「ドカベン」の連載が今月末発売号で終了すると発表された。
(現在連載中の「ドリームトーナメント編」が終了し、
「ドカベン」46年の歴史に終止符が打たれる)

「ドカベン」大好きだった。
単行本でいえば28巻から40巻くらいの時期が
いちばん熱心に読んでいた時期だった。
井上雅彦だったか、「ドカベンが面白いのは31巻まで」説を
唱えているが、私は「40巻まで」派である。

(チャンピオン発売日の金曜日が楽しみでならなかった。
当時のチャンピオンは凄くて、ドカベンの他にもブラックジャック、
マカロニ、変奇郎、がきデカ、750ライダー、エコエコ、月とスッポンなどなど。
他に、吉森、吾妻、古谷、梶原、望月 各氏が脇を固めていた。
当時は私の人生のほとんどをチャンピオンが占めていた。
いま考えても、ぜいたくなラインナップだと思う)

「ドカベン」は山田、岩鬼らが主人公だが、
もうひとつ、「野球の面白さ そのもの」も重要な主人公と
なっている。
もしも俊足の走者がいたら、バッテリーはどう対応するか?とか
もしもとてつもない剛球を投げる投手がいたら?
もしも凄い強打者がいたら、封じるための最高の作戦は?
などなど、「野球の面白さ そのもの」が紙の上に
みごとに定着されている。

「ドカベン」初めて読んだときは驚いた。
高1夏の甲子園で、山田が犬飼小次郎からサヨナラ本塁打を
打つが、これには「どうして打てたか」の理由説明が
一切無い。ただ「山田の実力が犬飼を上回ったから」
というだけである。それまでは「巨人の星」しか読んでいなかった。
「巨人の星」は、勝敗が決した根拠が理論的にすべて説明される。
対照的に「ドカベン」は、理屈抜き、画力で読者を説得してしまう
魅力。そしてこの点も、実に「ホントの野球っぽい」のである。

やはり一番面白かったのは、高1夏の大会だろう。
大好きな「ドカベン」だったが、弁慶高校に敗れてからは、
「あれ?」という感じになってしまった。
あそこで作者の緊張の糸も切れたんだろう。
1970年代後半の水島マンガは凄かった。
特に「ドカベン」「あぶさん」「野球狂の詩」。
私は中学生だったが、「水島氏は面白いマンガを描く術を
完全に会得している。生涯面白いものを描いていくだろう」
と思っていた。「あぶさん」であぶが結婚するあたりが
今思えば水島氏の最後の輝きだったと思う。
「大甲子園」「プロ野球編」 まったく見るべきものが無かった。
あの水島氏でも面白いマンガ描けなくなるのか
私は内心 驚き、作家の才能というもののはかなさを知った。
私が作家のはかなさを知ったのは水島氏を通してだった。

水島氏には一度だけお目にかかったことがある。
スコアブックにあぶの顔を描いてもらった。

最終回掲載号には水島氏の文章も載るという。
「週刊少年チャンピオン」ひさびさに買おう。