これを金城は、無敵のヒーローを描きながら

忘れずに持っていた。

 

同じくマン最終回の準備稿に、金城はこんなト書きを書いている。

ゼットンがマンのカラータイマーを叩き潰し、マンが死んだ後。

「ゼットン、ウルトラマンを高々とさしあげて(いつもウルトラマンが

そうするように)ドーッとばかり投げつける。

大地に叩きつけられるウルトラマン。」

(注 このト書きは、続く決定稿では削除)

なぜ金城はこんなト書きを書いたか。

「いつもウルトラマンがそうするように」の一文には、

暴力否定の強い意志、今まで(正義の名のもとにとはいえ)

そういう暴力をふるってきたマンへの断罪が込められていよう。

こういうところに金城の人物が出ている。

いくらウルトラマンでもやっていいことと悪いことがあるんだと。

そういう暴力をふるってきた奴は、いつか逆に自分がそういう目に遭って

罰を受けるんだと。子供たちよ、見ておきなさいと。  

これが暴力の醜悪さだと。    

メインストーリーばかり担当し、作品に作家性が希薄といわれる

こともある金城だが、細かく見ると、こういうところに

金城の特性が出ている。

 

金城は円谷プロ退社時に、円谷一に宛てた手紙の中で、

「過去の仕事を振り返って、作家としての充実感が無い」

と書いている。

(注 Q・マン・セブンは充実感を感じるべき仕事と私は思うが。

それはさておき。)

金城が本当にそう思っていたのか、あるいは、無理やり

そう思い込もうとしていたのかは今となっては定かでないが。

退社直前、金城が企画していたのは「ミラーマン」とか

「ジャンボーX」だった。円谷プロでは充実感のある仕事は

できないと思っていた、あるいはそう思い込もうとしていたのかも

しれない。(田口成光が、最近「金城は退社を申し出た時に

『円谷一に強く引き留められなかったのが辛かった』と

話していた」と証言。「強く引き留められていたら、きっと金城は

残留していただろう」とも証言している)

円谷プロ側も、金城に「充実感のある仕事」を提供できる

状況に無かった。

金城は円谷プロを卒業すべき時期だったんだろう。

円谷一は、金城を武者修行に出すつもりで、退社を認めた

のかもしれない。

今回のドラマで、円谷一が帰郷した金城に宛てた手紙の

一部が紹介された。メディア初公開。

(余談だが その中で円谷一は「怪物」と自称していた。

円谷一の自信満々の性格を物語る貴重な資料)

円谷一は「金城の帰りを待っている」と書いていた。

そこから、こんな「武者修行説」を考えた。